VIAVIが、小型・軽量・低消費電力プラットフォーム向け高精度タイミングを実現するGNSS同期発振器を発表
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VIAVI Solutions(以下、VIAVI)は6月1日(アリゾナ州チャンドラー)、M.2 Bキーフォームファクタを採用した新しいGNSS同期発振器「µPNT GDO-1000」を発表した。
同社は「切手サイズのわずか22mm×42mm、重量4グラム未満のGDO-1000は、従来のタイミングモジュールが設置できない、あるいは消費電力が大きすぎるプラットフォームなど、高精度なタイミングを必要とする用途向けに設計されている。対象となるプラットフォームには、防衛・航空機搭載プラットフォーム、無人システム、データセンタ カード、通信機器などが含まれる」と説明している。
GNSS干渉は、運用上の継続的な課題となっている。防衛および重要インフラ調達において、デュアル周波数L1/L5受信は基本要件としてますます重視されるようになっている。小型・低消費電力の高精度タイミングに対する需要は、複数の市場で拡大を続けており、特に戦闘部隊や無人プラットフォームが機動性を維持するためにペイロードを制限する中で、チップスケール原子時計(CSAC)を設計に組み込んだ顧客はコストと納期のプレッシャーに直面している。
µPNT GDO-1000は、以下の独自の機能の組み合わせにより、これらの課題を解決する。
・マイクロ秒クラスの24時間ホールドオーバーを備えたデュアル周波数L1/L5 GNSS受信により、悪条件下でも高精度かつ安定したタイミングを実現する。
・M.2 Bキーフォームファクタは、カスタムの機械設計を必要とせず、最新のコンピューティングプラットフォーム、タイムアプライアンスカード、組み込みシステムに容易に組み込むことができる。消費電力は約0.5ワット。
・Jackson Labsチーム(現在はVIAVIの一部)が開発した特許取得済みのAIおよびMLアルゴリズムは、様々な環境条件下での発振器の挙動を予測し、補正する。
・MEMS発振器は、従来の水晶発振器(OCXO)よりも軍用温度範囲全体で優れた熱安定性を実現し、振動や衝撃下でも位相ノイズとアラン偏差の性能を維持する。
・外部1PPS入力に対応しており、ハードウェアの変更なしにMコードGPS、代替ナビゲーションソース、またはその他の外部基準信号で同期させることができる。
・複数の1PPS入力と低位相ノイズ10MHzに対応している。小型ながらシステム統合の柔軟性を高める同軸入出力を搭載。
VIAVIの航空宇宙・防衛部門担当上級副社長兼ゼネラルマネージャーであるDoug Russell氏は「これまで、小型システムで信頼性の高いタイミングを必要とするお客様は、最適とは言えない2つの選択肢から選ばざるを得なかった。CSACは高価で供給も限られている。一方、フルサイズのOCXOベースのタイミングソリューションは、多くの最新プラットフォームにとって大きすぎ、消費電力も大きすぎる」とし、「GDO-1000は、お客様に妥協を強いることのない新たな道筋を提供する。そのホールドオーバー性能は、原子時計クラスのクロックに匹敵するレベルでありながら、標準的なM.2スロットに収まるモジュールで、消費電力は約0.5ワットだ」とコメントを出している。
編集部備考
■GNSS同期発振器(GNSS Disciplined Oscillator:GDO)への需要が急速に高まっている。背景にあるのは、5G/6G通信、データセンタ、無人システム、防衛分野における高度化と、それに伴う「時間同期」の重要性の質的変化だ。
従来、時刻同期はGNSS(GPSなど)から配信される基準信号に依存する「外部同期」が主流だった。しかし近年は、GNSS信号の遮断や妨害(ジャミング、スプーフィング)が現実的なリスクとして顕在化している。このため、ネットワークに依存せず各ノードが自律的に時間を維持する「ホールドオーバー性能」が重視されるようになっている。すなわち、同期は「配られるもの」から「各装置が保持するもの」へと構造転換が進んでいる。
通信分野では、この変化は顕著だ。5GのTDD方式やO-RAN構成では、基地局間で数十ナノ秒レベルの厳密な位相同期が求められる。さらに、都市部におけるスモールセルの大量展開により、低消費電力かつ量産性に優れた小型同期デバイスの需要が拡大している。従来はネットワーク側で担っていた同期機能の一部が、エッジ側へと分散しつつあると言える。
データセンタにおいても事情は同様だ。高頻度取引(HFT)や分散データベースでは、マイクロ秒からナノ秒レベルのタイムスタンプ精度が求められ、時間のずれはそのまま処理の正当性や競争優位性に直結する。AI処理やクラウドの拡大に伴い、サーバ内部に搭載可能なM.2やPCIe型の高精度タイミングカードへの関心も高まりつつある。ここでも「時間」は補助機能ではなく、インフラ品質そのものとして扱われ始めている。
防衛・安全保障分野では、この傾向はさらに先鋭化する。現代の戦場ではGNSS妨害が常態化しており、外部基準に依存したシステムは脆弱だ。こうした環境下では、GNSSが途絶しても高精度な時刻を維持できるバックアップ発振器の搭載が事実上不可欠となっている。また、ドローンや無人車両(UGV)といった無人システムでは、振動や温度変化といった厳しい環境条件の中で安定した動作を実現する小型・高耐久の発振器が求められている。
こうした市場の拡大を背景に、高精度タイミングデバイスの技術潮流は大きく二つに分かれている。一つは、チップスケール原子時計(CSAC)に代表される超高精度路線であり、もう一つはMEMSやデジタル制御技術を活用した低コスト・低消費電力路線だ。前者は性能面で優れる一方でコストや消費電力が課題となり、後者は実装性に優れる一方でホールドオーバー性能に制約がある。
VIAVIが発表した「µPNT GDO-1000」は、こうした二つの潮流の中間に位置する設計思想を体現している。M.2フォームファクタという極めて小型な実装でありながら、CSACに迫るホールドオーバー性能を実現し、消費電力も約0.5Wに抑えられている点は注目に値する。これは部品の高性能化だけではなく、サイズ・重量・電力(SWaP)制約の厳しい領域において、高精度タイミングの適用範囲を拡張する可能性を示している。
GDOの需要を地域別に見ると、北米ではPNT(位置・航法・時刻同期)強靭化政策の下、防衛用途を中心に小型高精度発振器の需要が高い。また、ハイパースケーラーの集積により、データセンタ向けタイミングデバイスの市場も拡大している。アジア太平洋地域では、5G/O-RANの展開に加え、ITSやスマートファクトリーなど産業用途での需要が伸びている。欧州では自動車産業のデジタル化とともに、電子戦リスクの高まりが市場を後押ししている。
このように、GNSS同期発振器は補助部品ではなく、「時間を保持する能力」を各ノードに実装するための基盤技術へと進化している。今後は、GNSSやPTPといった外部同期手段に加え、ローカルでの高精度な時間維持という“第3のレイヤ”が不可欠になるだろう。通信技術の高度化が進む中で、時間同期のあり方そのものが変わりつつある。GDOの進化は、その変化を象徴する一つのシグナルと言える。
■上記の備考では、GNSS同期発振器の用途拡大と市場動向を俯瞰したが、こうした需要増の背景には、より本質的な構造変化が存在する。それは、時刻同期が「精度の問題」から「信頼性の問題」へと変質している点だ。
従来、GNSSに基づく時刻同期は高精度かつ安定したインフラとして広く利用されてきた。しかし、近年はジャミングやスプーフィングといった妨害・欺瞞行為が現実の脅威として顕在化している。特に防衛分野に限らず、民生領域においてもGNSS信号の遮断や改ざんは無視できないリスクとなりつつある。この結果、「高精度な時間を取得できるか」ではなく、「その時間が正しいと信頼できるか」が問われる局面へと移行している。
この変化は、通信、金融、データセンタといった分野において顕著だ。例えば5Gネットワークでは、同期のずれが通信品質の低下に直結するだけでなく、誤った制御や干渉の原因となり得る。また、金融取引においては、タイムスタンプが取引の正当性を証明する根拠となるため、時刻の信頼性そのものがビジネスリスクに直結する。分散データベースやログ解析においても同様に、時刻は記録だけではなく、システム全体の整合性を担保する基盤となっている。
こうした環境下では、GNSSに依存した単一の時刻源では不十分であり、複数の手段によって時間の正当性を担保する必要がある。GNSS、ネットワーク同期(PTP)、そしてローカルで時間を保持する高精度発振器といった複層的な構成が求められる中で、GNSS同期発振器はバックアップ機能を超え、「時間の信頼性を支える基盤要素」として再定義されつつある。
この流れにおいて、GDOの本質的な役割は、外部から供給される時間を補完することではなく、システム内部における“トラストアンカー”として機能する点にある。GNSSが利用可能な状況では基準に同期し、遮断時には自律的に高精度な時間を維持することで、システム全体の信頼性を下支えする。このような役割は、今後の分散化・高度化するネットワークにおいて不可欠となるだろう。
GNSS同期発振器の用途の広がりは、この「時間の信頼性」という新たな要件を端的に示している。GNSS同期発振器の進化は、性能向上だけではなく、情報システム全体における信頼の在り方そのものを再定義する予兆の一つと捉えるべきだ。
(OPTCOM編集部)




