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Vortexが、IPエッジおよびトランスポートネットワークをアップグレードでNokiaを選択。マハラシュトラ州、ゴア州、グジャラート州全域のブロードバンドサービスを強化

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 Nokiaは9月1日(インド ニューデリー)、Vortex Groupがマハラシュトラ州、ゴア州、グジャラート州全域のIPエッジおよびトランスポートネットワークを近代化するプロジェクトでNokiaを選択したことを発表した。

 刷新されたIPアグリゲーションおよびエッジネットワークは、ブロードバンド速度の向上をサポートし、Vortexがサービスが行き届いていない地域へのサービス拡大を可能にする。
 Nokiaは「この協業により、Vortexのブロードバンドネットワークは変革され、Vortexのネットワークに接続している150以上の小規模ISPが高速で拡張可能なインフラにアクセスし、3州の地域顧客に強化されたインターネットサービスを提供できるようになる」と説明している。

 Vortexは、Nokiaの先進的なブロードバンド ネットワーク ゲートウェイ(BNG)ソリューションを導入することで、複数の低容量BNGを、20万人以上の加入者をサポートできる単一のスケーラブルなシステムに統合しており、インフラストラクチャを効率化した。
 この戦略的投資により、CAPEX(設備投資)とOPEX(運用コスト)を削減するとともに、信頼性を向上させる。このアップグレードにより、Vortexはより高速なブロードバンドプランを導入し、マハラシュトラ州、ゴア州、グジャラート州全体で迅速に拡張できるようになる。
 Nokia は「Vortexは、小売事業の拡大に加え、Nokiaのソリューションを活用して社内バックボーンネットワークを強化し、長期的な成長、地域展開、そしてホールセール パートナーシップの基盤を築いている。Nokia独自のシリコン技術を搭載したIPエッジおよびトランスポートプラットフォームは、持続可能なブロードバンドサービスの提供に不可欠な柔軟性と拡張性を提供する」としている。

7750 SR-1 BNG

 このアップグレードにより、VortexのネットワークインフラストラクチャがLayer 2からLayer 3のIP/MPLSベースのアーキテクチャに移行し、ブロードバンドサービスが大幅に強化される。これにより運用効率が向上し、全体的な容量も増加する。導入の一環として、Nokiaは7250 IXRシリーズ ルータと7750 SR-1 BNGを供給する。これにより、Vortexは従来のBNGとスイッチを、長期的な成長に対応できる大容量で拡張性の高いソリューションに置き換えることができる。

 Vortex GroupのマネージングディレクターであるVineet Nishar (Lalu)氏は「NokiaのIP/MPLSネットワークへのアップグレードにより、信頼性、容量、速度が向上し、優れたブロードバンド エクスペリエンスを提供できるようになる。この変革により、マハラシュトラ州、ゴア州、グジャラート州のTier 3およびTier 4都市への事業拡大が可能になり、デジタル・ディバイドの解消と新たな成長機会の創出に貢献する。Nokiaとの提携は、インド全土のより多くの家庭や企業に高速インターネットアクセスを提供するための戦略的な一歩だ」とコメントを出している。

 Nokia Indiaのネットワークインフラストラクチャ事業開発 責任者であるJivitesh Nayal氏は「ブロードバンドの急速な普及に伴い、サービスプロバイダは信頼性を維持しながら効率的に拡張できるネットワークを必要としている。当社の高性能7750 SR-1 BNGおよび7250 IXRルータにより、Vortex Groupはネットワークを近代化し、シームレスに拡張しながら運用効率を向上させることができる。このアップグレードにより、インフラストラクチャの統合、運用オーバーヘッドの削減、既存顧客へのサービス強化に加え、新規市場への進出も可能になる」とコメントを出している。

編集部備考

・本ニュースリリースに出てくる「Tier 3およびTier 4都市(Tier 3 and 4 cities)」は公式に明文化された定義ではないが、10,000~49,999人規模の都市を示していると考えて良さそうだ。ここでは、Vortexがこれらの都市のデジタル・ディバイド解消に取り組んでいる背景を考察したい。
 インドの5G網整備は進んでいるものの、実際の5G普及率は都市部に偏重しているケースもあり、地方・小規模都市ではまだカバーエリアが十分でない、あるいは利用料金や端末価格が障壁になっている。また、5Gの高速性を活かすために必須となる光ファイバ固定網のバックホールの整備が、Tier 3 / 4都市では遅れているのが実情だ。また、5Gだけではカバー率・安定性・トラフィック処理能力に限界があり、動画配信、特にこれから高度化していくリモート教育、テレメディシンによる遠隔医療、スマート農業、地方の行政デジタル化などでは安定かつ大容量な固定回線が求められる。こうした背景や将来ビジョンもあり、これまでモバイル中心でネットが活用されてきたインドでは、在宅勤務・クラウド利用拡大に伴い「家庭向け高速固定網」が強く求められているようになった。
 インド政府の「Digital India」政策は都市だけでなく地方の教育・行政・医療までネットを普及させることを目標にしている。そのため、都市部のネットワーク整備だけが進むことでTier 3 / 4都市に住む人々が都市部と同等にオンラインサービスを使えない状況は、デジタル・ディバイドの拡大となってしまうので、本ニュースリリースのようなブロードバンド整備は社会的に意義のある取り組みと言える。
 こうした流れもあり、インドでは Tier 3 / 4都市のコンシューマ市場が急拡大しており、Eコマース、動画配信、フィンテックの新規ユーザーがこの層から大量に生まれている。インドのこうした状況は、信頼性の高い固定ブロードバンドが、新しいデジタル経済のスパイラルを生む基盤であることを示す好例とも言えるだろう。

・今回の事例で採用されたNokia の7750 SR-1 BNGは、地方 ISP・小規模都市でも持続的に展開できる“サイズ・機能・効率”のバランスが評価されているモデルだ。高性能 IP/MPLS サポートにより、動画配信・教育・医療といった用途ごとにSLA(サービス品質)を分離して柔軟に制御することもできる。
 またBNG に特化したソフト機能を統合しており、本件のようなTier 3 / 4都市の規模の加入者数にも最適なスケーラビリティを有している。ニュースリリース内においても「複数の低容量BNGを単一のスケーラブルなシステムに統合したことでCAPEX / OPEXを削減できた点が強調されており、Vortexにとって魅力的な特長であったことが窺える。
 このような小型かつ効率的なBNGは、日本市場においても地方ISPやCATV事業者が光回線・固定ブロードバンドを展開する際に有効であり、デジタル田園都市国家構想のような政策目標とも親和性が高い。

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