光通信、映像伝送ビジネスの実務者向け専門情報サイト

光通信ビジネスの実務者向け専門誌 - オプトコム

有料会員様向けコンテンツ

堅牢な超大容量光ネットワークに向けた光ノード技術を開発【NEC】

テレコム 無料

伝送距離1.5倍、通信容量25%増加し、障害復旧性能を向上

 NECは3月17日、光パス(光信号の経路)の到達距離拡大と通信容量の増加を両立できる次世代光ノード技術を開発したと発表した。本技術はネットワークを有効活用することで、次世代の超大容量光ネットワークの堅牢性向上を実現するものだという。

今回開発の光ノード技術

 今回、通信の経路切り替え装置である光ノード内の光フィルタにおいて、フィルタの帯域幅を広帯域化し、到達距離を低下させる帯域狭窄を大幅に低減する光フィルタ技術を開発した。また、広帯域化した光フィルタを通過する光信号を高精度に制御して信号の欠損を抑え、光パスの到達距離を向上させる光波長制御技術を開発した。さらに、通信を中央でコントロールするネットワークコントローラにおいて、送信する光信号に設定されるガードバンド(空白帯域)の割り当てを制御し、限られた帯域で光パス数を増加させるガードバンド制御技術も開発した。
 これらにより、従来と比較して光信号の伝送距離を1.5倍に拡大するとともに、光パス数の増加による空き容量を25%向上したという(※4×4メッシュ光ネットワークトポロジモデルにおいて)。
 本技術により、災害時など、急激な需要変動や障害が発生した際、空いている容量に、到達性の高い光パスの追加割当が可能となる。障害復旧性能に優れた、災害時でも止まらない堅牢なネットワーク環境の実現に貢献する技術と言える。

背景

 近年、インターネットの動画コンテンツの急増やIoT機器の増加、クラウドサービスの普及など、ネットワーク需要の拡大と多様化はさらに加速している。これらを支える快適なネットワーク環境の持続的な提供に向けて、需要変動や障害に強い大容量光ネットワーク技術が求められている。
 光ネットワークでは、大容量化を実現するデジタルコヒーレント技術による超高密度の波長多重伝送技術の導入と、大容量の光信号を光のまま効率良く切り替えできる、光パスネットワーク技術の導入が始められているが、信号品質の劣化低減、光パスの到達距離拡大、容量の増加などが課題となっている。特に、次世代大容量ネットワークである1チャネルあたり毎秒400Gbps級の超高密度の波長多重光パスネットワークにおいては、既存の通信網資源を有効活用して、従来と同等の光通信品質を実現する技術開発が課題となっている。
 そこで今回、光ネットワークの効率的な活用を実現する、光パスの到達距離拡大と通信容量の増加を両立できる光ノード技術を開発したという。

新技術の特長

光ノード内の光フィルタを広帯域化

 光ノード内の光フィルタについて、中心周波数を光周波数グリッド(注3)に固定したままフィルタの帯域幅を拡大し、端部をオーバーラップして配置することで、広い帯域を実現。各フィルタの通過帯域を広くすることで、帯域狭窄を大幅に低減。これにより、光ノード内の光フィルタを通過した際に、帯域狭窄の影響で生じる光信号の欠損を最小限に抑制可能。
 本技術により、超高密度の波長多重光パスネットワークにおいて、光信号の欠損を最小限にできるため、多数の光ノードを通過する多段中継の光通信においても、到達性を向上。

光ノード内で送信光の波長を高精度に制御

 光フィルタの帯域拡大により帯域狭窄は大幅に低減する一方で、隣接する光信号との干渉(クロストーク) が発生。これに対し、干渉とフィルタによる帯域狭窄による欠損のバランスをとって伝送特性が良くなるよう、フィルタごとの透過帯域特性に応じて、波長を高精度に制御する技術を開発。これにより、クロストークが発生しても、クロストークの影響を最小限に抑えた通信が可能。
 特に多段ノード中継時に、発生する光フィルタの帯域狭窄に対しても本技術を適用することで、必要な波長を欠損させず、かつ隣接する波長同士のクロストークも発生させない最適な波長制御による、光信号送信を実現。これにより、光信号の到達性を向上。

 上記1,2の技術により、超高密度の波長多重光パスネットワークにおける、多数の光ノードを通過する多段中継において、従来比1.5倍の光信号到達距離を実現。

ネットワークコントローラにおける適応的なガードバンド幅割り当て

 ネットワークコントローラにおいて、伝送距離や光ノード数、光変調方式などから、光パスの品質(送信する光信号の品質劣化量と光パスの到達性)を見積もり、品質に応じて、光信号の波長間に挿入するガードバンド(注4)幅を決定。従来一定だったガードバンド幅を最小限に設定可能となるため、全体のガードバンド幅を大幅に削減でき、光波長の収容率を向上。これにより、余分に取られていた帯域が空くことで、通信容量を従来比25%向上。
 本技術により、空いた帯域に新たな光パスの割り当てが可能となるため、急な需要変動や災害時の復旧用などに利用可能。

 今回開発された技術の一部は、2013年からNECが参画している、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が委託する「エラスティック光通信ネットワーク構成技術の研究開発」の一環として進めてきた研究成果だという。

関連記事