NokiaとTelefónica Germanyが、AI活用を含む5G展開促進に向けた5年間のRAN契約を締結
期間限定無料公開 有料期間限定無料公開中
Nokiaは11月26日(エスポー)、戦略的パートナーであるTelefónica Germany(Telefónica)との5年間の契約延長を発表した。
この契約は、Telefónicaの全国的な無線アクセスネットワークを2030年まで近代化・アップグレードするものとなる。
Nokiaは「この契約には、Nokiaの先進的なクラウドRANソリューションが含まれており、ドイツ全土における5Gの急速な拡大と持続可能なデジタル化、そして高品質な顧客体験の提供というTelefónicaの目標を支援する。NokiaのAIを活用したソリューションは、AIを活用したTelefónicaの業務とネットワークパフォーマンスの変革も支援する。
この契約に基づき、Nokiaは、n78周波数帯向けのHabrok Massive MIMO無線、Pandionマルチバンドリモート無線ヘッド、AirScale Radioスモールセルソリューションなど、エネルギー効率に優れAI対応のAirScale RANポートフォリオを提供する。これらの技術は、包括的なカバレッジとシームレスな屋内接続を確保し、効率性と拡張性を向上させる。さらに、Nokiaは最新のベースバンドソリューションを提供し、Telefónicaの5Gネットワークのパフォーマンスと信頼性を向上させる。
今回の導入には、Nokiaのインターリーブ・パッシブ・アクティブ・アンテナ(IPAA+)ソリューションも採用されており、サイト設計のシンプル化と5G展開の加速を実現する。契約には、保守およびネットワーク最適化サービスも含まれている。
Telefónicaは、データセンタ ハードウェアやクラウド インフラストラクチャを含む、専用RANおよびクラウドRANをサポートするNokiaのAI搭載ネットワーク管理ソリューション「MantaRay NM」を引き続き使用する。MantaRay NMは、コアネットワーク、無線ネットワーク、トランスポートネットワークの各ネットワーク要素に対し、物理ネットワーク要素と仮想ネットワーク機能の両方を管理する包括的な運用・保守機能を提供する。Nokiaは「これは、AI搭載オーケストレーション ソリューションを通じて、Telefónica Germanyのネットワークを自動化レベル4へと進化させるという、両社の共通の目標に向けた第一歩だ」と説明している。
O2 TelefónicaのネットワークディレクターであるMatthias Sauder氏は「Nokiaは、お客様に最高のネットワークエクスペリエンスを提供するという当社の取り組みにおいて、信頼できるパートナーだ。今回の契約延長は、5G技術の進歩と、より繋がりやすく持続可能なドイツの実現という、両社の共通のコミットメントを反映している」とコメントを出している。
Nokiaのプレジデント 兼 CEOであるJustin Hotard氏は「Telefónica Germanyとのパートナーシップを拡大し、5Gネットワーク全体のパフォーマンス、効率性、そしてカスタマーエクスペリエンスの強化を支援できることを誇りに思っている。NokiaのanyRANソフトウェア、AirScaleベースバンド、そして自律型ネットワークプラットフォームを活用することで、TelefónicaはAIスーパーサイクルが本格化する中で長期的な競争力を確保することができる」とコメントを出している。
編集部備考
■5Gの本格展開が始まって数年、RANはかつてない複雑性に直面している。Massive MIMO化やスモールセルの増加、周波数帯の多様化、屋内外の混在環境など、構成要素は指数関数的に拡張し、従来型の運用では最適化が追いつかなくなりつつある。こうした背景の下、世界的に「AIを活用したRAN自動化」への取り組みが加速しており、今回Telefónica GermanyがNokiaとの契約で将来的な“自動化レベル4”にも触れている点は、この潮流が中長期的なものであることを象徴している。
グローバルで進む技術動向を整理すると、鍵となるのはハードウェア高度化とソフトウェア自動化の融合だ。前者はMassive MIMOやIPAA+、高効率スモールセルなどによる物理レイヤの刷新であり、容量・カバレッジの向上を担う。後者は Cloud RAN、SON、AIオーケストレーションといった運用・制御レイヤの知能化で、現在のRAN自動化の主戦場を形成する。さらに近年は、multi-agent制御やLLMベースのネットワーク最適化など“AIネイティブ”な設計思想が学術・産業双方で議論され、商用ネットワークへの適用も具体性を増している。日本国内でもNTTドコモが既存LTE/5Gのマルチベンダ環境にAI-SONを導入するなど(当サイト内関連記事)、実商用の事例が広がりつつある。
AIによるRAN自動化の導入効果は、多岐にわたる。第一に、セル間干渉、負荷分散、ハンドオーバー閾値など、従来は人手や準静的設定に依存していた領域をリアルタイムに学習・制御できる点で、運用コスト削減と最適化の高度化が期待できる。第二に、AIによるトラフィック予測やノードスリープ最適化により、基地局単体ではなくクラスタ全体での省電力運用が可能となり、電力コストの影響が大きい欧州では特に価値が高い。第三に、屋内外混在環境や高密度都市部の拡大に伴い増すセル構造の多様化に対して、AIが自己組織化を促し、構成変更の俊敏性を高める。これらは単なる効率化ではなく、サービス品質やトラフィック急増時の耐性向上にも直結する。
また、将来展望として注目すべきは、AI-RANが“高度運用技術”に留まらず、6Gに向けた基盤技術として認識されつつある点だ。6Gの議論では AIネイティブ化、Intent-based Operation、RAN–Core 融合制御、分散エージェントなどが主要テーマとなっており、その前段階として5G時代のAI-RANを商用環境で成熟させる動きは効率的と言える。
今回のTelefónica Germany の取り組みは、こうした世界的な技術進化と将来展望の中で、「AI + RAN自動化」が“将来技術”ではなく、すでに商用ネットワークの標準選択肢へと移行しつつあることを示すマイルストーンの一つだ。とりわけ、複合ハードウェア、クラウド基盤、AI運用を統合的に進化させ、European Tier-1 キャリアがレベル4自動化を視野に入れている点は、業界全体に対して明確なシグナルと位置づけられる。



