EchoStarが、世界初のOpen RAN D2D LEOコンステレーションでMDA Spaceを選択
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MDA Spaceは8月1日(オンタリオ州ブランプトン)、EchoStar Corporation がMDA Spaceを、新たな非地上ネットワーク(NTN)低軌道(LEO)D2D(Direct-to-Device)衛星コンステレーションの主契約企業として選択したと発表した。
MDA Spaceは「この契約により、MDA SpaceはLEO衛星を使用した世界初の3GPP 5G準拠の非地上ネットワークに向けた量産を開始する予定だ」としている。
約13億米ドル(約18億カナダドル)相当の初期契約には、100機を超えるソフトウェア定義MDA AURORA D2D衛星の設計、製造、試験が含まれる。200基以上の衛星ネットワークの初期構成を一括で行える契約オプションを併せて選択すると、契約総額は約25億米ドル(約35億カナダドル)に増加する。
MDA Spaceは「EchoStarは、需要に応じて将来的に衛星数を数千基に増やし、標準的な5Gモバイル端末にグローバル通話、テキストメッセージ、ブロードバンドサービスを直接提供することをめざしている」と説明する。
この衛星コンステレーションは、新たに制定されたNTNおよび3GPP規格に完全準拠しており、EchoStarは、この規格に準拠したすべてのモバイル端末に、変更を加えることなく、ローンチ直後からメッセージング、音声、ブロードバンドデータ、ビデオサービスを提供できる。さらに、この衛星コンステレーションは、様々なセンサやモバイル車両にも接続する。
EchoStarのプレジデント 兼 CEOであるHamid Akhavan氏は「当社の衛星に関する専門知識と、米国で展開する地上5G Open RAN網を組み合わせることで、EchoStarはこの新たな大規模広帯域LEO衛星群の構築において独自の立場を確立している」とし、「MDA Spaceが提供する市場をリードする技術革新と、ITUの最優先権を持つ当社のグローバルS-band/2GHz帯周波数利用権や強力なサービス提供能力により、米国、欧州、そしてその他の地域の消費者、企業、公共安全、政府機関にサービスを提供することが可能になる。そして何より、これは成長を続ける宇宙経済における米国のリーダーシップを強化することになるだろう」とコメントを出している。
MDA Spaceは「この契約により、EchoStarは3GPP 5G NTN準拠のD2D衛星MDA AURORAの初期の主要顧客(anchor customer)となり、非地上ネットワーク(NTN)市場におけるMDA Spaceのリーダーシップをさらに強固なものにする」としている。
標準規格への準拠により、衛星ネットワークと既存の地上セルラーネットワーク間の相互運用性が確保され、両者間のシームレスなハンドオーバーとデータ ルーティングが可能になる。これらの標準規格により、すべてのモバイル セルラー デバイスとIoTデバイスが低軌道で運用される衛星に直接接続できるようになり、遠隔地やサービスが行き届いていない地域にも接続を拡張できる。
MDA SpaceのCEOであるMike Greenley氏は「EchoStarが、厳しい技術要件とビジネス要件を満たすために当社の新型MDA AURORA D2Dソフトウェア定義衛星を選定したことは、衛星事業者が当社の深い専門知識と製品、差別化されたMDA AURORA製品、そして拡大する生産能力に信頼を寄せていることの証だ。今回の契約は、MDA Spaceを衛星事業者にとってD2Dおよびブロードバンド接続における主力契約企業として戦略的に位置付け、当社が市場で継続的に成功を収めていることを裏付けるものだ」とコメントを出している。
世界中のNTN事業者が利用できる標準D2D製品であるMDA AURORA D2Dは、市場で優位性を保つために革新的で高性能なソリューションを求めるEchoStarのような顧客のニーズに最適です。MDA Spaceは「当社のソリューションは、ユーザに優れた接続性と高品質なサービスを提供し、いつでもどこでもインターネットに接続できるようにする」としている。
MDA AURORA D2Dの技術的特徴は次のとおり。
・ユーザデバイスに最適な接続性を確保する大型ユーザーアンテナ
・地上ネットワークとのシームレスな統合を実現する3GPP 5G NTN規格およびOpen RANに準拠したオンボードプロセッサ
・軌道上で堅牢なメッシュネットワークを実現する光衛星間リンク
・進化するD2D市場のニーズに応えるカスタマイズされたソリューションを実現する差別化されたチップ技術
・高出力で効率的な衛星プラットフォーム
モントリオールにあるMDA Spaceの最先端の衛星製造施設は大量生産に対応でき、現在は18万5,000平方フィート規模で拡張工事が進められている。EchoStarのLEO衛星コンステレーションは、この施設で設計、組立、統合、試験が行われる予定だ。
MDA Spaceは「衛星の納入は2028年に予定されており、商用サービスは2029年に開始される。衛星の初期フェーズに対するEchoStarとの最初の契約は約13億米ドル(約18億カナダドル)で、2025年度第3四半期にMDAの受注残に追加される。これは、MDA Spaceが3年強で受注した4件目のLEO衛星コンステレーション契約となる」と説明している。
編集部備考
・今回の発表は、NTNとOpen RANの統合型構成による商用展開に向けて現実にビジネスが動き出したことを示す重要な指標となる。採用されたMDA AURORAのスペックは、LEOと地上間を結ぶ商用システムの要件に対し、技術的・運用的に最適解の一つを提示した構成といえる。また、スケーラブルな構成も明示されており、宇宙ビジネスの投資判断や実行計画の参考事例としての価値も高い。
本件はLEOと地上ネットワークの連携を主題としているが、異なるネットワーク層を統合するという点では、将来のマルチオービット構成における基盤技術の一部を先取りする内容でもある。特に、ネットワーク層の統合制御や、Open RANとの連携によるAI・仮想化基盤の共通活用といった観点から、EchoStarとMDA Spaceの今後の取り組みは、運用面、経済面の現実的なベンチマークとして注視されるだろう。
また、EchoStar CorporationがOpen RANを選んだ点も興味深く、Open構成による宇宙ネットワーク構築の重要な先例として議論の参考になる。例えば、IOWN構想においても、マルチオービットとOpen RANが相互に連携することにより、より高度なネットワークを構築することが期待されているので、EchoStarの今回の取り組みは、その方向性を裏付ける有力な事例となり得る。