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TIP CANDIにおける4キャリア共同実験に完全リモートで成功

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最先端のTIP ディスアグリゲーション コンポーネントの統合制御を推進

 NTTとOrange、Telefónica、Telia Company(以下、Telia)は6月2日、オープンな伝送・転送技術におけるネットワーク自動制御に関する共同実験を完全リモートで成功したと発表した。
 この共同実験は、Telecom Infra Project(以下、TIP) のOpen Optical Packet Transport(以下、OOPT)プロジェクト内に、NTTとTelefónicaが共同で2018年10月に設立したConverged Architectures for Network Disaggregation & Integration(以下、CANDI)が推進するもので、オープンかつ汎用的なネットワークの実現により、いくつかの装置について大規模な経済性を実現するとともに、分離(ディスアグリゲーション化)された構成要素のオープンな市場を創出することを目的としている。
 NTTは「2019年の第1回目の実験(1st PoC)を経て、今回の実験(PoC2021)では、参画キャリアが各々重視する技術要素を『自律型キャリア内統合DCIトランスポート基盤』という共通シチュエーションに落とし込み、要件や仕様、ユースケースやシナリオを精査し、実証した」という。

オープンディスアグリゲーション技術の進化

 CANDIは親PJであるOOPTの各サブグループが創出する様々な伝送と転送のディスアグリゲーションプロダクトを核に伝送と転送双方を統合制御し、参画キャリアが掲げるユースケースの実証を推進している。主に、以下2点に取り組んできた。
(1)マルチベンダでの相互接続とサービスプロビジョニングの自動化・高度化
(2)部品単位でのメーカ非依存なマイグレーションの自動化・高度化
 1st PoCでは、双方の実験を成功させたが、(1)の観点では事前の設計に基づくプロビジョニング、(2)の観点ではマイグレーションには成功したものの現地工事必須の半自動化に留まっていた。
 CANDIは、ここで明確化した課題の解決に取り組み、そのブレークスルーとなる技術を確立し、(1)の観点ではネットワーク(以下、NW)状態を自動で把握したサービスプロビジョニング、(2)の観点では完全リモートでの異ベンダ ソフトウェア マイグレーションに取り組み、PoC2021としてPacket PoCとMigration PoCの実証実験を完了し、実験を成功させた(図1)。また他社が牽引するPoCにも貢献し、実験のエコシステムの観点では、前回のキャリア2社中心の実験を大きく発展させ、10社以上の企業で推進するエコシステムを確立した。

図1:PoC2021全体像

実証実験の進展

NW状態の自動把握に基づくサービスプロビジョニング
 近年、IPトランスポートにおいて、シンプルかつ柔軟な設定が可能となるSegment Routing(以下、SR)をベースとしたNWへの変革が行われている。今回の実験では、このSRをベースとしたNWにおいて、遅延量等のNWの状態に基づいて、サービスのSLAを満たすパスを自動で設定するシナリオを実証するとともに、リアルタイムに測定したNWの遅延量に応じて、サービス中に、コントローラがSLAを満たす経路を再計算し、自動的にパスを切り替える「Closed Loop制御」についても確認した。
 NWの状態把握は、NTT技術である高精度NWモニタリング&制御技術(HANMOC)により実現した。また、NTTとR&Dで協業し、SDNコントローラのOSSプロジェクトであるOpenDaylight(以下、ODL)プロジェクトも牽引するOrangeが、ODLを使ったコントローラの実装を行い貢献した。
 NTTは「NTTの遅延測定技術とOrange社提供のOSSコントローラ、TIPプロダクトのホワイトボックススイッチを活用して、連携ワークフローやインタフェースを、4社で確立し、実機にて動作させることに成功した(図2)」と説明している。

図2:NWの状態把握に基づくサービスプロビジョニング PoC構成図。

完全リモートでの異ベンダソフトウェアマイグレーション
 ハードウェアとソフトウェアを分離したホワイトボックススイッチで構成するデータセンタネットワークにおいて、サービスを継続した状態でホワイトボックススイッチのネットワークOSを自動かつリモート制御により入れ替えるシナリオを実証した。
 このシナリオは、ハードウェアとソフトウェアのEnd of Lifeが異なる場合に、ハードウェアを置き換える事なくソフトウェアのみを自由にマイグレーションする場合や、ソフトウェアに起因するセキュリティホールの迅速な対処などに有効だ。
 ネットワークOSの進展(OSSプラットフォームを活用したOS delete、クラスタ内経路制御、OS自動インストール等)の詳細把握と、それらを組み合わせたワークフローを策定し、NTT内製OS(Beluganos)、データセンタネットワークを統合制御するUBiqube製コントローラ(MSActivator)により実現した。全自動化を実現したことにより、これまでの手動を含むマイグレーション作業と比較し、短時間で工事が実施可能であることを確認したという。また、CANDIはOptical PoCも完了し成功を収めた。
 NTTは「これらの実験で得られた結果や課題は、TIP OOPT内で、TIP標準化を規定しているMandatory Use Case Requirements for SDN for Transport(MUST)サブグループや、ODL、Open Compute Project(OCP)等の外部コミュニティにフィードバックしていく予定だ」としている。

エコシステムの発展

 前回は、NTTおよびTelefonicaの2キャリアの資産を持ち寄って実験を実施したが、今回は、10社以上のコミュニティ参画社がハードウェアおよびソフトウェアを持ちより、各社からの技術サポートを得て、エコシステム構築を実現。また、ロケーションも、TIPが提供するロンドンのコミュニティラボを使用している(表1)。現地の物理環境構築等の最低限の作業は、NTT-DATA UKおよびTIP Community Labと連携して実施したという。

表1:エコシステムの発展。

今後の計画について

 NTTは「今回、PoC2021としての実証実験をほぼ完了した。今後、WANを介するデータセンタ間接続に関するシナリオ等を実施し、全シナリオの実験結果をホワイトペーパーとして公開予定だ。本PoCで実証したシナリオは、サービスやアプリケーション毎に異なるSLAに対し、最適なNWを自動でお客様に提供する仕組みを、オープンかつディスアグゲーション化されたNWにおいても実現するものだ。例えば、遠隔医療や自動運転など、低遅延で品質の高いNWが要求される場合には、遅延測定および制御の周期を短くして、お客さまに提供する。また、自動制御により、お客さまは、NW品質に見合うコストのNWを、短期間で利用開始することが可能になる」としており、「そして、最終実験として、伝送・転送の統合制御実証をめざす。伝送・転送領域のオープン ディスアグリゲーションをさらに推進するとともに、オプティカルネットワークにおけるパスの自動制御へも発展させ、IOWNの実現に貢献していく」との考えを示している。