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EricssonとVodafoneThreeが、世界初のモバイルネットワーク アップグレードを完了。最大5,000万人に最速の5G通信速度を提供開始

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 EricssonとVodafoneThreeは5月28日、世界初のモバイルネットワーク アップグレードの完了を発表した。

 Ericssonの「マルチオペレーター・コアネットワーク(MOCN:Multi-Operator Core Network)」技術とVodafoneThreeの既存の「マルチオペレーター無線アクセスネットワーク(MORAN:Multi-Operator Radio Access Network)」インフラストラクチャを、マルチベンダの4Gおよび5Gネットワーク上で統合することで、コアレベルの共有を実現した。

 Ericssonは「英国全土の1万ヶ所以上の拠点にこれらの技術を統合することで、最大2,860万人のVodafoneおよびThreeの顧客は、VodafoneまたはThreeのネットワークのどちらであっても、利用可能な最適なカバレッジに自動的に接続できるようになる。VodafoneとThreeの合併後、加入者にとって最初の大きなメリットの一つとして、数百万人の顧客が日常的なブラウジングやストリーミングの高速化、そして4Gおよび5G利用時のカバレッジと信頼性の向上を実感できるようになった」としている。

 Ericssonが最近発表したホワイトペーパーで概説されているように、このマイルストーンは、通信事業者がマルチベンダ環境において、コアネットワークと無線ネットワークの共有を全国規模で実現した初の事例となる。EricssonはVodafoneThreeの技術設計と導入における主要パートナーとして、2つのネットワークが独立したコアネットワークを維持しながら共有リソースとして運用できるようにした。これは、顧客にとって即座に実感できる改善をもたらすと同時に、長期的なネットワーク最適化と5Gスタンドアロン(SA)への進化の基盤を構築する、実用的かつ段階的なアプローチだ。その結果、パフォーマンス、信頼性、効率性において測定可能な改善をもたらす、単一のインテリジェントにオーケストレーションされたプラットフォームが実現した。これは、他の市場の通信事業者やパートナーが将来の大規模ネットワーク統合のモデルとして既に注目している、新たな業界ベンチマークとなっている。

 EricssonはVodafoneThreeと緊密に連携し、正確に制御された2段階のMOCN戦略を適用した。まず、既存のハードウェアを活用して優先サイト間で共有機能を迅速に有効化し、即座にカバレッジと容量の向上を実現した。次に、スペクトルを段階的に統合し、サイトをアップグレードしてパフォーマンスを最適化した。厳格なラボおよびフィールド検証、KPIに基づくリリースゲート、自動ロールバックプロトコル、無線、コア、トランスポート、運用にわたる部門横断的なガバナンスにより、パフォーマンスの向上を安全かつ安定的に大規模に実現した。

 このマイルストーンの一環として、VodafoneThreeは全国のサイトで共有C-bandスペクトルのメリットを享受できるようになり、英国人口の約71%にあたる最大5,000万人がVodafoneThreeネットワークの最速5G速度を利用できるようになった。英国の他のどのモバイルネットワーク事業者よりも多くのC-bandスペクトルを保有するVodafoneThreeは、これを大規模に展開することで、より多くの場所でより多くの人々が最速5Gのメリットを最大限に享受できるようにする。
 Ericsson は「VodafoneThreeネットワークは、大規模な周波数帯域を組み合わせることで、お客様にとって最も重要なこと、すなわち、より広いエリアでより高速かつ大容量の通信を実現する」と説明している。

 C-bandスペクトルは、3.4~3.8GHz付近のミッドバンド周波数帯を指し、カバレッジと容量のバランスに優れ、都市部やビジネス環境など、より多くの人々に高性能な5G体験を提供する。個人ユーザにとっては、このネットワーク帯域は高解像度ストリーミング、ビデオ通話、ゲームなどを十分にサポートできる性能を備えている。企業にとっては、IoT、リアルタイムモニタリング、スマートデバイス、コネクテッドテクノロジーなど、高いスループットと低遅延を必要とするアプリケーションに最適だ。

 これらの地域における顧客メリットは以下のとおり。

最適なカバレッジへのダイナミックアクセス:VodafoneとThreeの顧客は、互いのネットワークを自動的に利用し、利用可能な最適なカバレッジを得られる。このシームレスな移行により、速度が向上し、信頼性が高まり、そして何よりも重要なのは、ユーザによる操作が一切不要であることだ。

4G圏外エリアの解消:VodafoneThreeは、これまで両ブランドの顧客が利用できなかった英国の地域に4Gカバレッジを提供することで、ロンドンの10倍の面積に相当する16,500km²の圏外エリアを解消した。

5Gカバレッジの強化:ネットワーク統合と5G展開計画の加速により、英国人口の約71%にあたる最大5,000万人が、VodafoneThreeの最速5G速度を利用できるようになった。

信頼性と回復力:ラッシュアワーなどの混雑時には、基地局が質の高いサービスを提供できる顧客数を超えるため、ネットワークに大きな負荷がかかる。この技術のおかげで、お客様は混雑したサイトから、必要なパフォーマンスレベルを提供できるサイトへと移動できるようになる。これにより混雑が緩和され、影響を受けるユーザのパフォーマンスが向上し、すべてのお客様により良い体験を提供できる。

人通りの多い場所におけるカバレッジの改善:スタジアム、空港、イベント会場などの人通りの多い場所では、仮設サイトへの戦術的な展開、屋内ソリューション、アップグレードなど、戦略的なカバレッジにより、需要の急増時にもサービスレベルが安定的に維持される。

 これらの最新の改善は、VodafoneThreeのネットワーク統合の第一段階の一環であり、数百万人のお客様にとって、より堅牢で効率的、かつ高性能なネットワークの基盤を築くものだ。マルチベンダの4Gおよび5Gネットワーク上でコアネットワークと無線ネットワークの共有を統合し、英国全土でC-bandスペクトルを統合することで、VodafoneThreeはより多くの場所で、より高速で大容量、そしてより信頼性の高い顧客体験を提供する、最高品質のカバレッジを実現する。

 VodafoneThreeの最高ネットワーク責任者であるAndrea Donà氏は「この世界初のネットワークアップグレードは、VodafoneThreeが最先端技術を用いて英国のデジタルインフラを変革していることを示すものだ。コアネットワークと無線ネットワークの共有を全国レベルで統合し、インテリジェントなオーケストレーションと動的な容量管理を導入することで、ネットワークパフォーマンスの新たなベンチマークを確立する」とし、「このアップグレードにより、お客様は既に信頼性とカバレッジの向上、そして最速の5G速度へのアクセスを実感されているが、これはほんの始まりに過ぎない。110億ポンドの投資を通じてアップグレードの展開を継続していく中で、お客様はさらに優れたパフォーマンスと、さらに高速な通信速度を期待できる」とコメントを出している。

 Ericssonの北欧地域責任者であるLuca Orsini氏は「VodafoneThreeとのこのマイルストーンは、規律あるエンジニアリングと緊密な連携が全国規模で何を実現できるかを示す証だ。稼働中のマルチベンダ4Gおよび5Gネットワークにこれほどの規模でMOCN技術を導入することは世界初であり、Ericssonが主導できたことを誇りに思える、真に複雑なエンジニアリング上の課題だった」とし、「結果は明白で、何百万ものお客様がより良い通信エリア、より速い通信速度、そしてより高い信頼性を実感されている。この取り組みにおいて、戦略的な構築パートナーとしてVodafoneThreeと協力できることを誇りに思っている。これは、私たちが共に実現していくことの始まりだ」とコメントを出している。

 VodafoneThreeは2025年9月に、ネットワーク投資の実施において、Ericssonを主要な戦略的構築パートナーとして発表した。このパートナーシップを通じて、VodafoneThreeは、Ericssonの次世代高性能RANおよびコアネットワークソリューションを英国全土に展開するとともに、既存の4Gおよび5Gインフラストラクチャの近代化を進めている。Ericssonの新しい高出力無線機ラインナップ(Radio 4464、Radio 4488、AIR 3266)は、VodafoneThreeが期待されるカバレッジ、パフォーマンス、容量を実現する上で重要な役割を果たし、ネットワーク全体のエネルギー消費量、サイト数、CO₂排出量を大幅に削減する。

 Ericssonは「このマイルストーンは、英国最高のネットワークを構築し、4つの国すべてのコミュニティを接続するためのVodafoneThreeの110億ポンドの投資プログラムの一環だ。この長期投資を通じて、VodafoneThreeは2030年までに人口の99%に5G SAカバレッジを提供し、 2034年までに99.96%を達成し、企業を支援し、地域経済を活性化させ、国の将来の成長を促進するために必要な、強靭で高品質なデジタルインフラを提供する」としている。

編集部備考

■5Gの高度化が5G SAという流れがあるので、今回の発表は、「最速の5G通信速度を提供開始」しつつ、「長期的なネットワーク最適化と5G SAへの進化の基盤を構築する」という、一見すると矛盾を含んでいそうなメッセージに思える。しかし、この点は5Gの技術的本質を踏まえれば、むしろ合理的なアプローチだ。
 まず押さえるべきは、「最速」という表現が示すのはピークスループットであり、これは必ずしも5G SAの導入有無と直結するものではないという点だ。5G SAは低遅延やネットワークスライシングといった機能的進化をもたらすアーキテクチャであり、通信速度そのものは主として利用可能な周波数帯域幅や無線実装に依存する。したがって、5G NSA構成であっても、キャリアアグリゲーション等により周波数を束ねることで、速度面では「最速」と呼び得る性能を実現することは十分に可能となる。

 今回のアップグレードの本質は、英VodafoneとThreeの統合に伴い、両社が保有していたC-band帯域を実質的に一本化した点にある。C-bandはカバレッジと容量のバランスに優れた、5Gにおける中核帯域であり、その帯域幅の大小がユーザ体感速度を大きく左右する。統合によりVodafoneThreeは英国最大級のC-band帯域幅を確保し、これをキャリアアグリゲーションで活用することで、物理的にもトップクラスのスループットを実現した。
 さらに注目すべきは、この統合を比較的短期間で実現した手法だ。EricssonのMOCN(Multi-Operator Core Network)技術を活用することで、基地局側のRANを共有しつつ、既存設備を大規模に刷新することなく、周波数資産を相互利用可能とした。もちろん、ソフトウェア更新や運用調整は不可避であるものの、ハードウェア更改を前提とする従来型の統合と比較すれば、時間・コストの両面で大幅な効率化が図られている。
 ここで重要なのは、この取り組みが高速化施策にとどまらない点だ。現在の5Gネットワークにおける主要なボトルネックは、コアネットワークよりもむしろ無線側の帯域容量にある。そのため、C-bandのような中帯域資産を拡張・統合することは、最も即効性の高いユーザ体感改善策となる。言い換えれば、本件は「今効く打ち手」を的確に選択した結果と言える。

 通信事業者の観点から見れば、本アプローチは極めて現実的な戦略だ。完全な5G SAへの移行には、コアネットワーク刷新や基地局更改を含め、膨大な投資と時間を要する。これを待つ間、顧客価値の提供が停滞するリスクを回避するため、まずは既存資産を最大限活用して速度という分かりやすい価値を先行提供し、その裏側で段階的にネットワークの高度化を進める。この「短期・中期・長期」を切り分けた時間分解的な投資戦略は、インフラビジネスにおける一つの模範例と位置付けられるだろう。
 今後、同社は2030年に向けて5G SAの人口カバー率99%をめざすとしているが、その道のりは一足飛びではなく、今回のような段階的な最適化の積み重ねによって実現される。本件は、5G SAという将来目標を見据えつつ、過渡期においていかに自社の周波数資産と既存インフラを再構成し、ユーザ体感価値を最大化するかを示した好例となる。
 AI時代において、モバイル含め通信インフラ全般への要求は一層高度化するが、その進化は必ずしも新規投資の積み増しだけで達成されるものではない。既存資産をいかに再編・最適化し、ユーザニーズに対する時間軸を調整するかが競争力を左右するケースも少なくないだろう。本件は、そのことを端的に示唆している。

■今回の取り組みは、周波数資産の有効活用にとどまらず、モバイルネットワークの構築・運用モデルそのものの変化を示すシグナルとしても注目に値する。すなわち、RANの共有が、従来の例外的手法から、競争力強化のための戦略的手段へと位置づけを変えつつある点だ。

 RAN共有自体は新しい概念ではない。これまでにも地方エリアや低採算地域において、設備投資や運用コストの削減を目的に導入されてきた経緯がある。しかしその多くは、あくまで「コスト最適化」の文脈に限定されており、都市部や高トラフィックエリアにおいて積極的に採用されるケースは限定的であった。
 これに対し今回の事例は、RAN共有を“攻めの施策”として活用している点に特徴がある。複数事業者の周波数資産を単一の無線アクセス基盤上で統合的に運用することで、単独では実現し得なかった帯域幅を確保し、結果として通信性能そのものを引き上げている。ここでの共有はコスト削減手段ではなく、「性能向上のトリガー」として機能している。

 この変化の背景には、5G時代特有の構造的要因が存在する。第一に、無線帯域、特に中帯域におけるスペクトラムの希少性が高まっている点が挙げられる。各事業者が個別に帯域を保有する従来モデルでは、断片化されたリソースのままでは効率的な活用が難しく、結果としてユーザ体感の最大化に限界が生じる。これに対し、共有によって帯域を束ねることで、物理的な制約を乗り越えることが可能となる。
 第二に、ネットワークのソフトウェア化が進展したことで、異なる事業者間でのインフラ統合のハードルが大きく下がった点も見逃せない。従来であれば大規模なハードウェア更改を伴った統合が必要であったが、現在ではソフトウェアによる制御・調整によって、より柔軟かつ段階的な統合が可能となっている。このことが、RAN共有を現実的な選択肢へと押し上げている。
 こうした動きは、将来的なネットワーク構造の在り方にも影響を及ぼす可能性がある。すなわち、「ネットワークは各事業者が個別に構築・所有するもの」という前提から、「インフラは共有し、その上でサービス競争を行う」という分離モデルへのシフトだ。この潮流は、Open RANやニュートラルホストといった概念とも親和性が高く、6G時代に向けたインフラ設計の方向性を先取りするモデルの一つとも言える。
 今回の事例は、RAN共有が効率化手段だけではなく、競争優位性を生み出すための戦略的基盤へと進化しつつあることを示している。また、地方のカバレッジ補完として使われてきたMOCNを、イギリス全土の主要都市を含む人口の71%(5000万人)をカバーする規模で展開したことにより、Ericssonのネットワーク インテグレーションの高さも示された。今後、スペクトラムの制約とトラフィック需要の増大が続く中で、このような共有モデルがどこまで主流化していくのかは、通信業界全体にとって重要な論点となるだろう。

■本件を競争戦略の観点から読み解くと、英国市場においては、主要事業者間でC-bandの保有量がネットワーク性能、ひいてはブランド競争力に強く影響する構造となっている。こうした中で、統合により最大級の帯域幅を確保したVodafoneThreeが、「最速」という分かりやすい価値を前面に打ち出すことは極めて合理的な選択と言える。すなわち本施策は、ネットワーク高度化にとどまらず、スペクトラム優位性を市場認知へと転換するマーケティング戦略としての側面を持つ。
 さらに、この「最速」の実現がNSA構成のままで達成されている点も重要だ。ユーザ体感の向上によって短期的な満足度を確保することで、5G SAへの移行に対する市場からの圧力を相対的に緩和し、結果として投資タイミングの柔軟性を確保する効果が期待できる。その観点で本件は、統合という中長期戦略の中で、既存資産を活用して短期的価値を創出しつつ、将来投資の時間軸をコントロールする戦術と位置付けられるだろう。
 AI時代の到来は新たな需要を喚起する一方で、「いかに加入者を獲得し、維持するか」という通信事業の本質的課題をよりシビアなものとしている。こうした環境下では、メインストリーム的なロードマップや技術選択だけではなく、各事業者の置かれた状況に応じて、既存資産と技術を組み合わせる戦略的判断も求められる。本件はその一例として、通信ベンダが蓄積してきた技術群をどのように組み合わせ、事業価値へ転換するかの好例を示している。

(OPTCOM編集部)