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樹脂でもめっきでもない 750℃超耐熱ファイバコーティング実証実験に成功【ヒキフネ】

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 ヒキフネは1932 年に創立した日本の老舗めっき企業。独自技術による石英ファイバへのめっき加工は、国の機関より表彰を受ける程の高いレベルだ。ヒキフネは、「メタライズファイバ」のめっき加工技術によって光通信業界においては世界的なプレイヤーへと飛躍を遂げた。その中のトップベンダである同社は、中間めっきの技術でもトップを独走し、さらに不断の技術向上を続けている。
 今回、同社が開発したファイバセンシング用の特殊ファイバコーティング加工技術が750℃で2時間耐用の実証実験に成功した。スポットでの750℃対応ならともかく、センシング用のファイバを750℃&2時間耐用を実現するというのはおそらく世界初の加工技術と言えよう。

750℃で2時間耐用可能な超耐熱センシングファイバ用特殊コーティング20m加工

 光ファイバにめっきを施すという画期的な加工技術を開発してメタライズファイバ業界をリードしてきたヒキフネだが、今回はファイバセンシング市場に向けた特殊ファイバコーティング技術が750℃で2時間耐用の実証実験に成功した。
 今や各産業界において、ファイバセンシングは様々な場面で使われており、中には超高熱環境で使用される場面も少なくない。そのような環境で使用される大型設備の歪みや経年変化の察知も当然必要になってくるが、従来のファイバセンシングではある程度の長さのファイバを超耐熱仕様にするコーティング技術が存在せず、設備を取り巻く状態での「面」のセンシングが出来ずに「点」におけるスポット検知しか出来なかった。具体的な例では、飛行機のジェットタービン周りや火力発電所におけるボイラー、自動車のエンジン周りなどがこれにあたる。これらの設備のスポット点検において、歪みやクラック(罅)を見逃せば人命に係わる危険な大災害を招きかねない。
 同社が今回開発に成功したのは、125μm径のセンシング用ファイバに4~5μmの薄さで特殊コーティングを行う加工技術だ。そのコーティングを施したファイバについて、同社執行役員の鈴木昌史氏は「そのコーティングは、通常の耐熱樹脂でもなければ我々が得意とするメタライズでもない、全く新しい技術のファイバコーティングだ。弊社の独自試験では、800℃の環境下で15時間(飛行機が地球を半周する時間)設置してもクラックや外観変化が起こらず、客先評価においても曲げた状態でファイバの破断が起こらないことが確認されている。今回大型設備のファイバセンシング用にこのコーティング技術を開発したが、最大20mの長さでムラの無いファイバコーティングが可能だ」と語る。従来、高温下におけるファイバセンシングではポリイミドコートされるケースが一般的だが、ポリイミドの耐熱温度は約300~400℃と言われており、約500℃以上で熱分解、約750℃以上で炭化するとされている。つまり、500℃を超える環境下では、大型設備を取り巻く形のファイバセンシングは事実上不可能となる。750℃耐用の特殊ファイバコーティングを20mもの長さで実現したのは、おそらく同社が世界唯一のプレイヤーであろう。今回の加工技術は、近日中に特許出願予定。これによって、超高温環境下における大型設備のファイバセンシングはより一層進歩するだろう。

新規需要も旺盛なメタライズファイバ

 光通信分野においてパイオニアとなった同社のメタライズファイバは、当初LN 変調器等の各種光デバイスにおけるハーメチックシールのハンダ接合固定などのモジュール化においてメインに用いられてきた。湿式めっきのアドバンテージであるコスト競争力と客先要求を満足させる引っ張り強度及びハンダぬれ、そして光学機器とファイバの組み付け工程を簡便化する「中間めっき」技術が、同社をこのフィールドにおけるトップベンダたらしめている。特に、多心の中間めっきが可能なベンダは同社の他に存在せず、各国からのOEM依頼も舞い込んでいる。

写真は海外ミリタリー向け案件で、幅1mmの4心テープ心線が各々温度、赤外線、意識及び体調管理など各々独立したセンシング用途となっている。客先仕様では、被覆の端から公差0.2mm以内に収めなければならないが、同社の高度な技術は端面のみにめっきが施されており、被覆へはほとんどかかっていない。鈴木氏は「コンポーネント・デバイス小型化の流れで、フィードスルーやめっき範囲、ひいては公差もより小さく厳しくなっている。米中貿易摩擦に伴い、一部取引先向け出荷が減ることもあったが、センシング等新規用途の付加価値めっきで売上及び利益をカバーしている」と述べている。