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NECとNTT Com、新冷媒を用いた世界初の冷却システムを開発

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共同実験を実施し空調消費電力が半減できることを実証

従来の冷却システムとの比較

 NECとNTT Comは8月28日、DC内の通信機械設備の空調におけるノンフロンの新冷媒を用いた冷却システムを開発し、共同実験を行ったことを発表した。その結果、空調消費電力を従来の冷却システムと比較して半減できることを実証したという。
 同システムは、新冷媒(ノンフロン)を世界で初めて空調設備として実用化し、既存フロア、サーバルーム等への設置が容易な構造とすることで、消費電力削減および地球環境負荷の低減に貢献することが期待される。

開発の背景と目的

 ICTの活用拡大によりDCの市場は、年率10%以上で増加している。また、首都圏における全消費電力の約12%が通信装置等による電力量と言われており、環境保護の観点からも消費電力の低減が課題となっている。特にDCの消費電力の約30%以上を占める空調消費電力の低減が大きな効果のあるものとして期待されている。
 これらDCの空調消費電力低減に向けた冷却効率向上策として、発生熱源付近で冷却を行う方法が一般的に良い構成とされているが、配管が容易な水冷システムによる局所空調では、受熱部機器が大きいため後付け設置が困難だった。また、従来の冷媒は高圧ガスとなるため、有資格者による管理が必要となるなど様々な課題があった。

 今回、NECとNTT Comは、「相(気体液体)変化冷却技術」を利用した新低圧冷媒冷却システムを開発した。運用中のNTT ComのDCにおける実証実験を行い、空調消費電力が半減できることや既存フロア、サーバルーム等への設置が容易であることを確認したという。

技術の特長

既設DC設備へ後付け、増減設容易な空調システムの実現:従来の水冷システムより、熱交換性能が高い「相変化冷却システム」を導入することで、受熱性能を2倍以上に向上し、受熱部の小型化(従来比高さ約1/2)を実現。天井高が低いフロアへの局所空調として、既存の建物・設備への後付けでの導入を容易にした。

「相(気体液体)変化冷却技術」により大型空調機並みの冷却能力を大流量で実現:複数の熱源を持つDCを効率的に冷却するためには高い冷却能力が重要だが、そのためには、相変化により熱を吸収した多くの冷媒をスムーズに流す必要がある。今回、両社は配管内の気体と液体を分離することで冷媒蒸気の流れをスムーズにして低圧冷媒を大流量で流すことに成功した。この技術を、NTT Comの持つDCの排熱ノウハウや温度管理技術を組み合わせることで、大型空調機相当の40kW冷却能力で消費電力を現行比半分以下に削減したという。
 NECとNTT Comは「今回使用している新冷媒(R1224yd)を使用した空冷空調機システムを実用化することは世界初となり、消費電力を低減すると共に、地球環境へやさしい冷却システムを実現する」としている。

システムのイメージ

今後の展開

 同システムは、2022年にNECでの事業化(製品化)を目指し、まずはNTT Comは自社施設への導入検討を進めるという。両社は「将来的に両社は、通信設備のみならず病院や複合商業施設など大規模な冷却設備を必要とするユーザへの提供を検討する。また、地球温暖化抑止効果をさらに高めるため、排出熱の2次利用を計画している。これにより排出熱を活用した温水、発電、農業などへの活用など、新たなビジネスモデル創出が可能となり、環境・経済の両面で社会貢献に寄与するシステムを目指す」との考えを示している。
 同成果の一部は、2017年度よりNECが参画している、NEDOのプロジェクト「戦略的省エネルギー技術革新プログラム(データセンタ・通信局舎のエネルギーマネジメント技術の開発)」によるもの。