Dell’Oro Groupが、ハイエンドルータ市場は2030年までに150億ドルを超えると予測
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Dell’Oro Groupは1月29日(カリフォルニア州レッドウッドシティ)、同社の最新市場レポート『Service Provider Router & Switch 5-Year Forecast Report』のサマリーを発表した。
同レポートによると、ハイエンドルータの需要は、供給過剰とネットワーク需要の伸び悩みが重なった2024年の18%の市場調整後、2025年には劇的に回復すると予測されている。市場の回復を牽引しているのはコアルータの売上高で、2030年まで年平均成長率(CAGR)11%で成長すると予測されている。
同社は「ルーティング機器の需要増加は、ネットワーク業界の様々な側面、特にAIデータセンタ関連、そして通信サービスプロバイダ、クラウドプロバイダ、エンタープライズ/パブリックの3つの主要顧客セグメントにおける状況改善によって推進されると予測される」としている。
Dell’Oro GroupのヴァイスプレジデントであるJimmy Yu氏は、「ハイエンドルータ市場の予測は、わずか6か月前に発表した予測から大幅に上方修正した」とし、「この増加の主な理由は、コアルータの予想外のV字回復だ。これは、データセンタ トラフィックの増加に伴うネットワーク需要の増加を背景に、クラウドプロバイダと通信サービスプロバイダが牽引している。また、エージェントAIはまだ初期段階だが、企業はAI対応に向けてネットワークをアップグレードし始めていると考えている」とコメントを出している。
その他のサマリー
・5年間の予測期間におけるハイエンドルータの累計売上高は710億ドル。
・通信サービスプロバイダ(CSP)は、今後5年間、ハイエンドルータの最大の購入者であり、売上高の70%以上を占めると予測。しかし、クラウドプロバイダや企業/公共機関からのルータ需要は、より速いペースで増加すると予測。
・コアルータの5年間CAGRが最も高く、次いでエンタープライズ向けハイエンドルータ、エッジルータの順になると予測。
・今後5年間、すべての主要地域でルータの需要が増加すると予測。
編集部備考
■Dell’Oro Groupの最新レポートで示された「コアルータ市場の予想外のV字回復」。その要因をネットワーク構成の観点から考えると、ここ数年で進展した光インタフェース技術の影響は大きい。特に400G ZR系モジュールの商用成功を起点とするネットワークアーキテクチャ変化が、IP層全体の投資構造を根本から変えたことは、このV字回復に不可欠だっただろう。ここでは、本リリースとは別のアプローチで、V字回復を考察したい。
数年前の400G ZR商用化は、長距離光伝送機能をIPルータやスイッチのプラガブルモジュールに取り込むことを可能にした点で、ネットワーク設計思想そのものを変えた。従来は、トランスポート層とIP層が明確に分離され、それぞれが独立した投資サイクルで更新されてきた。しかし400G ZRによって、ルータポートそのものがDCIやメトロ伝送の役割を担えるようになり、ネットワークの階層構造は大幅にシンプル化された。
この変化がもたらした最大の効果は、設備投資の単位が「大規模な光伝送システム刷新」から、「IPルータのポート増設・更新」へとシフトした点にある。すなわち、帯域増強のために大きな初期投資を必要とせず、トラフィック成長に応じて段階的に拡張できる構造が整ったことで、事業者の投資判断における初期リスクと資本拘束が大幅に低減された。結果として、IPコアネットワークにおけるルータ更新・増設の頻度と規模が拡大し、市場全体の成長モメンタムが強化されたと考えられる。
さらに重要なのは、このアーキテクチャ変化がコアルータ市場にとどまらず、エッジルータやデータセンタスイッチ市場にも波及した点だ。400G ZRの成功は、IP層と光層の統合設計という思想をネットワーク全体に浸透させ、メトロやエッジ領域でもフラットでシンプルな構成への移行を促した。結果として、従来は別個の市場として扱われてきたコア、エッジ、DCネットワークが、同一の技術進化と投資ロジックに基づいて同時に刷新される構造へと変わりつつある。
このような構造変化の中で、コアルータ市場がV字回復を示したのは、必然的とも言える。400G ZR系の商用展開が進んだのは、主にデータセンタ間接続(DCI)やクラウド接続用途であったが、その成功体験は事業者に対し、「IP層を軸にネットワークを再構築する」ことの技術的・経済的妥当性を示す強力な証左となった。その結果、コアネットワークにおいても、従来の保守的な更新サイクルから脱却し、400G/800Gポートを前提とした新世代ルータへの更新投資が加速したと考えられる。
加えて、400G ZR系の成功は、800G ZR系市場の立ち上がりにも直接的につながっている。400G世代で確立されたプラガブル光による長距離伝送の実績は、より高ビットレート世代への移行リスクを低減し、ベンダ・事業者双方にとって技術選択の確信度を高めた。この結果、800G世代では「実験的導入」ではなく、「明確な拡張路線としての採用」が進みつつあり、IPルータのポート構成そのものが、400Gから800Gへの世代交代を前提とした設計へと移行し始めている。
こうしたシーズ側の技術革新・コスト構造変化に加え、ニーズ側ではAI活用やIIoTの高度化といった動きが、IPネットワーク全体に対する性能要件を根本から引き上げている。特にAIワークロードの分散化やリアルタイム処理の拡大は、従来の南北トラフィック中心の構造から、東西トラフィックが支配的な構造への転換を促しており、データセンタ内外を問わず、高帯域・低遅延・高信頼性を備えたIP基盤の再構築が不可避となっている。
この点においても、400G/800G ZR系モジュールを活用したIP層主導のネットワーク構成は、トランスポート層との統合によるレイテンシ削減、構成シンプル化、運用自動化の容易性といった観点から、AI時代の要件と高い親和性を持つ。特に、需要の予測が難しく、インフラ構築計画における調整の即応性が求められるAIインフラにおいて、ZR系の「トラフィック成長に応じて段階的に拡張できる構造」は投資計画における大きなメリットだ。結果として、AIデータセンタ、エッジAI、産業用途ネットワークといった多様な分野で、コア・エッジ・DCを横断するIPルータ投資が同時並行的に進む構造が生まれている。
コアルータ市場のV字回復は、このような複合的構造変化の中で生じたものであり、従来の景気循環モデルや短期的な需要回復では説明しきれない構造転換の表れと捉えるべきだろう。例えば、IPネットワーク市場そのものの成長メカニズムが変質した結果と捉えると、従来は「トラフィック増加 → 伝送装置増設 → ルータ更新」という段階的構造で進んでいた投資サイクルが、「IP層刷新 → 光・伝送層の統合・最適化 → ネットワーク全体の同時刷新」という逆向きの連鎖へと転換しつつある。
こうした経緯を振り返ると、昨年の主要ベンダによるポートフォリオ拡充やM&A動向も、製品ラインアップ強化だけではなく、この新しいIP主導型ネットワーク構造に適応するための戦略的対応と位置付けることができる。彼らの400G/800G世代を軸とした高密度・高消費電力ASICへの対応、光インタフェース統合を前提としたシャーシ/固定型ルータ設計、クラウドスケール運用を意識したソフトウェアスタック整備といった取り組みは、この市場構造転換への迅速な対応と言える。
今回のコアルータ市場のV字回復を、上記のように様々な角度から考察すると、「需要が戻った」というよりも、「ZR系が実現した新しいネットワーク構造が、この数年で標準的になったという通信の歴史」と「Cognitive AIからGenerative AI、さらにAgentic AIへと、わずか数年単位で進化してきたAIの歴史」が嚙み合ったことで、新たな需要であるAIインフラの方向性が定義された結果としてV字が生じたと理解できる。400G ZRの成功を起点とする光とIPの統合は、ネットワーク設計の自由度と経済合理性を大きく高め、その効果はコア、エッジ、データセンタの各市場に同時に波及している。Dell’Oro Groupの市場レポートが示す数字からは、この構造変化がすでに定量的成果として顕在化し始めたことも読み取れる。




