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5G向け28GHz帯対応の超多素子AASでのデジタル制御による同時4ユーザ多重伝送を世界で初めて実現【NEC】

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 NECは2月9日、次世代無線通信規格5Gの実用化に向けて、28GHz帯対応の超多素子AAS基地局システム(注1、AAS:Active Antenna System)のデジタルビームフォーミングの伝送実験を行い、超多素子AAS1台から端末4台に対して同時のビームフォーミング伝送(4マルチユーザMIMO)を世界で初めて実現したと発表した。同実験では、周波数帯域幅300MHzを適用し、セルスループット3.1Gbpsを達成した。
 2020年以降、5Gの特徴である超高速(eMBB:enhanced Mobile Broadband)・超大量接続(mMTC:massive Machine Type Communications)を活かしたサービスの多様化や高度化を実現するためには、帯域幅を広く確保できる28GHzなどの高周波数帯の活用や、空間多重や伝搬損失の大きな周波数で長距離通信を実現するビームフォーミングの活用が有効な手段となる。
 ビームフォーミングを実現する超多素子AASには、フルデジタル制御方式とアナログ制御方式があり、NECが開発している28GHz帯対応の超多素子AASは、ビーム形成の精度向上を実現するフルデジタル制御方式を採用している。
 フルデジタル制御により、超多素子AAS1台から同時に複数方向にビームを形成し、空間多重により隣接したユーザと干渉することなく、高速・大容量通信を高効率に実現する。また、直接波以外の信号であるマルチパスを考慮したビーム形成が可能であるため、ビームの方向調整が緩やかで、高品質な通信を実現する。さらに、マルチパスを利用して干渉する信号を打ち消すビーム形成が可能であるため、セル間干渉による性能低下が少ないなどの利点がある。一方、アナログ制御方式の場合は、ビーム数と同数の超多素子AASの設置が必要となり、設置面積の増大が課題となる。
 フルデジタル制御方式には、多数のデジタル・アナログ信号変換機、周波数変換機が必要だ。そのため、一般的にシステム全体の消費電力・容量・コストが増加します。NECは独自の省電力技術により、これらの変換機能の省電力化・小型化を図ったフルデジタル制御の超多素子AASの開発を実現した。

 

アナログ制御方式とフルデジタル制御方式の比較

 NECは「今後も、ネットワークの高速・大容量化と超大量接続を実現する超多素子アンテナ基地局システムの開発と実証実験を進めていく」としている。