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BattelleのRavenStar超広帯域Massive MIMO無線ユニットが、防衛と商用におけるスペクトル共有技術の推進に向けた契約を獲得

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 Battelleは6月8日(オハイオ州コロンバス)、同社のRavenStar超広帯域Massive MIMO無線ユニットが、米国国防総省(DoW)と提携する国家スペクトルコンソーシアム(NSC)との契約を獲得したことを発表した。

 この契約に基づき、Battelleは、ノースイースタン大学コスタス研究所(KRI)、ノースイースタン大学、ANDRO Computational Solutions、SMA-RTY、およびzTouch Networksと協力し、先進スペクトル共存実証(ASC-D)プログラムに参加する。これらの企業は共同で、国家安全保障を強化しつつ、商用および電気通信用途における効率的かつ信頼性の高いスペクトル共存を実現するスペクトル共有ソリューションの検証と実証を行う。

 ASCは、DoWが中帯域周波数スペクトルの利用を評価するために設立された。この取り組みの目的は、これらの周波数を動的スペクトル共有技術を用いて安全に共有できるかどうかを検証することとなる。
 Battelleは「このアプローチが成功すれば、通信事業者や民間企業は、国家安全保障上重要な作戦に支障をきたすことなく、軍事用スペクトルの一部にアクセスできるようになり、スペクトル全体の効率性が向上し、民間無線サービスの容量が拡大する」と説明している。

 Battelleの製品開発担当ヴァイスプレジデントであるMark Reudink氏は「周波数を迅速に切り替え、ビームパターンを調整し、リアルタイムで干渉を回避できるRavenStarは、安全かつ効果的なスペクトル共有を実現する」とし、「比類のない周波数と空間の柔軟性を兼ね備えているため、既存の重要なユーザとスペクトルを共有するための強力なソリューションとなる」とコメントを出している。

 ノースイースタン大学インテリジェントネットワークシステム研究所(INSI)で開発されたKRIのセンシングおよび意思決定機能と組み合わせることで、このシステムは、検出、ポリシーの適用、および適応型RF動作間のリアルタイムの連携を可能にする。Battelleは「ハードウェアの提供、統合サポート、ソフトウェアの共同開発、およびプログラム全体の実行を通じて、柔軟で責任ある、任務遂行可能なスペクトル運用の未来を実証している」と説明する。

 現在、米国防総省(DoW)は3.1~3.45GHz帯を様々な軍事作戦に利用している。BattelleのRavenStar無線ユニットは、これらの周波数を商用プロバイダと共有することを可能にし、任務遂行に不可欠な性能を維持しながら、高速無線接続に対する高まる国民の需要に応えるのに役立つ。

 Reudink氏は「電波を商用利用に開放することは、国防上の妥協ではなく、戦略的な優位性をもたらす」とし、「動的な周波数共有を採用することで、消費者向け帯域幅を拡大し、国内におけるイノベーションを加速させ、グローバルな競争力を維持することができる」とコメントを出している。

編集部備考

■今回の発表は、防衛と商用のスペクトラム共有というテーマを、従来の枠組みから一歩進める試みとして位置付けることができる。企業によるプライベートLTEやプライベート5Gの普及を支える制度として定着している米国のCBRS(Citizens Broadband Radio Service)は、3.5GHz帯(3550〜3700MHz)の150MHz幅を対象とし、SAS(Spectrum Access System)による動的な周波数管理のもと、インカンベント(主に防衛・政府用途)、優先免許(PAL)、一般利用(GAA)という三層構造で運用されている。
 CBRSの本質は、インカンベント保護を前提とした「排他的制御型の共用」にある。これは、優先度の高い利用が発生した場合には、民間利用が動的に制限される設計であり、この仕組みによって防衛用途との両立を実現してきた。一方で、このような即時退避を前提とするモデルは、通信の継続性が強く求められる全国規模のパブリックセルラー網への適用には制約が大きい。
 これに対し、今回のBattelleの取り組みは、「同一時間・同一空間における共存」、すなわち同時共用(co-channel coexistence)を志向する点に特徴がある。超広帯域かつMassive MIMOを前提とした無線技術により、従来は時間的・空間的に分離されていた防衛と商用の電波利用を、同時に成立させる可能性を探るものであり、全国セルラー網への応用を視野に入れた初期的な技術実証と位置付けられる。

 スペクトラム共有におけるリスクは、単純な「傍受」よりも、電波の存在や挙動から運用情報が推定される点にある。例えば、通信の発生タイミングやトラフィックの変動、送信源の位置などが第三者に観測されることで、部隊の活動パターンや所在が推測され得る。このため、防衛用途においては低検知・低被探知(LPI/LPD)が重要な設計要件となる。
 こうした課題に対しては、セルラー技術の進化が解決の糸口を提供している。例えば、ネットワークスライシングにより論理的に分離された通信経路を確保しつつ、暗号化や認証と組み合わせることで高いセキュリティを担保することが可能となる。また、ビームフォーミング技術の高度化により、特定方向への指向性を強めることで、不要な方向への放射を抑制することにもなるので、干渉低減と同時に検知リスクの低減も期待できる。

 防衛分野における商用セルラー技術の活用は世界的な潮流であり、これまで防衛専用として確保されてきた良質な周波数資源を、作戦能力を維持したまま民間利用へ開放できれば、市場に与えるインパクトは大きい。通信事業者にとっては、新たなミッドバンド帯域を既存の全国マクロ網に組み込むことで、容量拡張の有力な手段となり得る。一方、通信機器ベンダにとっては、共有前提の高性能無線機やアンテナが「標準仕様」として大量展開される可能性があり、新たな需要創出が見込まれる。
 さらに重要なのは、本取り組みが米国に留まらない波及性を持つ点だ。現代の軍事作戦は同盟国との相互運用を前提としており、米国防総省が許容する共存モデルは、事実上のデファクトスタンダードとして各国に影響を与える可能性がある。特に3.3〜3.8GHz帯は世界的に5G/6Gの中核帯域であると同時に、多くの国でレーダー用途と共存していることから、「同一時間・同一空間でのダイナミック共存」が実用段階に入れば、各国の周波数政策や市場構造に変化をもたらす契機となり得る。

 以上を踏まえると、今回の実証は技術検証にとどまらず、スペクトラム利用の前提そのものを転換する可能性を内包している。防衛用スペクトラムの共用において、排他的利用から動的共存へという潮流が現実のものとなるかどうか、その帰趨は今後のセルラー市場全体に大きな影響を及ぼすことになるだろう。

■第二の観点として、本件を「防衛と商用のスペクトラム共有」という枠組みではなく、「無線ネットワーク運用の自動化」、すなわちAI-RANの実証として捉えることも可能だ。
 スペクトラム共有の本質的な難しさは、周波数の割当ではなく、時間・空間・出力といった複数のパラメータをリアルタイムに最適化し続ける必要がある点にある。特に、防衛用途と商用通信が同一時間・同一空間で共存する場合、干渉回避、優先度制御、トラフィック変動への追従といった複雑な制御を、人手による静的な設計や事前ルールのみで対応することは現実的ではない。
 この観点から見ると、「スペクトラムを共有する技術」というよりも、「電波利用をリアルタイムに最適化する自律的な無線ネットワーク」の成立性を検証する試みと位置付けられる。超広帯域かつMassive MIMOを前提とした無線機は、容量を拡張するためのものだけではなく、多数の自由度を活用して環境に応じた最適な送受信パターンを生成するためのプラットフォームとして機能する。

 従来のCBRSにおいても、SAS(Spectrum Access System)による動的制御が導入されているが、その基本は事前に定義されたルールに基づく調停となる。これに対し、同一時間・同一空間での共存を前提とする今回のようなアプローチでは、より短周期での状態把握と意思決定が求められ、結果としてAIを用いたリアルタイム最適化の導入が不可欠となるだろう。この差異は、「動的制御」から「自律制御」への進化と捉えることができる。

 また、防衛用途が対象となっている点にも重要な意味がある。防衛通信は、干渉や遅延、通信途絶に対する許容度が極めて低く、かつ電波の検知・解析による情報漏洩リスクも考慮する必要がある。すなわち、最も厳しい制約条件のもとで安定動作が求められる領域であり、この環境で成立する制御技術は、商用ネットワークにおいても十分な信頼性を持つことを示唆する。言い換えれば、防衛はAI-RANの「最悪条件における検証フィールド」として機能していると見ることができる。
 このような自律的無線制御が実用化されれば、通信事業者の運用モデルにも大きな変化が及ぶ。従来は無線設計やパラメータチューニングに高度な専門知識と人的リソースを要していたが、AIによるリアルタイム最適化が前提となれば、運用の自動化・省人化が進展する可能性がある。一方で、制御ロジックがブラックボックス化することによる新たなリスクや、学習データの偏りに起因する性能劣化といった課題も無視できない。
 さらに、この流れは6Gに向けた「AIネイティブRAN」の議論とも整合的だ。ネットワークが自ら環境を認識し、最適なリソース配分を判断・実行するという構想は、これまで概念的に語られることが多かったが、本件はそれを現実のユースケースの中で具体化する動きと捉えることができる。

 以上を踏まえると、今回の取り組みはスペクトラム共用の是非を超え、「無線ネットワークは人が設計・運用するものから、自律的に最適化されるものへ移行するのか」という、より本質的な問いを投げかけている。防衛という最も厳格な条件下での実証が進むことで、この潮流が加速するかどうかは、今後のモバイルネットワークの進化を占う上で重要な試金石となるだろう。

(OPTCOM編集部)