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世界初、28GHz帯5G電波の透過・反射を動的制御する透明メタサーフェス技術の実証実験に成功【ドコモ】

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高い透明性で景観を損ねずに柔軟な5Gエリアの拡大を実現

 NTTドコモ(以下、ドコモ)は1月17日、AGCの協力を得て、5Gにおけるエリア構築の最適化に向けて、高い透明性を維持しながら電波の反射・透過を制御する「透明動的メタサーフェス※1」のプロトタイプを開発したと発表した。1月10日にドコモR&Dセンタ(神奈川県横須賀市)にて、28GHz帯電波の透過・反射を動的に制御する実証実験に世界で初めて(ドコモ調べ:2020年1月17日現在)成功したという。

※1 メタサーフェス:波長に対して小さい構造体を周期配置して任意の誘電率・透磁率を実現する人工媒質(メタマテリアル)の一種で、構造体の周期配置を2次元とした人工表面。

実験で使用された透明動的メタサーフェスのプロトタイプ

 同実験で使用された透明動的メタサーフェスは、ドコモが原理提案・設計をし、AGCが材料・微細加工技術の検討および製造を行った。
 5G以降の世代で利用される高い周波数帯は直進性が高く、基地局から見通せる範囲外は電波の反射を活用してエリア構築することが効果的であるため、ドコモは反射波の方向やビーム形状を任意に設計することが可能なメタマテリアル反射板を検討してきた。しかしメタマテリアル反射板はエリア拡大に有効である一方、設置場所に合わせた設計が必要であり、反射板の裏には電波が届かなくなることや、景観に影響を与えるなどの課題があり、エリア拡大を進めていく為にはより柔軟に電波伝搬を制御する必要があった。
 今回、ドコモとAGCが開発した透明動的メタサーフェスは、小さな構造体を規則的に多数配置したメタサーフェス基板を透明化したものに透明なガラス基板を重ね、重ねたガラス基板を微小に可動させることで、入射電波を透過するモード、電波の一部を透過し一部を反射するモード、すべての電波を反射するモードの3パターンを動的に制御することが可能だ。今回のメタサーフェス動的化手法は、半導体を用いたこれまでの手法に対して、“透明性を維持したまま動的制御が可能”、“基板の大面積化が容易”という優位性があり、景観や既存のデザインを損なうことがないため、建築物や看板、広告、車両などへの設置の可能性が広がる。設置場所の環境に合わせて動的に電波伝搬を制御することで、基地局の設置が困難な建物が密集したオフィス街や、電波の透過・反射を制御する需要があるような屋内環境などにおいて、よりきめ細やかな5Gエリアの構築が可能となる。

将来ユースケースのイメージ

 同実験では、透明動的メタサーフェスを透過するモード・反射するモードの2パターンで、入射電波の透過特性を測定し、28GHz帯で、透過モードの時は電波が減衰することなく基板を透過し、反射モードの時は電波が減衰することなく反射することを確認した。
 同実証実験で使用した透明動的メタサーフェスは、1月23日から1月24日まで東京ビッグサイトで開催されるドコモのイベント「DOCOMO Open House 2020」でも紹介されるという。
 ドコモは「本技術は5Gよりもさらに高い周波数帯への適用も可能だ。ドコモは、今後も5Gエリアの効率的かつ柔軟なエリア構築手法の確立をめざすとともに、5Gとその先の無線環境制御技術の研究・開発に取り組んでいく」としている。

透明動的メタサーフェスを用いた原理実験の内容

実験概要
 神奈川県横須賀市のドコモR&Dセンタにおいて、透明動的メタサーフェスのプロトタイプに対して垂直に電波を入射し、透過モード時(メタサーフェス基板と可動透明基板が接した状態)と反射モード時(メタサーフェス基板と可動透明基板が200μm以上離れた状態)の透過率を測定した。同実験ではメタサーフェス基板と可動透明基板間の距離をマニュアル制御したが、今後は高速で電気制御することが可能な圧電アクチュエータを使用して、高速に透過モードと反射モードを制御することが可能になる。

実験概要1


実験概要2

実証実験成果
 透過モードの際に透過率約-1dB、反射モードの際に透過率-10dB以下(これより計算される反射率:-1dB以上)の性能を400MHz以上の帯域で達成できることを確認した。

透過率測定結果

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