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OptusとEricssonが、商用デバイスを用いた実稼働ネットワーク上で、2.3GHz帯と3.5GHz帯をまたぐ180MHz幅の5G SAキャリアアグリゲーションを世界で初めて実現

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 OptusとEricssonは5月7日、実稼働中の商用ネットワーク上で5G SAキャリアアグリゲーション技術を用いて、2.3GHz帯と3.5GHz帯をまたぐ180MHz幅のスペクトルアグリゲーションをテストし、世界で初めて成功したと発表した。

 両社は「この画期的な成果は、Optusの5Gイノベーションにおける継続的なリーダーシップを改めて示すとともに、高度なネットワーク技術がいかにして顧客にとってより高速な通信速度、高い信頼性、そしてより安定した体験をもたらすかを実証するものだ」としている。

 Optusは、2.3GHz帯と3.5GHz帯にそれぞれ保有する独自のミッドバンドTDDスペクトルを組み合わせることで、記録的な180MHz幅のTDDスペクトルアグリゲーションを実現した。

・4CC(4コンポーネントキャリア)アグリゲーションにより、900MHz、2.1GHz、2.3GHz、3.5GHzの4つの異なる周波数帯域を有効活用し、220MHzのダウンリンク帯域幅を実現した。

・2CC(2コンポーネントキャリア)アップリンクアグリゲーションでは、900MHzと2.1GHzの周波数分割複信(FDD)帯域と、2.3GHzと3.5GHzのTDD帯域を組み合わせた。

・Samsung Galaxy S26 Ultraなどの市販端末を用いた実稼働ネットワークサイトにおいて、ダウンリンクで最大3.4Gbps、アップリンクで最大200Mbpsのピーク速度を達成した。

 この新機能により、Optusの5Gネットワークにおける顧客体験が大幅に向上する。高解像度ビデオストリーミング、AR/VR、大容量ファイルのダウンロードなど、データ集約型のアプリケーションやサービスにおいて、優れたユーザエクスペリエンスを提供する。この技術革新により、Optusの5Gネットワークが高需要で多数の顧客が同時に利用している場合でも、アプリケーションの動作がよりスムーズになる。

 低帯域と中帯域の周波数を動的に組み合わせることで、Optusはネットワークリソースをリアルタイムでより適切に割り当てることができ、都心部、交通ハブ、イベント会場などのトラフィック量の多い環境でも、顧客は安定した高品質な接続を享受できる。

 この世界初の画期的な技術は、最も重要な場面で具体的なメリットをもたらす。シドニーキャンパスにあるOptusの商用ネットワーク上で、Samsung Galaxy S26 Ultraなどの最新フラッグシップスマートフォンを含む主流デバイスを用いてテストした結果、商用環境における大規模な5G SA 4CC TDDおよびFDDキャリアアグリゲーションの実用化に向けた準備が整っていることが実証された。
 2つのTDD周波数帯域にわたるこの独自の180MHzの組み合わせは、5G固定無線アクセス(FWA)サービスも強化し、より多くの家庭や企業が高速で信頼性の高いブロードバンド接続の恩恵を受けられるようになる。

 このマイルストーンは、OptusとEricssonがこれまで5Gキャリアアグリゲーション機能の向上において達成してきた成果に基づいている。Optusは2020年にEricssonと提携し、初の2300MHz + 3500MHz 5Gノンスタンドアローン(NSA)キャリアアグリゲーション通話を実証した。こうしたマイルストーンは、高まる顧客ニーズに対応し、将来のデジタルサービスを実現するために、ネットワークパフォーマンスの進化に継続的に注力していることを示している。

 この新機能は、Samsung Galaxy S24以降のシリーズをはじめとする、Optusネットワーク上の主要デバイスで既にサポートされている。

 OptusのCTOであるSri Amirthalingam氏は「今回の成果は、最先端の5G技術を実際の環境においてお客様に具体的なメリットをもたらす形で活用していることを示すものだ。Ericssonとの継続的な協業を通じて、5Gネットワーク全体の容量とパフォーマンスを向上させ、より高速で信頼性の高い接続を実現している。このマイルストーンは、5G Advancedへのネットワーク進化における重要な一歩であり、イノベーションの最前線に立ち続け、お客様に具体的な価値を提供するという当社のコミットメントを改めて示すものだ」とコメントを出している。

 Ericsson Australia and New Zealandの責任者であるLudvig Landgren氏は「Optusは、高度な5G機能の導入において引き続き強力なリーダーシップを発揮しており、今回の成果は両社のパートナーシップの強さを改めて示すものだ。Ericssonの技術と複数の周波数帯域を拡張・統合することで、Optusのパフォーマンスを大幅に向上させ、お客様の日々の体験をより向上させることを支援している」とコメントを出している。

 Optusは今後12~18ヶ月かけて、シドニーとメルボルンの都市圏ネットワーク全体にこの高度なキャリアアグリゲーション機能を段階的に展開し、より多くの顧客にパフォーマンスの向上を提供する予定だ。

編集部備考

■EricsonとOptusが発表した今回の成果は、5Gにおける周波数資産の活用効率を飛躍的に高める技術的進展であり、同時に今後の産業用AI時代を見据えた通信インフラの方向性を示すものと言える。両社は、2.3GHz帯と3.5GHz帯を組み合わせ、合計180MHz幅のキャリアアグリゲーション(CA)を5Gスタンドアロン(SA)環境で実現した。特筆すべきは、これが実験環境ではなく、商用端末を用いたライブネットワーク上で達成された点にある。すなわち本成果は、技術的可能性の提示にとどまらず、既存ネットワークの高度化によってユーザ体験を即時に向上させ得る現実的な選択肢であることを示している。

 従来、周波数は低帯域がエリアカバー、中帯域が高速通信といった形で役割分担されてきたが、こうした静的な運用は必ずしも効率的とは言えなかった。特定帯域の混雑と他帯域の余剰といった非対称が生じる中、CAによって複数帯域を動的に束ねることで、通信資源全体を一体的に活用する「スペクトラムの仮想化」とも言うべき運用が可能になる。今回の実証は、この考え方を商用環境で裏付けた点で、各国の通信事業者にとって教科書的な意義を持つ。
 また、この技術が5G SAで実現されている点も重要だ。SAは4Gコアに依存しない純粋な5Gアーキテクチャであり、ネットワーク全体の最適化を前提とする。これにより、CAの高度化による大容量化と低遅延性を同時に引き出すことが可能となる。従来は「技術的に可能か」が問われていたSAであるが、今回の事例は「いかに商用価値として展開するか」という段階へと議論を進める契機になるだろう。

 この動きが大きな意味を持つ理由として、今後の産業用AIというキラーアプリケーションの存在がある。製造現場におけるロボット制御や自動搬送といった用途では、ミリ秒単位の遅延が生産性や安全性に直結するため、エッジでのリアルタイム処理とそれを支える低遅延通信が不可欠となる。また、ネットワークスライシングを活用すれば、一般トラフィックから分離された専用リソースを確保でき、ミッションクリティカルな業務を安定的に運用できる。さらに今後は、設備の状態監視や外観検査などで生成される膨大なデータを上り方向で収集し、AIが解析・学習するケースも増えると見込まれる。CAによる広帯域化は、こうしたデータ駆動型の産業基盤を支える重要な要素となる。

 通信事業者にとって、周波数は国家から割り当てられた有限かつ高価な経営資源だ。その活用効率をいかに高めるかは、収益性と競争力を左右する根本課題となる。今回のように既存資産からより多くの通信容量を引き出す技術は、追加投資を抑えつつサービス価値を向上させる手段となるだけでなく、エンタープライズ市場における差別化要因にもなりえる。特に産業用AIの導入企業にとっては、通信品質は利便性だけでなく事業継続の前提条件となるため、「安定して大容量を提供できる事業者」が選択される構図が強まる。
 今回の発表は、通信インフラの進化が高速化競争だけでなく、産業の競争力そのものを左右する段階に入ったことを示している。AIと通信が不可分となる時代においては、周波数資産をいかに高度に使いこなすかが、産業基盤を握る鍵となる。言い換えれば、通信技術を磨き続けた者が、次世代の産業エコシステムにおける影響力を強めていくことになるだろう。

(OPTCOM編集部)