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Ericssonが、インドにおける5Gソフトウェア開発を推進するため、ベンガルールにR&Dユニットを新設

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 Ericssonは11月13日、インドにおけるプレゼンスを強化するため、ベンガルールにRANソフトウェア研究開発(R&D)部門を新たに設立したと発表した。

 Ericssonは「この取り組みは、当社がインドで最近行った数々のR&D投資に続く研究開発拡大の一環であり、同国の優秀な人材と、当社の国内および世界市場へのコミットメントを反映している」と説明している。

 新しいR&D部門は、まずEricsson 5Gベースバンド向けの5Gおよび5G Advanced機能の開発に注力する。この作業は、EricssonのグローバルRANソフトウェアチームと緊密に連携して進められる。

 インドで最も急速に成長しているテクノロジーハブの一つとして認められているベンガルールは、特にソフトウェアエンジニアリング分野における熟練した専門人材の宝庫であり、大手グローバル通信企業の拠点として知られている。このダイナミックなエコシステムにより、ベンガルールはインドにおけるR&D活動の拠点として最適な場所となっている。

 Ericssonのインド担当マネージングディレクター 兼 東南アジア、オセアニア、インド市場エリア ネットワークソリューション 責任者であるNitin Bansal氏は「インドにRANソフトウェア開発のためのR&Dセンターを設立することは、インドにおける当社のR&D事業強化に向けた大きな一歩だ。インドのソフトウェア人材を活用すると同時に、同国におけるナレッジベースと通信エコシステムの構築にも貢献していく」とコメントを出している。

 EricssonのRANソフトウェア&コンピュートプラットフォーム責任者であるDavid Bjore氏は「Ericssonの今回のR&Dへの投資とコミットメントは、次世代技術開発における当社の取り組みにおいてインドがいかに重要であるかを示しています。ベンガルール、チェンナイ、グルグラムで築いてきた強固なパートナーシップを基盤に、今回初めてインドでRANソフトウェアを自社開発する。これは、インドの急成長中のテクノロジーシーンを支えるだけでなく、世界に影響を与えるソリューションをインドで創出することを可能にする、重要な一歩だ」とコメントを出している。

インドにおけるR&Dの勢い
 この地域におけるR&Dイニシアチブには、2025年6月に発表された、インドにおける半導体エコシステムの育成を目的としたASIC開発の拡大が含まれる。これらの取り組みは、Ericssonがポートフォリオを強化し、高性能プログラマブル ネットワークの未来を形作るというコミットメントを改めて示すものだ。

 Ericssonはまた、VolvoおよびAirtelと協力し、VolvoのベンガルールR&DセンターにXRおよびデジタルツイン技術を統合している。また、インド工科大学マドラス校とは、責任あるAIフレームワークにフォーカスし、6Gネットワーク向けAI研究を推進している。さらに、インド統計研究所およびインド工科大学カラグプル校とのパートナーシップでは、サイバー フィジカルシステム、AIドリブンネットワーク、セキュア コミュニケーション、エッジコンピューティングにフォーカスしている。

 Ericssonは120年以上にわたり、インドの通信業界を形成する上で重要な役割を果たしてきた。同社は「1994年のGSMサービスのパイオニアとしての開始から5Gへの進化のサポート、そして最近では2024年にチェンナイR&Dセンターに専任の研究チームを結成しインド6Gプログラムを開始するなど、当社はこの分野におけるイノベーションを推進し続けている」と説明している。

 Ericssonは世界中で毎年約50億米ドルを研究開発に投資し、5Gおよび次世代技術におけるリーダーシップを強化している。チェンナイ、バンガロール、グルグラムにあるエリクソンのR&D拠点は、トランスポート、パケットコア、OSS、BSS、クラウド、高度なAI技術など、重要な通信分野を網羅している。

編集部備考

■5G/5G-Advanced時代の競争構造において、運用自動化やエネルギー効率向上といった価値領域がソフトウェア側に大きくシフトしている背景がある。Ericssonがバンガロールに新たなR&D拠点を設け、5Gソフトウェア開発を強化する動きは、地域投資だけではなく、 ソフトウェアの重要性が高まっていく流れを見据えた戦略的判断だと言える。各国でSA化が本格化し、運用高度化の需要が急増する今後、開発スピードと優秀なソフトウェア エンジニアを確保できる体制そのものが、ベンダ間競争の勝敗に大きく影響する。
 こうした環境下で、インドは急速に“グローバルR&Dハブ”として存在感を高めている。人材の量だけでなく質が向上し、AIアルゴリズム、クラウドネイティブ基盤、無線最適化といった高度領域を担えるエンジニアが増えている。また、インドのモバイル市場は巨大で、トラフィック密度が極端に高い都市部と広域なルーラルエリアを併せ持つため、RAN自動化やエネルギー最適化の検証に適した実環境としても機能する。コスト感度の高い市場環境は、TCO低減を目的としたソフトウェア最適化やクラウドRANのPoCに向いており、この経験はグローバル市場へ横展開しやすい。
 競争の観点から見ると、Nokia、Samsung、さらにはOpen RAN陣営の主要プレイヤーもインドでの開発体制を拡大しており、RANソフトウェア開発力のグローバル再配置が進んでいる。EricssonのR&D強化は、この潮流に対する“攻勢と防衛”の両面を持つ。特にAIを用いたRAN最適化は、運用コスト・性能の双方を左右する重要領域であり、その高度化はO-RANを含むマルチベンダ環境での競争力確保に直結する。
 加えて、地政学リスクが高まるなかで、中国依存度を下げつつソフトウェア開発能力を拡大したい企業にとって、インドは安定したサプライチェーン拠点としても価値がある。Make in India政策との親和性も高く、現地でのR&D強化は市場アクセスと政策面の双方で長期的なメリットを生む取り組みと言える。
 5Gは今後数年で成熟フェーズに入るが、そこでの競争力は“どれだけ高度なソフトウェアを、どれだけ早くグローバルに展開できるか”が影響する。これは6Gで求められるクラウドネイティブ化・AI統合型アーキテクチャへと連続する要素でもある。今回の投資は、インドをオフショア開発拠点としてだけではなく、次世代RANソフトウェアの源泉として明確に位置づける動きであり、Ericssonが次の競争フェーズを見据えた布石を強化したことを示している。

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