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南紀白浜空港においてローカル5Gを活用した実証実験を開始【南紀白浜エアポート、NEC、THK、オリエンタルコンサルタンツ】

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MR技術や複数ロボット協調制御技術により空港の課題解決をめざす

 南紀白浜エアポート、NEC、THK、オリエンタルコンサルタンツは3月14日、南紀白浜空港(和歌山県)において、ローカル5Gをはじめとしたテクノロジーを活用して課題解決をめざす新たなサービスの開発を目的とした実証実験を実施すると発表した。
 同実証実験には、日本マイクロソフトと凸版印刷が協力するという。

 今回、南紀白浜エアポート、NEC、THK、オリエンタルコンサルタンツと日本マイクロソフト、凸版印刷の6社は、南紀白浜空港にローカル5Gのネットワーク環境を新たに構築し、Mixed Reality(複合現実。以下、MR)を実現するMicrosoft HoloLens 2(以下、HoloLens 2)を利用した空港職員向けのスマートメンテナンスサービスや、複数ロボットを空港内エリアで協調制御させて来訪者を目的地まで案内するサービス、MR空間でペイントしたオリジナル飛行機の着陸見学体験サービスの実証を14日から順次開始する。

実証実験イメージ

背景

 南紀白浜空港は、東京・羽田空港から1時間ほどでアクセスできる空の玄関口として観光やビジネスなどの用途で多くのユーザに利用されている。一方、少子高齢化による生産年齢人口の減少に伴い、職員の労働力及び熟練した労働者の技術力の継続的な確保が困難という課題に直面している。また、南紀白浜エリアの魅力ある観光資源を活かした新たな観光振興の取り組みが求められている。
 今回6社は、南紀白浜エリアにおける生産性が高く働きがいのある業務環境創出、来訪者の増大をめざし、高速大容量・低遅延な通信を実現するローカル5Gなど、先進テクノロジーを活用した新たなサービスの開発を目的とした実証実験を実施する。

実証の役割分担

実証の概要

 南紀白浜空港の空港ターミナル内とエプロン(航空機を駐機する場所)、滑走路周りの場周道路を対象に、4.8GHz~4.9GHzを利用する固定型と可搬型のローカル5G基地局を活用した高速大容量・低遅延なローカル5Gネットワーク環境を構築し、以下の実証実験を行う。

HoloLens 2を活用したスマートメンテナンス
 HoloLens 2とNECの特許技術である点群データ活用侵入検知技術とローカル5Gの大容量通信を組み合わせ、樹木など制限表面を超える物体を分析・検知して点検者のHoloLens 2に表示し、点検時の見落としを防ぐ。また、これまで路面劣化などの点検時はPC等にアプリケーションを使って過去の点検箇所を記録した画像を表示し、GPS情報をもとに職員が目視で該当箇所を探していたが、HoloLens 2上で現実空間に前回の記録を重ね合わせて表示することで、目視と比べ、作業時間の短縮と確認の効率化を実現する。同時に、熟練労働者の技術力の継承の一助とし、生産性が高い業務環境創出を実現する。

スマートメンテナンスでの利用の様子

複数ロボット協調制御による来訪者案内/デジタルサイネージ広告
 THKのサイネージロボットとNECの複数ロボット協調制御技術を活用し、空港内のエリアを2台のロボットが協調連携しながら分担して来訪者を目的地まで案内する。案内終了後は移動型デジタルサイネージによる宣伝広告に切り替わる。ネットワーク越しでのロボットの統合管理・制御により、ロボットによる業務遂行の生産性・安全性・品質の向上に貢献する。
 これに加え、ローカル5Gの安定したネットワークによりロボット搭載カメラから映像を取得することで遠隔地からオペレータのロボット操作による案内も可能だ。これにより、案内スタッフのテレワークを実現し、ポストコロナ時代の働きがいのある業務環境創出を実現する。

複数ロボット協調制御の様子

 今回の実証で使用するローカル5Gネットワーク、Azure IoT Edge/NECのExpress5800 for MECサーバで構成したMECシステム、及びMicrosoft Azure上で動作する複数ロボット協調制御システムは今後増加が予想される省人化・無人化されたサービスや業務の柔軟かつスピーディーな開発・社会実装に重要な役割を果たす。

MR空間でペイントしたオリジナル飛行機の着陸見学
 南紀白浜空港では、現在、南紀白浜空港バックヤードツアーとして、滑走路の間近からの航空機の離発着見学など、普段は立ち入りできない空港の裏側を巡る非日常な体験ツアーを実施している。このバックヤードツアーのコンテンツ拡充を見据え、ローカル5Gの低遅延でリアルタイム伝送できる特徴とMR技術を活用した新たな観光体験を提供する新サービスの実証を行う。

 このサービスの追加により、さらなる体験価値や魅力度の向上を図り、南紀白浜エリアの来訪者増加につなげていくという。
 6社は「将来的にHoloLens 2などMRデバイスにおける現実空間とデジタル空間の位置を調整する方法の高度化や、実証で使用した複数ロボットの協調制御機能を空港・他業種のソリューションへ応用するなど、今後もローカル5Gを活用して南紀白浜空港の魅力を向上させ、生産性が高く働きがいのある業務環境の創出、来訪者の増加という課題解決をめざしていく」との考えを示している。

 日本マイクロソフト グローバルパートナービジネス統括本部 業務執行役員 統括本部長の橘 一徳氏は「日本マイクロソフトは南紀白浜空港様において、ローカル5Gを活用した新サービス開発の実証実験開始の発表を心から歓迎している。この実証実験開始にあたり、Microsoft Azure基盤におけるクラウド、データ基盤、IoT、MECやMicrosoft HoloLens 2活用などの技術サポートを提供しているが、今後も、NEC様をはじめとする関係企業、団体の皆様とともに、お客様のデジタルトランスフォーメーションの推進に貢献していく」とのコメントを寄せている。