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映像伝送やロボット分野でも実績を伸ばす、耐圧壊、屈曲性に優れた光ファイバケーブル【ワイヤードジャパン】

INTERVIEW 有料

 1995年に創業したワイヤードジャパンは、ルーセントテクノロジー社(現:OFS Specialty Photonics Division社)の総代理店として、多種の光ファイバを国内で販売してきた企業。特にマルチモード光ファイバの提案で高い評価を得ている。同社代表取締役の杉原寛氏は、日本で光通信が実用化された黎明期から長年に亘り市場の発展に貢献している人物だ。
 同社は現在、OFS社やPolymicro Technologies社のファイバ心線の販売から、同社が独自開発した耐圧壊、屈曲性に優れた光ファイバケーブルの提供、それらケーブルの各種光コネクタ端末加工および敷設工事等、光ファイバに関するトータルソリューションを提供している。
 杉原氏は近況について「映像伝送やロボット分野での伝送容量が高まっており、機器のインターフェースは100MbEから1GbEへと移行している。今年も含めた数年は、1G光伝送が様々な産業に広がる黎明期だと判断している」と話す。今回は同市場で実績を伸ばしている製品として、耐圧壊、屈曲性に優れた高信頼性の光ファイバケーブル「タクティカル光ケーブル」や、組立検査済の同ケーブルにプーリングアイを取り付けて施工を簡易にした新製品について話を聞いた。

(OPTCOM編集部 柿沼毅郎)

地デジ放送開始時から屋外の撮影現場で採用

ワイヤードジャパン 代表取締役 杉原寛氏

 放送番組の制御システム、収録、編集、伝送システムなど、放送系機器のIP化が進み、光ファイバが使われるケースが増えてきた。そうした中で実績を伸ばしているのが、ワイヤードジャパンが独自に開発した「タクティカル光ケーブル」だ。石英ファイバながら、屈曲性や耐圧壊、耐振動に優れており、例えば撮影カメラ機材のインターフェースとして求められる劣悪な環境下でも対応できる強靭さを備えている。
 放送分野では、日本で地デジが始まった2003年から撮影現場で採用されており、杉原氏は「当初、ドラマの撮影でお使い頂き、光ケーブルが軽量である点をご評価頂いた。屋外の撮影では、スタッフの方々がケーブルを担いで200mほどの距離を走ることもあるので、従来のメタルケーブルと比べて軽いことのメリットは大きい。そのドラマはシリーズ化されて今年も放送しており、今でも撮影時にタクティカル光ケーブルをお使い頂いている。屋外で光ケーブルを取り廻すという過酷な環境ながら、踏まれても伝送に影響しない頑強な製品なので、今まで不具合は一度も発生していない」と説明している。現在では、全国99社の民放局でデジタルカメラ収録用に採用されているという。

優れた屈曲回数性能により、産業用ロボットでも採用

 ロボット分野では、産業用ロボットで世界シェア上位に名を連ねる日本企業に採用されている。杉原氏は「タクティカル光ケーブルはEIA-FOTP-104A規格の屈曲試験で1万回をクリアしており、ロボットの回転台でご採用頂いている。産業用ロボット分野からは1000万回クリアの数字が欲しいというご意見も頂いているので、現在、試験を進めている。近々、ウェイトを付けた屈曲試験では日本初となる1000万回クリアの発表ができるだろう」と話している。

タクティカル光ケーブルのスペック

 「タクティカル光ケーブル」は、EIA-FOTP-25B規格の圧壊試験では2200N/cmをクリア、EIA-FOTP-85A規格の捻回試験では1000回をクリアしている。杉原氏は「引張試験では1800N(183.6Kgf)をクリアしている。イメージとしては大人3人分ほどの重量に耐える引張強度となる」と説明している。
ケーブル内の光ファイバは、シングルモード、マルチモード(Gi/Si)、HCSから選択できる。HCSは大口径が特長の光ファイバで、コアは石英ガラス、クラッドはポリマーが使われる。杉原氏は「HCSは、ルーセントテクノロジーがHPCFのプロセスと一部マテリアルを改善して開発したものだ。HPCFと比べて2倍の伝送速度を実現している。ヨーロッパではいち早く導入されているケーブルだ」と話す。
 前述の屋外撮影やロボット以外の導入実績の事例としては、サーキット場の放送、野球場の定点カメラ、水深250mでの定点海中カメラ、食品メーカーの工場設備、宇宙科学研究所のアンテナ関連、4G携帯基地局の屋外電波塔、空港の構内通信用などがある。「最長は東京スカイツリーで、シングルモード3本で650mの長さでお使い頂いた」(杉原氏)。
 伸縮するカールコードとしても提供することができ、アクチュエーターや演劇の回転舞台などで使われているという。

プーリングアイを取り付けて施工を簡易にした新製品

 組立検査済のタクティカル光ケーブルにプーリングアイを取り付けた製品も提案している。接着剤硬化用ヒータ、融着装置、パッチコードの他、融着が不要となるので、敷設作業終了と同時に即時接続が終了する。10kgfまで直接牽引が可能で、通線作業をすぐに始めることができる。杉原氏は「プーリングアイは紐を引っ張るだけで簡単に外すことができる(図)。光コネクタの部分は、各々の工場で精密なデータを基に高い信頼性を保証しているので、施工時に挿入損失試験をする必要は無く、防塵キャップの保護テープをはがしてすぐに接続できる」としており、「作業者に施工技術の教育をしなくても現場で迅速な作業が可能となるので、人件費を含めた作業コストが改善される。例えば線条長100mで比較した場合、7万5千円の削減になる」と説明している。

図:プーリングアイの取り外し方法