TelstraとEricssonが、自律型ネットワークの未来を形作るためのコラボレーション プログラムを開始
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Ericssonは10月7日、TelstraとEricssonが協力して自律型ネットワークへの移行を加速させる枠組みを提供することにフォーカスした、先進的な契約を締結したと発表した。
Ericssonは「通信業界は自律性の加速を急務としているが、完全な自律ネットワークへの道筋は依然として複雑だ。このビジョンを実現するには、技術面と運用面の障壁を克服し、標準規格に準拠する必要がある。業界全体にわたる協業、イノベーション、そしてオープン性が求められる」と説明している。
この協業では、断片化・サイロ化されたデータ、ビジネス意図と実行のギャップ、マルチベンダ・マルチドメイン環境によって生じる複雑さ、AIモデルの信頼性など、自律ネットワーク導入における主要な課題を探求する。これらの課題は、以下の主要な戦略的協業分野を通じて解決される。
・ビジネス目標とネットワークアクションを繋ぐためのインテント トランスレーション フレームワークの進化
・自律ネットワークの基盤として効果的に機能するナレッジプレーン(データ、AI、推論を用いてネットワークをインテリジェントに監視、分析、制御する情報レイヤ)の構築
・信頼できるAIを統合し、AIによる意思決定を透明かつ分かりやすくすることで、信頼と自信を築く
・成果を検証し、コラボレーションと結果・知見のオープンな共有のための業界標準を確立することで、業界の変革を促進する
Ericssonは「この協業は、相互に関連する2つの要素、すなわち実験と設計を行うテクノロジー ラボと、提案されたソリューションの実証と検証を行うプルーフ ポイントを軸に展開する。相互運用性を確保し、ソリューションの幅広い採用を促進するためには、業界関係者との協業が不可欠だ」としている。
TelstraのチーフアーキテクトであるMark Sanders氏は「TelstraとEricssonのこの協業は、世界の通信業界がインテント ドリブンな自律性に向けて前進するために必要な推進力と焦点を提供する。アイデアと技術的可能性を実際の環境で開発・検証することは、理想と実現のギャップを埋めるために不可欠だ。基盤となる部分への取り組みは、業界の形成と標準策定に大きく貢献するだろう」とコメントを出している。
Ericssonのビジネス&オペレーションサポートシステムソリューション部門責任者であるMats Karlssonは「Telstraとの協業は、業界をリードする自律ネットワークの道筋、要素、ユースケースの定義と構築において極めて重要であり、オープン性と協業の強力な先例となるだろう。通信業界は、拡張性、収益化、そしてサービス創出という課題に直面しており、Telstraとの今回の協業のように、基礎研究、自動化、そして信頼できるAIの開発における共同の取り組みを通じてのみ、これらの課題を克服することができるだろう」とコメントを出している。
編集部備考
■両社のここ1年における協業の実績を見ると、
2025年7月:Automated Carrier Aggregation導入を発表。周波数帯域をリアルタイムで動的に組み合わせ、トラフィック負荷や端末条件に応じて最適化することで、ユーザ体験(QoE)向上と運用コスト低減を両立。(当サイト内関連記事)
2024年10月:Ericsson Intelligent Automation Platform(EIAP)およびrAppのトライアル導入を発表。構成の一貫性確保、自動リソース再配分、性能悪化時の自動ロールバック機能などを検証。(当サイト内関連記事)
といったように、着実に成果を積み重ねている。
これらの取り組みの延長上として今回の協業を見ると、EricssonがRAN~Core~Service Assuranceまでの全層を俯瞰して自動化を進めている「網羅的」なアプローチをしてきた点と、Telstraが実フィールド環境でPoCを継続している「実証的」な点が、今後の協力体制でも活かされていくことが期待できる。特に、テクノロジー ラボやプルーフ ポイントといった、実際に動かして評価する体制まで示されているのは興味深い。実運用環境での試験と成果を見せることは、概念実証やロードマップ提示にとどまらない姿勢を感じさせるので、顧客や政府機関からの信頼を得やすい取り組みになると期待できる。
両社の「網羅的」「実証が伴う」アプローチが成功すれば、サービス品質、コスト効率、イノベーション速度、および業界標準・エコシステムへの影響という観点で優位に立つ可能性が高い。
こうした「技術要素の実証」と「商用運用への統合」を並行して進める枠組みは、日本やアジアの通信事業者・ベンダにとっても示唆的だ。特に、複数ベンダ間の相互運用性を確保しつつ自律制御を導入するには、現場での検証ループを早期に確立することが鍵となる。例えば、日本勢が強みとする品質管理・現場オペレーションの緻密さが自律ネットワークの開発・運用に結びつくことで、グローバル展開における独自の価値を発揮することが期待できる。