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NokiaとOrangeが、NVIDIAと共にAI-RANイノベーションを推進

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 NokiaとOrangeは4月15日(エスポー)、NokiaのanyRAN 5GソフトウェアとNVIDIAのAIインフラストラクチャを活用したAI-RAN技術の開発と評価に重点を置いた新たな協業を発表した。

 NokiaとOrangeは「この取り組みは、AI-RANの最新機能がネットワーク性能、エネルギー効率を向上させ、Orangeのお客様に新たなサービスを提供することを可能にする方法を探求することを目的としている」と説明している。

 NokiaとOrangeは、体系的な共同イノベーションフレームワークを通じて、新たなAI-RAN機能の特定、設計、評価を共同で行う。この協業は、GPUベースの無線プロセッサがより高度な受信機と連携することで無線性能を向上させる方法、そしてAIをRANに緊密に統合することで性能をさらに向上させ、センシングなどの新たなサービスをサポートし、クラウドベースおよび専用RAN環境の両方において、より高度な自動化とインテリジェンスを実現する方法を探求することを目的としている。

 OrangeのグループCTOであるLaurent Leboucher氏は「Orangeは、より効率的で適応性が高く、持続可能なネットワークの構築に尽力している。NokiaおよびNVIDIAとのAI-RANに関する協業を通じて、AI-RANによって実現されるAIネイティブアーキテクチャが、スケジューリング、ビームフォーミング、電力最適化といった主要な無線アルゴリズムの効率をどのように向上させ、スペクトル効率とエネルギー性能の両方を強化するのかをより深く理解することができる。さらに、予測最適化や無線センシングといった高度な機能も実現可能だ。この協業は、当社の長期的なネットワーク戦略における重要な一歩となる」とコメントを出している。

 モバイルネットワークが6Gへと進化する中で、NokiaとOrangeは、Upper 6GHz帯を含む既存および将来の周波数帯のスペクトル効率を最大化するためのアプローチを共同開発する。6G対応プラットフォームは、ソフトウェア定義に基づく6Gへのスムーズな移行を可能にし、Orangeの事業展開地域全体でコンピューティングリソースのよりスマートな利用を支援する。

 Orangeは、NokiaおよびNVIDIAとの協業を通じて、AI対応RAN機能を運用ネットワークにシームレスに統合し、欧州、中東、アフリカ全域で持続可能性と効率的なリソース利用を確保する方法についての理解を深めることをめざしている。

 Nokiaの最高技術・AI責任者であるPallavi Mahajan氏は「AIはネットワークの設計方法を根本から変革し、無線レイヤ全体に新たなレベルのインテリジェンスと柔軟性をもたらしている。Orangeとの協業を通じて、NokiaのAI-RANソリューションが高度なAI機能とRAN機能を統合アーキテクチャに統合する方法を検証している。これは、業界がコグニティブでAIネイティブなネットワークへと移行する上で極めて重要な役割を果たすだろう」とコメントを出している。

編集部備考

■今回のNokiaとOrange、そしてNVIDIAによる提携は、AI-RANの実用化に向けた取り組みが新たな段階に入ったことを示す象徴的な動きと位置づけられる。従来の通信機器導入が、仕様の確定した「完成品」を選定するプロセスであったのに対し、AI-RANを含む「RANにおけるAI活用」は、依然として最適解を探索する段階にある。すでにAI-RAN Allianceの設立などを通じて議論や検証は進んでいるが、今回のように主要プレイヤーが連携し、実運用を見据えた検証を進める動きは、その流れを一段引き上げるものと言える。

 技術的観点では、現在の論点は大きく三つに整理できる。
 一つ目は、AIの適用領域だ。リアルタイム性が極めて高い物理層(Layer1)にまでAIを適用するのか、それともRICを用いたネットワーク全体の最適化から着手するのかについては、各社が試行錯誤を続けている。現時点では後者、特にNear-RT RICを用いた最適化が先行しており、Layer1への適用は研究・限定導入の段階にとどまる。
 二つ目は、ハードウェア アーキテクチャの変化だ。専用機器中心の構成から汎用サーバへの移行が進む一方で、GPUなどのアクセラレータが不可欠となっており、「汎用化」と「新たな専用性」が併存する構造が生まれている。
 三つ目は、AI-on-RANと呼ばれる新たな活用像だ。通信インフラ上でAI推論処理も担うことで、エッジコンピューティング基盤としての価値を高めようとする試みだが、現時点では構想および初期実証の段階にあり、収益モデルは確立途上にある。

 こうした複雑な課題に対応する上で、今回の三者連携の意義は大きい。Nokiaは通信ソフトウェアおよび無線技術の知見、NVIDIAはGPUを中核としたAI計算基盤、Orangeは実ネットワークの運用データと顧客ニーズを担う。それぞれの役割が明確に分かれた上で協働することで、「通信処理とAI処理という異なる設計思想」「ミリ秒単位の遅延制約を持つリアルタイム処理と、スループット志向の計算処理」を同一基盤上でいかに両立させるかという本質的な課題に、効率的に取り組むことが可能となる。

 通信事業者にとって、RANにおけるAI活用は、自らの競争力をベンダと共同で形成していくという点で、これまでにない意味を持つ。将来的には、基地局やエッジ設備が分散型の計算基盤として機能し、低遅延なAI処理能力を外部に提供する可能性も指摘される。ただし、電力制約や設置環境、運用モデルといった現実的な課題も大きく、その実現には段階的な進展が必要となるだろう。一方で、エネルギー効率の最適化が事業者のコスト構造に直結する点や、ソフトウェア・AIに関する内製能力の重要性が高まる点は、すでに顕在化している変化だ。従来のように仕様に基づく調達で完結するのではなく、ベンダとともにアルゴリズムや運用を継続的に進化させる関係への転換は、組織や人材戦略にも影響を及ぼす。
 さらに、このような取り組みで得られる知見は、将来の6G標準化や技術主導権にも影響を与える可能性がある。特に欧州において主要事業者が主導的に実証を進めることは、地域としての技術的自律性を確保する観点からも注目される。今回の提携は、技術検証にとどまらず、通信インフラの価値と役割を再定義する潮流がグローバルで強まりつつあることを示すシグナルと捉えるべきだ。
(OPTCOM編集部)

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