光通信、映像伝送ビジネスの実務者向け専門情報サイト

光通信ビジネスの実務者向け専門誌 - オプトコム

有料会員様向けコンテンツ

EricssonとDrei Austriaがコアネットワークを近代化し、デジタルイノベーションを推進するための戦略的パートナーシップを開始

期間限定無料公開 有料

期間限定無料公開中

 EricssonとDrei Austriaは9月3日、通信事業者のコアネットワークを近代化するため、複数年にわたる戦略的パートナーシップを締結したと発表した。

 両社は「この協業により、より高速で、より安全かつエネルギー効率の高い接続の基盤が構築され、次世代の5G機能も実現する」としている。

 この変革の一環として、EricssonはEricsson Cloud Native Infrastructure Solution(CNIS)上にホストされるクラウドネイティブ・デュアルモード5Gコアソリューションを導入する。これにより、Drei Austriaは4Gと5Gの両方のネットワークを統合プラットフォームで運用できるようになる。
 このインフラストラクチャのアップグレードにより、自動化とAIを活用した運用が強化され、効率性、拡張性、そして新サービスの市場投入までの時間短縮が実現する。

 両社は「この近代化は、単なる技術のアップグレードにとどまらず、オーストリアのデジタル化の未来を形作ることに尽力する2大プレーヤーの長期的な戦略的提携を反映している。緊密な協力と共同イノベーションを通じて、このパートナーシップはAIを活用した運用、自動化、プログラマブルネットワークといった高度な機能の導入を加速し、消費者と企業に強力な新サービスを提供することをめざす」としている。

 この戦略的近代化により、Drei Austriaは、大規模IoT、コネクテッドデバイス、ネットワークスライシングなど、未来を見据えた様々なユースケースのハブとなることをめざす。製造、ヘルスケア、物流といった様々な分野の企業は、Drei AustriaとEricssonが提供する、より俊敏でセキュア、かつカスタマイズされた接続ソリューションの恩恵を受けることができる。

 両社は「この近代化により、増大するデータ需要に対応し、Drei Austriaの持続可能なデジタルサービス提供という目標を支える、拡張性に優れ、将来を見据えたコアネットワークが実現する」としている。

 Ericsson AustriaのカントリーマネージャーであるAlexander Sysoev氏は「この新たなパートナーシップにより、Drei Austriaは、消費者と企業の両方にとってより迅速なイノベーションを可能にする、安全で効率的、かつ柔軟な5Gコアネットワークを構築できる。私たちは協力して、新しいサービスをサポートし、オーストリアのデジタル未来を推進するプラットフォームを構築していく」とコメントを出している。

 Drei Austriaのコアネットワーク&インフラストラクチャ担当シニアヘッドであるRico Chemnitz氏は「Ericssonを新たなテクノロジーパートナーとして迎えたことで、コアネットワークの近代化を確実に進め、ネットワーク機能の強化、サービスの俊敏性向上、ネットワーク自動化の推進、そしてお客様の新たなビジネスチャンスの創出に向けて、新たな取り組みが始まった。近代化は、ユーザ エクスペリエンスとビジネス目標の達成において常に不可欠な要素であり、長期的なネットワーク戦略の遂行においても、ますます重要になってくる」とコメントを出している。

 近代化されたコアネットワークは、ストリーミング、ゲーム、リモートワークといった加入者の日常的な体験を向上させるとともに、ネットワークスライシング、Massive IoT、コネクテッドカーやスマートシティといった新たなユースケースを含む主要なエンタープライズ機能をサポートする。

 この協業を通じて、EricssonとDrei Austriaは、大規模なイノベーションを可能にする、最新かつ持続可能なコアネットワークアーキテクチャを実現している。両社は「共に、新たなデジタル エクスペリエンスへの道を切り拓き、ユースケースを共同開発し、市場の期待を先取りしていく」との展望を示している。

編集部備考

・このニュースリリースでは、「4Gと5Gの両方のネットワークを統合プラットフォームで運用できるようになる」という点も強調されている。日本市場においては、既にEricssonやNokia等のソリューションを通じて、(4Gベースの)EPCと5GCを同一基盤上で運用・管理することは自然なことのように感じられるので、一見すると“当たり前”の話に思える。そこで今回は、なぜこの点が強調されたのかを考察したい。
 背景には、グローバルにおける5G移行は「統合プラットフォームでの運用が前提とは限らない」という実情がある。5Gの普及初期、多くの事業者は既設の4G EPCをベースにNSA(Non-Standalone)方式で5Gを追加した。その後、5GCを新たに立ち上げてSA(Standalone)へ移行するが、実際には4Gと5Gが別々のシステムとして並存するケースも少なくない。EPCと5GCを完全に分離したまま運用している例もあり、統合運用は必ずしも前提ではない。新興国や中規模キャリアでは、5Gを別個のシステムとして導入し、オペレーションの効率化は段階的に進められるケースもある。
 そうした文脈で本ニュースリリースを読むと、Drei Austriaの動きは「単なる5G化」ではなく、「4Gと5Gを一体化したクラウドネイティブ基盤への進化」を意味しており、欧州のキャリアが統合プラットフォームを実現した事例が増えたという点に、リリースのニュースバリューがある。つまり、「統合プラットフォームでの運用」は、日本では標準的でも、グローバルでは効率化の目標という位置づけとなっているのが現状だ。
 この事例から感じることは、日本では既に標準的な仕組みでも、海外では競争優位の差別化要素になり得るという点だ。機器やモジュールを提供する日本のベンダにとっては、「統合を前提とした設計」自体がグローバル市場における競争力であり、事業者にとっても統合オペレーションの経験で培われた創意工夫のノウハウはグローバル展開での強みとなる。
 本ニュースリリースは、海外の最新の出来事を知ると同時に、日本の“当たり前”が、グローバル市場に対して価値あるものとして提示できる領域の一つも示唆していると言えそうだ。