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NTTとスカパーJSATが、Space Compassの設立で合意

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持続可能な社会の実現に向けた新たな宇宙統合コンピューティング・ネットワーク事業をめざして

 NTTとスカパーJSATは4月26日、持続可能な社会の実現に向けた新たな宇宙統合コンピューティング・ネットワーク事業を担う合弁会社の設立について、合意・契約を締結したと発表した。
 両社は「今後、民間主導での成長が見込める宇宙空間において、新たなインフラ構築に挑戦し、持続可能な社会づくりに貢献する」の考えを示している。

新会社設立のねらい

 持続可能な経済・社会活動を確立していく上では、エネルギー・環境/気候変動・防災・海洋インフラ・安全保障などの多様な分野において、成層圏・地球近傍宇宙空間をICTインフラ基盤として効果的に最大活用することが、より一層重要となる。また、今後ARTEMIS計画を始め、世界中の官民が協力し、近傍宇宙だけでなく月・火星他への人類の活動領域の拡張が計画されている。
 NTTとスカパーJSATは、地上と宇宙のインフラ企業として長年に渡る技術開発・事業を通じて得た知見を活かし、今後の人類の宇宙空間の一層の活用と拡張を支えるため、合弁会社を設立する。
 両社は「今回設立する合弁会社は、2021年の業務提携で発表した、『宇宙統合コンピューティング・ネットワーク』の具体的な一歩となる。宇宙空間に構築する光無線通信ネットワーク及び成層圏で構築するモバイルネットワークを手始めに、新たなインフラの構築に挑戦することで、世界の宇宙産業の発展と持続可能な社会の実現に貢献していく」と説明している。

新会社概要

会社名:株式会社 Space Compass
代表者名:
代表取締役 Co-CEO 堀 茂弘
代表取締役 Co-CEO 松藤 浩一郎

設立時期:2022年7月(予定)
所在地:東京都千代田区(予定)
資本金等:180億円※(予定)
株主構成:NTT 50%、スカパーJSAT 50%
事業内容:宇宙データセンタ、宇宙RAN等に関する事業企画・事業開発・サービス提供 等
※新会社設立時の資本金等は60億円(資本準備金を含む)とし、順次増資予定。

事業概要(予定)

 新会社において、当初取り組む予定の事業は次の通り。

宇宙データセンタ事業:宇宙における大容量通信・コンピューティング基盤
 観測衛星等により宇宙で収集される膨大な各種データを静止軌道衛星(GEO:Geostationary Orbit Satellite)経由で地上へ高速伝送する光データリレーサービスを、2024年度に開始します。観測衛星から地上局に直接データ伝送をする既存サービスでは地上局と通信できるタイミングや電波による通信容量に制約があるのに対し、静止軌道衛星経由での光データ伝送を用いることで、大容量・準リアルタイムのデータ伝送が可能となる。

光データリレーサービスの概要

宇宙RAN(Radio Access Network)事業:Beyond5G/6Gにおけるコミュニケーション基盤
 高高度プラットフォーム(HAPS:High Altitude Platform Station)を用いた低遅延の通信サービスを2025年度に国内で開始をめざす。HAPSによりカバレッジを容易に拡張できることから、災害時の高信頼通信や、船舶や航空機等への大容量通信の提供、離島やへき地への通信サービス提供等が可能となる。携帯通信事業者にとっては、地上基地局整備によるカバレッジ拡張と並行して、HAPSを組み合わせることでモバイルネットワーク全体としてのコスト・エネルギー効率を改善できる。

宇宙RAN(Radio Access Network)事業: Beyond5G/6Gにおけるコミュニケーション基盤
HAPS通信サービスの概要

めざす世界

 両社は「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想の第一歩として、上記2つの事業・サービスを始め、今後順次強化していく。宇宙データセンタ事業では、高度なコンピューティング機能を搭載した衛星を順次拡充し、宇宙での大容量通信・コンピューティング処理基盤を提供する。なお、2025年度の大阪万博ではNTTの大容量光通信技術の宇宙での実証を披露し、将来的には本サービスを全世界に展開する予定だ」としており、「宇宙RAN事業ではHAPSを活用した撮像センシング等についても提供を検討していく予定だ。さらに、静止軌道衛星及び低軌道衛星(LEO:low earth orbit satellite)も追加・統合し、カバレッジを拡充していくとともに、無線通信広帯域化技術の開発によりHAPS一機当たりの通信キャパシティ拡大を図っていく予定だ」との方針を示している。

宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想