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CiscoがNVIDIAと提携し、ネオクラウド、エンタープライズ、テレコム全体でAIイノベーションを提供

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 Ciscoは10月28日(ワシントンD.C.)、市場セグメント全体にわたって安全でスケーラブルなAIの実現を加速するための主要な進歩を発表した。

 今回の発表の目玉は、NVIDIA Spectrum-X Ethernetスイッチシリコンをベースとした、NVIDIAパートナー開発の初のデータセンタ スイッチであるCisco N9100だ。このスイッチにより、Ciscoは、ネオクラウドおよびソブリンクラウドの導入向けに、NVIDIAクラウドパートナー準拠のリファレンス アーキテクチャを提供する。エンタープライズ顧客向けには、NVIDIAと連携したCisco Secure AI Factoryが、新たなセキュリティと可観測性の統合により、AI導入全体の保護と可視性を強化した。
 Ciscoは「通信業界における次世代接続への道を切り拓くため、Cisco、NVIDIA、そしてその他のパートナーは、業界初の6G向けAIネイティブ・ワイヤレス・スタックを発表した。これらのイノベーションを組み合わせることで、ネオクラウド、エンタープライズ、そして通信業界の顧客は、大規模なAIインフラストラクチャを効率的に構築、管理、そして保護するための柔軟性と相互運用性を得ることができる」と説明している。

 Ciscoのプレジデント 兼 最高製品責任者であるJeetu Patel氏は「私たちは今、史上最大規模のデータセンタ構築の始まりに立っている」とし、「未来のエージェント型AIアプリケーションとイノベーションを支えるインフラストラクチャには、電力、コンピューティング、ネットワークパフォーマンスにおける現状の制約を克服するように設計された新しいアーキテクチャが必要だ。CiscoとNVIDIAは協力して、新興のネオクラウドからグローバルサービスプロバイダ、エンタープライズまで、あらゆるAI対応データセンタを支えるテクノロジーの定義をリードしている」とコメントを出している。

 NVIDIAのネットワーキング担当SVPであるGilad Shainer氏は「NVIDIA Spectrum-X Ethernetは、イーサネットに高速ネットワークのパフォーマンスを提供する。Ciscoのクラウド リファレンス アーキテクチャとNVIDIAクラウドパートナーの設計原則を活用することで、お客様は最新のCisco N9100シリーズまたはCisco Silicon Oneベースのスイッチを使用してSpectrum-X Ethernetを導入し、オープンで高性能なAIネットワークを構築できる」とコメントを出している。

あらゆるAIワークロードに対応するポートフォリオ

 バックエンドおよびフロントエンドのイーサネットベース ネットワークは、急速なAIイノベーションに対応できる柔軟性を備え、既存のインフラストラクチャとシームレスに統合し、導入と管理が容易である必要がある。年末までに受注開始予定のCisco N9100シリーズスイッチは、Cisco NX-OSまたはSONiCオペレーティングシステムを選択でき、AIネットワーク向けイーサネットの進化を促進し、ネオ クラウドおよびソブリン クラウドの顧客がAIインフラストラクチャを構築する際の柔軟性を高める。N9100を基盤として、CiscoはNVIDIAクラウドパートナー準拠のリファレンスアーキテクチャを提供する。CiscoのNexusデータセンタ スイッチング ソリューション ポートフォリオは、Cisco Nexusダッシュボード、Silicon One、クラウドスケールASIC、そして新たにSpectrum-Xイーサネットスイッチ シリコンをベースにしたスイッチを通じて、統一された運用モデルを提供する。

 さらに、ネオ クラウドおよびソブリン クラウドの顧客向けに、Cisco クラウド リファレンス アーキテクチャを提供している。これは、NVIDIAのクラウドパートナー リファレンス アーキテクチャの設計理念に基づいており、CiscoのSilicon OneおよびクラウドスケールASIC製品を活用している。このリファレンス アーキテクチャには、スケール アクロス ネットワーク向けのSilicon One P200をベースに最近発表されたCisco 8223、NVIDIA BlueField-4 DPU、NVIDIA ConnectX-9 SuperNICも含まれる。

NVIDIAと連携したCisco Secure AI Factory:パフォーマンス、セキュリティ、耐障害性を実現

 2025年3月のGTCで発表されて以来、NVIDIAと連携したCisco Secure AI Factoryは、パフォーマンスを犠牲にすることなくセキュリティと可観測性を最優先に考えた包括的なAI インフラストラクチャ アーキテクチャを企業に提供することで業界をリードしてきた。Cisco AI PODとCisco Silicon One搭載のNexusスイッチングを基盤として、Ciscoは今回、以下の分野で新機能と新機能の提供を開始した。

セキュリティと可観測性:Cisco AI DefenseはNVIDIA NeMo Guardrailsと統合され、AIアプリケーションに堅牢なサイバーセキュリティを提供する。Cisco AI Defenseはオンプレミスのデータプレーン展開向けに注文可能で、セキュリティチームとAIチームはAIモデルとアプリケーションを保護し、組織のデータセンタから外部に流出する機密データを制限できる。また、Splunk Observability Cloudは、チームが AI アプリケーション スタックのパフォーマンス、品質、セキュリティ、コストを監視するのに役立つ(Cisco AI POD による AI インフラストラクチャの健全性に関するリアルタイムの分析情報を含む)。一方、Splunk Enterprise Securityは、この可視性を拡張してAIワークロードを保護する。

コアAIインフラストラクチャ:Cisco Isovalentは、AI POD上の推論ワークロード向けに検証済みとなり、エンタープライズ グレードの高性能Kubernetesネットワーキングを実現する。高密度800Gイーサネットを提供する新しいクラウド管理型Cisco G200 Silicon Oneスイッチを搭載したCisco Nexus Hyperfabric AIは、AI PODの導入オプションとして選択できる。NVIDIA HGX B300を搭載したCisco UCS 880A M8ラックサーバ、およびNVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition GPUを搭載したCisco UCS Xシリーズモジュラーサーバも、AI PODの一部として選択できる。これにより、生成AIの微調整、推論など、幅広いワークロードに対応する高性能GPUサポートが可能になる。

エコシステムの拡張:NVIDIA Run:aiソフトウェアは、Ciscoとそのパートナーを通じて提供され、インテリジェントなAIワークロードとGPUオーケストレーション機能を実現する。 Nutanix Kubernetes Platform (NKP) ソリューションがサポート対象の Kubernetes プラットフォームに、Nutanix Unified Storage (NUS) ソリューションがサポート対象のストレージオプションにそれぞれ追加された。Nutanix Enterprise AI (NAI) ソリューションは、コンテナ化された推論サービスの構築と運用をシンプル化する相互運用可能なソフトウェアコンポーネントとして提供される。

政府機関への対応:Ciscoは NVIDIA と連携し、規制の厳しい環境に導入される AI ワークロード向けのフルスタック・エンドツーエンド・リファレンスデザインである、新しい NVIDIA AI Factory for Government に取り組んでいる。

Ciscoを中核とする初のAIネイティブ・ワイヤレス・スタック

 AIがスマートフォンから、拡張現実グラス、コネクテッドカー、ロボティクスといったよりコネクテッドなモノへと進化するにつれ、ワイヤレスネットワークは、かつてない規模と効率で数十億もの接続をサポートするという需要の高まりに直面している。この課題に対応するため、Cisco、NVIDIA、そしてその他の通信パートナーは、センシングと通信を統合したモバイルネットワーク向け初の米国製AI-RANスタックを開発した。NVIDIA GTC DCでは、6G以前の複数のアプリケーションが展示されている。これにより、通信事業者は5Gの高度なサービスから始めてモバイルネットワークにAIを組み込むことができ、6Gへの基盤を構築できる。このスタックは、Ciscoのユーザプレーン機能と5Gコア ソフトウェアをNVIDIA AI Aerialプラットフォームと統合し、卓越した効率性とセキュリティを備えた物理AIと統合センシングを実現する基盤を構築する。

CiscoとNVIDIA:AIを共に前進させる

 Ciscoは「NVIDIAのコラボレーションは、拡張性、可観測性、そしてセキュリティを備えたAIドリブンの未来という共通のビジョンのもと、加速を続けている。本日発表されたこれらの進歩は、Ciscoの絶え間ないイノベーションの追求の証であり、企業、ネオクラウド、そして通信事業者におけるAIの導入を加速させるものだ」としている。

 InfrawavesのCEOであるXiaohe Hu氏は「AIインフラストラクチャにおける真の課題は、パフォーマンスだけではない。数十から数千のGPUに拡張する際に、運用の健全性を維持することだ。CiscoのNX-OSとNexus Dashboardによるアプローチは、フロントエンドでの推論レイテンシの最適化からバックエンドでのトレーニングスループットの最大化まで、AIファブリック全体を単一の画面で把握できるようにする。この運用のシンプルさは、迅速な導入とTCOの削減に直接つながる」とコメントを出している。

 GMI Cloudのインフラ責任者であるYih Leong Sun氏は「NVIDIA Spectrum-X Ethernetスイッチシリコンを搭載したCiscoのN9100シリーズは、当社のAIクラウドのニーズを満たす、高性能でオープンなインフラストラクチャ ソリューションを提供する。Nexus Dashboard上の統合された運用モデルでNX-OSまたはSONiCを実行できるため、運用のシンプルさとともに、お客様に高い柔軟性を提供する。クラウドのスケールと俊敏性を備えたエンタープライズ グレードのネットワーキングは、まさに次世代のAIワークロードに求められるものだ」とコメントを出している。

 Xiaohongshu (RedNote)のネットワークインフラストラクチャ責任者であるJunfeng Cheng氏は「コンピューティング能力の需要が高まり続ける中、GPUクラスタの規模は急速に拡大している。超大規模GPUネットワークでは、輻輳管理や負荷分散など、様々な課題に直面している。CiscoのNCP準拠リファレンス アーキテクチャとN9100シリーズ スイッチは、必要なパフォーマンスとオープン性をすぐに提供してくれる。Cisco Nexusプラットフォームにより、追加の運用コストや開発コストをかけずにNVIDIA Spectrum-X EthernetスイッチシリコンのAIネットワーキング機能を最大限に活用し、既存システムとシームレスに統合できる。このエキサイティングな道のりをCiscoと協力できることを楽しみにしている」とコメントを出している。

 World Wide Technology (WWT) のクラウド、インフラストラクチャ、AIソリューション担当ヴァイスプレジデント 兼 CTOであるNeil Anderson氏は「World Wide Technology (WWT) のお客様は、エンタープライズ データセンタにおけるCiscoのネットワークを熟知し、信頼してくださっている。これにNVIDIA Spectrum-X Ethernetテクノロジーの革新性を組み合わせることで、お客様のデータセンタへの投資価値がAIワークロードにも拡大する。これは、お客様がエンタープライズ データセンタでAIを拡張しようとしている中で、非常に重要な意味を持つだろう」とコメントを出している。

 Bluesky ComputeのCEOであるIan Hartley氏は「BlueSky Computeは、AIトレーニング クラスタのスケールアウト ファブリックにCiscoのN9100シリーズスイッチを導入した最初のNeocloudsの1社となることを大変嬉しく思っている。これにより、より大規模で相互接続性の高いB300クラスタをより迅速に構築することで、世界中の企業にとってAIをROIに変えるという当社のビジョンを推進することがでる。N9100シリーズ スイッチをベースとし、Nexus Dashboardによる運用のシンプルさを維持しながら実現するCiscoのNCP準拠リファレンス アーキテクチャは、まさにゲームチェンジャーだ」とコメントを出している。

 Computacenterの米国・リージョナル・ソリューション・セールス・ディレクター (北米中部担当)※であるThomas Berger氏は「お客様のAIインフラ全体に数千基のGPUを導入してきたが、ネットワークの複雑さがスケーリングにおける最大の課題だった。NVIDIA Spectrum-X EthernetスイッチシリコンをベースとしたCisco Nexus N9100シリーズプラットフォームは、NCP RA準拠によりこの問題に直接対処し、必要なオープン性とパフォーマンスを提供する。統合されたNexus運用モデルは、一貫した運用を維持できるため、特に魅力的だ。アーキテクチャ上の決定を強制するのではなく、お客様のニーズに合わせて対応できる柔軟性は、お客様のAIインフラへのアプローチを変革している」とコメントを出している。
※役職は編集部補足

 上海利昌科技の会長であるWendy Wu氏は「上海利昌科技有限公司は、NVIDIAクラウドパートナーとして、AIドリブンクラウドサービスを支えるハードウェアとソフトウェアを統合した包括的なフルスタックソリューションを提供している。当社のサービスには、コンサルティングとプランニングからテスト、導入、実装、そして継続的な運用と保守まで、エンド・ツー・エンドのサービスが含まれている。Cisco N9100シリーズの発売を心待ちにしている。Nexus DashboardとNCP準拠のリファレンスアーキテクチャを備えた統合運用モデルにより、導入がシンプル化され、AIインフラストラクチャの拡張がより効率的になると確信している。このソリューションは、イノベーションの加速、コスト削減、そしてこれまで以上に迅速にお客様に大規模な機能を提供できるように設計されている」とコメントを出している。

編集部備考

 AI利用の拡大に伴い、これまでデータセンタ内部に閉じていたAI処理が、データセンタ外部のネットワークにも急速に広がりつつある。AIの性能を最大化するためには、演算能力だけでなく、データの流通を支えるネットワークの最適化が欠かせない。今回のCiscoとNVIDIAの協業は、まさにその「AIを動かす基盤としてのネットワーク」を再設計する取り組みの一環といえる。
 両社が掲げるのは、NVIDIAのAIソフトウェアスタック(AI Enterprise、NIM、Spectrum-Xなど)と、Ciscoのネットワーク基盤を密接に連携させる構想だ。従来、ネットワークはAIサーバ群をつなぐ“裏方”だったが、今後はAI処理の効率性・安全性を左右する戦略的要素に変わる。CiscoがNVIDIAのエコシステムに深く入り込むことで、AIワークロードを最適に流す新たな標準構造が形成されつつある。これは単なる技術提携ではなく、「AIの計算から通信までを一貫して最適化する」産業連携モデルの確立と言える。
 AIインフラのエコシステム化は、ハードウェアメーカー、クラウド事業者、通信事業者の垣根を溶かしつつある。Cisco×NVIDIA連携は、Dell、HPE、Supermicroといった既存パートナーの動きとも重なり※、AIインフラ市場全体を再編するトリガーになりうる。特に、AI処理を支えるネットワークがNVIDIA主導のスタックと親和性を持つようになることで、企業や通信事業者は“どのAIプラットフォームを採用するか”という選択を迫られる局面が増えるだろう。AI導入は、もはや単なるアプリケーションの導入ではなく、特定のAIエコシステムにコミットする戦略的な意思決定の段階に入った。
(※当サイト内関連記事:NVIDIAとパートナーが米国のAIインフラを構築し、次の産業革命の実現に向けたブループリントを作成)
 従来の「クラウド(データセンタ内)がAIを動かす場所」だった構造から、「ネットワークがAIを結び、全体を最適に動かす仕組み」へと進化する流れにより、AIエコシステムの競争は、クラウド中心からネットワーク中心へと重心を移しつつある。Ciscoはネットワークの最適化・可視化・自動化を武器に、NVIDIAとの連携を通じて“AIを動かす基盤”の一角を確立しようとしている。今後のAIインフラは、クラウドからエッジまでを包摂した相互接続型エコシステムとして成熟していくだろう。その中でネットワークが果たす役割は、単なる通信路ではなく、AI時代の競争力そのものとなる。Ciscoの動きは、その新たな地図を描く第一歩と言える。