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超大容量1Tbps光信号の長距離伝送に成功【NTT、NTT Com】

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商用環境において世界最長1,122kmの伝送を実現

 NTTとNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は6月19日、商用環境において1Tbps光信号の長距離伝送の実証実験(以下、同実験)に成功したと発表した。
 同実験では、NTT Comの商用環境に敷設した光損失と光非線形性を低減させた新しいコア拡大低損失光ファイバケーブルを用い、NTT独自の「高品位な多値光変調信号を送受信するために光送受信機内部の不完全性を補償する高精度校正技術」「最先端のデジタルコヒーレント技術を実装したデジタル信号処理プロセッサと広帯域光フロントエンド回路を搭載した光送受信機「伝送路設計技術によって、1Tbps光信号による波長多重伝送」を実施し、世界最長となる1,122kmの長距離伝送試験に成功した。
 この成果は、現在の実用システム(1チャネルあたり100Gbps)の10倍の伝送速度、及び8割以上のビットあたり消費電力低減を見込み、5Gサービスの普及や、将来のIOWN構想実現につながる大容量通信ネットワーク技術として期待されている。
※IOWN(アイオン):「Innovative Optical & Wireless Network」

背景

 近年の映像データの流通拡大やクラウド技術の進展に加え、5Gサービスなど新しい情報通信サービスの普及に伴い、トラヒックは増大し続けることが予想される。このような状況に対応するためには、基幹系の光通信ネットワークにおいても、さらなる大容量化を経済的に実現することが求められている。そこで、NTTとNTT Comは、既設の光伝送システムの経済的な容量拡張に向けた、世界最高水準の技術の開発を進めてきた。

実証実験の概要

 同実験にあたり、NTT Comの商用環境に敷設した光損失と光非線形性を低減させた新しいコア拡大低損失光ファイバケーブルと、NTTが新たに開発した光送受信機を用いて、1Tbps光信号による波長多重信号の1,122km伝送環境を構築した(図1)。

図1:伝送実験の構成

 1Tbps光信号生成のため、最先端のデジタル信号処理プロセッサと広帯域光フロントエンド回路を搭載した光送受信機によるデジタルコヒーレント技術を用いて、光の偏波、位相、及び振幅に情報を乗せることで情報量の増大を実現する偏波多重32QAM変調信号(1波長あたり500Gbpsと、2波のサブキャリア多重を利用している。これにより、現在の実用システムの1チャネルあたり100Gbpsの10倍となる1Tbpsに伝送速度を高速化することが可能となった。1波長あたりの伝送容量を拡大させることにより、ビット当たりの消費電力も既存装置と比較して、8割以上の削減を見込むことが可能となる。
 加えて、NTT独自の技術を用いて、光送受信機内部の不完全性(信号経路長や信号経路による損失ばらつき等)を高精度に校正することにより、受信信号を理想信号に近づけることが可能となり、高品質な信号の送受信が可能となった(図2)。これにより、高い信号品質が要求され、技術的難易度が非常に高い32QAM多値光変調信号において、世界最長となる1,122kmの長距離伝送の実証に成功した(図3)。
 同実験の一部は、総務省の委託研究「巨大データ流通を支える次世代光ネットワーク技術の研究開発」および「新たな社会インフラを担う革新的光ネットワーク技術の研究開発」により得られたデジタルコヒーレント光伝送技術を利用しているという。

図2:高精度校正技術のイメージ


図3:報告されている実験結果と本成果

今後の展開

 NTTとNTTコミュニケーションズは「IOWNの実現に向けて、End-Endでのフォトニクス技術をベースにした大容量、低遅延、かつ柔軟性、消費電力に優れた革新的なネットワークをめざして、最先端の1Tbpsの光伝送技術をさらに拡張発展していく。その成果を活かした大容量光伝送システムと高性能な光ファイバ伝送路を含めた経済的かつ大容量なネットワークの実現を推進する。併せて、国内外の機関とも連携して、成果のグローバル展開をめざしていく」としている。