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NECが、光通信衛星コンステレーション構築に向けたネットワーク制御技術を新たに開発

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宇宙科学技術連合講演会で関連する8つの研究開発成果を発表

 NECは11月27日、光通信衛星コンステレーション(人工衛星群)構築に向け、不可欠なネットワーク制御技術を開発したと発表した。

 同社は「本技術は、宇宙と地上の通信を低遅延・高信頼にし、大容量のデータを安定的かつスムーズに通信することを可能にする。これにより、観測衛星や宇宙ステーションだけでなく、災害時の状況把握や自動運転といったミッションクリティカルな用途にも活用できる、より信頼性のある衛星通信サービスが提供できるようになる」と説明している。

光通信衛星コンステレーションのイメージ。NECは、光通信衛星コンステレーションに関する8つの研究開発成果を、11月25日~28日に北海道札幌市で開催中の「第69回宇宙科学技術連合講演会」にて発表する。

背景

 これからの通信技術である「Beyond5G / 6G」では、地上だけではなく、空や宇宙空間を使ったネットワーク(非地上系ネットワーク、NTN: Non-Terrestrial Network)への期待が高まっている。すでに、衛星を用いたモバイル通信サービスも開始されているが、従来の衛星通信システムは、山間部や島しょ部、海上や上空など地上ネットワークが未整備な場所でのインターネット接続手段であり、通信速度や安定性はその時々の状況次第であるベストエフォート型サービスがほとんどだった。
 しかし、今後は災害時の状況把握や自動運転、遠隔での精密な作業を要する無人検査など、ミッションクリティカルな用途で宇宙のネットワークを使いたいというニーズが高まっている。
 また、最近では地上からの距離が近い低軌道(以下 LEO)衛星を用いた衛星通信サービスが登場し、より速い通信が期待されている。しかし、現在のLEO衛星通信サービスでは、通信中に瞬断が生じたり、再接続に時間を要するなど通信品質に改良の余地がある。
 NECは、このような課題を解決し、6G時代に求められる超高速・大容量通信を実現するため、光通信による宇宙ネットワーク構築に不可欠な通信品質を保証できるネットワーク制御技術を開発した。

技術の特長

1. LEO衛星コンステレーションに最適な経路制御技術により、データ転送遅延を半減
 LEO衛星コンステレーションは複数の衛星が連なった軌道を複数持ち、衛星間を光通信で相互接続するネットワークだ。このネットワークでは、地上局と衛星、そして衛星同士の距離が常に変動するため、データを最速で届けるための通信経路の探索と制御が難しく、通信の遅れが大きく変動するという問題があった。
 NECは、衛星の移動による距離(遅延)の変動を計算可能なモデルを作ることで、最適な経路探索と制御を実現した。これにより、データが最も速く届く通信経路の選択が容易になる。さらに、本モデルは少ない計算量で処理できるため、衛星と地上局が瞬時に速い通信経路を選択することができる。これらにより、データ転送遅延を従来比で半減した。

2. 遅延変動を大幅に抑制し、安定したデータ転送を実現
 LEO衛星を使った通信では、地上局から見える(接続できる)衛星が次々と替わるため、通信経路の切り替え(以下 ハンドオーバー)が頻発する。この切り替えの際には、通信品質を保持するために複数経路を用いた通信が有効だ。しかし、ハンドオーバーの際にデータの一部が失われたり、複数経路から送信されたデータがバラバラの順番で到着することで、通信遅延が変動するという問題があった。
 NECは、1で開発したモデルを利用し、データが届くまでの時間や経路が途切れるタイミングを予測し、それに合わせてデータを送る仕組みを開発した。これにより、遅延変動を従来の1/30に抑制することが可能だ。

 NECは「当社は現在、宇宙戦略基金の支援を受け、光通信衛星コンステレーションの中核技術を開発している。今後、民間事業を含めた宇宙利用はますます拡大することが予想される。当社は、宇宙ネットワーク構築に必要な技術をフルラインアップする国内唯一の企業として、衛星製造・運用・画像解析などの宇宙事業の50年以上の実績に加え、地上モバイルの情報通信技術、光空間通信・海底ケーブルなどの長距離光通信の知見を活かし、宇宙ネットワーク構築による新たな社会価値創出に貢献する」と説明している。

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