Adtranが、AIベースの予測保守とプロアクティブなアシュアランスでネットワーク運用を変革するMosaic One Clarityを発表
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Adtranは10月14日、サービスプロバイダのネットワーク運用をシンプル化し、効率性を向上させることを目的とした新たなAIソリューション「Mosaic One Clarity」を発表した。
AdtranのREAL AIプラットフォームを基盤とするこの新しいMosaic Oneモジュールは、既に複数の顧客で試験運用されている。高度な推論機能と説明可能なインテリジェンスを活用し、予測保守、実用的なインサイト、そしてガイド付きの手順を提供することで、マルチベンダ ネットワーク環境における問題を迅速かつ確実に解決できるよう支援する。
Adtranは「Mosaic One Clarityは、ネットワークと加入者のデータを統合することで、根本原因分析の迅速化、現場訪問の削減、そして修理時間の短縮を実現する。画一的なアプローチとは異なり、REAL AIは測定可能な価値をもたらす適切な手法を適用する。事業者は、インフラを大幅に変更することなく、サービス品質の向上と顧客体験の向上という即時のメリットを享受できる」と説明している。
AdtranのCTOであるChristoph Glingener氏は、「Mosaic One Clarityは、サービスプロバイダの運用をシンプル化し、ネットワークをより適切に制御できるよう支援する」とし、「当社のREAL AIエンジンを基盤とするこの新しいソリューションは、AIインテリジェンスをワークフローに直接組み込むため、CSR、NOCエンジニア、現場作業員は数分で適切な判断を下すことができる。また、Mosaic Oneスイートの一部であるため、サービスプロバイダはネットワークに大きな変更を加えることなく、導入初日から運用上のメリットを実感できる。チームはガイド付きの手順から開始し、それぞれのペースで予防と自動化を進めていく。その結果、不要な訪問回数の削減、復旧の迅速化、そして加入者のサービス状況向上につながる」とコメントを出している。
Mosaic One Clarityは、AdtranのREAL AIプラットフォームを基盤としている。このプラットフォームは、推論、説明、行動、学習の原則を組み合わせ、ネットワーク運用に実用的なインテリジェンスを提供する。REAL AIは、決定論的推論を適用することで、マルチベンダのアクセスネットワークや家庭内ネットワーク全体にわたる大規模なサービス中断やパフォーマンス問題の原因を特定する。説明可能なインサイトにより、チームは何が起こっているのか、そしてなぜ起こっているのかを正確に理解できるため、自信を持って行動できる。また、ガイド付きの手順とガバナンスに基づいた制御により、解決策の提案、承認時のゲートウェイの再起動、チケットの更新、加入者への通知といったアクションが可能になる。継続的な学習ループは、時間の経過とともにパターンを検出することで推論を強化する。セキュアでオープンなキャリアグレードのプラットフォームとして構築されたREAL AIは、既存のワークフローや将来のAIエージェントとの統合をサポートし、事業者が高額なシステム改修を行うことなく、段階的に高度な機能を導入できるよう支援する。
ACE Fiberのゼネラルマネージャー 兼 CEOであるSean M. McGrath氏は「AdtranのMosaic One Clarityソリューションを試験的に導入する最初のサービスプロバイダの1つとなれたことを大変嬉しく思っている」とし、「最近、ファイバネットワークを急速に拡張しており、新たな複雑さとチームへのプレッシャーが増大している。Adtranの新しいAIソリューションは、状況を常に先取りするための可視性と制御力を提供する。これにより、早期の警告サインを検知し、加入者への影響を把握し、サービスが中断される前に的確な対応を講じることができる。つまり、現場への派遣が減り、初回解決率が向上し、日々サービスを提供するコミュニティのエクスペリエンスが向上する。初期の成果がそれを物語っている。毎月のトラブルチケットが最大75%減少すると予測している。これは、運用上の負担軽減、チームの生産性向上、そして顧客満足度の向上に既につながっていることを意味する」とコメントを出している。
編集部備考
■通信ネットワークの多層化・マルチベンダ化が進むなか、運用部門は複雑化した障害対応と増大する顧客要求の板挟みにある。特にFTTHやホームネットワーク領域では、加入者宅内装置の多様化により、トラブルの切り分けや現地対応のコストが無視できない負担となってきた。こうした状況に対し、世界的に運用自動化(AIOps)や予知保全の導入が進みつつあるが、複数ベンダ装置のデータサイロ化や既存運用システムとの統合負荷が課題とされてきた。
今回発表されたMosaic One Clarityは、こうした現場の課題に対し、既存のアクセス装置やホームネットワーク環境を大きく変えることなく、標準化インタフェースを通じてマルチベンダ環境の運用データを統合・解析し、異常兆候の予測や原因分析をAIが自動推論し、運用者にガイドを提示する。これにより、エンジニアの判断を支援しつつ、現地訪問や修復時間を最小化できる。
Mosaic One Clarityの導入効果は、運用効率化だけではない。AIによるプロアクティブな保証(Predictive Assurance)が進めば、障害発生後に対応する「リアクティブ運用」から、事前に劣化を察知する「予防型運用」への転換が進む。さらに、ユーザ体験の観点では、ユーザ側の通信品質低下を早期に検知し、オペレータが先回りして通知・対処することが可能になれば、トラブル報告件数を減らし、サポートコストの削減と顧客満足度の向上を両立できる。運用現場にAIを組み込むことで、人の判断と機械学習が共存する新たな業務モデルが生まれつつある。
こうした「人手依存のアクセス運用(障害切り分け・設定変更・品質分析)をAIで効率化する」という思想は競合製品にも存在し、アクセス市場の潮流の一つだ。そうした中、これまでもMosaicスイートを通じてアクセス網の自動化とオープン化を推進してきたADTRANは、現場に精通したAI実装というアプローチでMosaic One Clarityを設計することにより、顧客満足度に配慮しつつ運用の効率化を実現したことが、本リリースから感じられる。このアクセス特化かつボトムアップ型という特徴は、住宅・中小ISP・地域密着型の通信事業者向けに親和性が高そうだ。日本においても、地域のFTTHにおける運用負荷軽減の文脈で、こうしたAIベースの予知保全は有効な方向性となるだろう。Mosaic One ClarityのAI活用は、最先端技術の実験や未来の研究ではなく、現場が抱える長年の課題を解決する「実務に根ざしたAI」といえる。




