DNBとEricssonが、5Gサービス保証におけるLevel 4自律性で、TM Forumによる世界初の認証を取得
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Ericssonは10月16日、Ericssonのソリューションを導入しているマレーシアの単一ホールセール5Gネットワーク事業者であるDNBの5Gネットワークが、世界的に最も先進的なネットワークの一つとして認められ、TM Forumからサービス保証におけるLevel 4の自律性について世界で初めて認証を取得したと発表した。
Ericssonは「この認証の検証は、EricssonのAIドリブン型Intent-based Operations(IBO)ソリューションによって、ネットワークをインテリジェントに管理する仕組みを活用して行われた」と説明している。
Level 4の自律性では、ネットワークはAIを活用して問題を予測し、最適なパフォーマンスを維持するために自動的に調整を行う。リアルタイムの監視、分析、最適化が可能で、信頼性、俊敏性、セキュリティ、そして管理の容易性が向上する。
世界有数の通信業界団体であるTM Forumは、最近導入された自律ネットワークレベル評価認証(ANLAV)プログラムに基づき、DNBの5Gネットワークを認証した。このプログラムは、特定の高価値通信シナリオにおける自律性のレベルを分析・認証するものだ。この認証により、DNBとEricssonは、スループット管理という個別のサービスにおいて、サービス保証シナリオにおいてLevel 4のフルスコアを獲得した。
Ericssonは「この検証により、DNB/Ericssonシステムが高度に自動化されたシステムを自律的に運用できることが確認された。このシステムは産業およびエンタープライズ グレードのサービスをサポートし、マレーシアの産業界が自信を持ってデジタル化を加速できるよう支援する」としている。
この機能により、DNBは信頼性の高い高度な接続ソリューションを競争力のある価格で提供し、新たな効率性とイノベーションを実現できる。この自律型ネットワークは、公共安全、医療、スマートシティ、自律走行車、先進製造業といったミッションクリティカルなアプリケーションをサポートするのに十分な機能を備えている。
この成果は、モバイルネットワーク全体のエネルギー効率を自動化する予測型セルエネルギー管理ソリューションがTM Forumによって「省エネ自動化」領域でLevel 4の自律性認定を受けたEricssonのこれまでの成功に基づいている。
DNBのCTOであるKen Tan氏は「自律ネットワークは、DNBの5G展開における当初からの中核設計原則の一つだ。技術の成熟に伴い自動化とAI機能を統合することで、世界最高水準の5G接続を世界最低水準のコストで提供する、非常に効率的なネットワークを構築した。TM ForumによるLevel 4認証は、私たちが正しい道を歩んでいることを証明し、大規模なイノベーションとデジタルトランスフォーメーションを推進するための青写真の妥当性を立証するものだ」とコメントを出している。
Ericssonのマネージド・ネットワーク・サービス部門 責任者であるBradley Mead氏は「この業界を方向づけるプログラムによる認証は、EricssonとDNBが5G自動化において新たな標準を打ち立てていることを改めて示すものだ。これは、ネットワークの運用と管理における柔軟性と高い完成度を確保し、マレーシアの人々に安全で信頼性が高く、高速なサービスを提供していることを裏付けるものとなる。DNBがこのような重要な分野でLevel 4の自律性を達成することで、マレーシアのネットワーク事業者達は、自律ネットワークの最新の進歩に基づいて、顧客に新しく価値ある差別化された接続サービスを提供できるようになる」とコメントを出している。
Ericssonのマレーシア・スリランカ・バングラデシュ 責任者であるDavid Hägerbro氏は「TM ForumによるLevel 4自律性の認証により、DNBはAI、自動化、アシュアランスにおけるグローバルリーダーとしての地位を確立し、マレーシアのデジタル化に向けた重要な一歩を踏み出した。DNBとの提携により、マレーシアをデジタル先進国へと導くことができることを誇りに思っている」とコメントを出している。
TM ForumのCTOであるGeorge Glass氏は「当フォーラムの会員は、自律型ネットワークに向けた業界変革の原動力であり、この進歩を祝うことは大変喜ばしいことだ。EricssonとDNBのLevel 4自律性の達成は、コラボレーションとイノベーションによって、ネットワーク運用における新たなレベルのインテリジェンスと効率性を実現し、より俊敏で自動化されたAI主導の未来を実現できることを示している」とコメントを出している。
EricssonとDNBは、世界クラスの未来を見据えた5Gネットワークを実現するために、強固で長期的なパートナーシップを築いてきた。Ericsson Operations Engineの一部であるAIを活用したIntent-based Operations(IBO)における両社の受賞歴のある協業により、消費者と企業の両方に対して、保証されたサービスレベル契約(SLA)を備えたプレミアム5Gサービスが実現する。
Ericssonは「ANLAVプログラムで評価されたスループット管理機能は、DNBのネットワークで2年間運用されている。最新のGenAIテクノロジーを活用し、相反するインテントを管理し、デジタルツインを用いてソリューションをシミュレートし、最適なアクションを迅速に実行することで、マレーシアの5G Advancedネットワーク全体にわたって、高速で信頼性が高く、差別化された接続を実現する」とコメントを出している。
編集部備考
■マレーシアの5G展開は、グローバルにおける先進的なポジションではなかったが、政府主導でDNB(Digital Nasional Berhad)による単一ホールセール5Gネットワークを全国展開するという独自モデルを採用している。
具体的には、DNBが単一インフラ事業者(Single Wholesale Network Operator)として全国に5Gネットワークを構築し、各通信事業者(MNO)へホールセール提供するという、グローバルでも珍しい方式だ。このモデルは、インフラ整備の効率化や投資の最適化という利点がある一方で、ネットワーク運用の自動化・最適化が極めて高度でなければならないという課題を抱えていた。その解決の鍵となったのがEricssonとの協業による自動化基盤(Managed Network Services + AI Ops + Service Assurance)だ。
Ericssonは既に「予測型セルエネルギー管理(Predictive Cell Energy Management)」でTM ForumのLevel 4自律性認証を取得しており、その技術をDNBが実運用環境に展開したことで、世界で初めて5Gサービス保証(Service Assurance)領域でLevel 4認証を獲得したのが、今回のニュースリリースに至る経緯だと考えられる。
DNBが自社の課題を、AIによる自律化という先進事例へと転換した点は戦略的な英断であり、その実現にはEricssonの高度な自動化技術が大きく寄与した。両社の取り組みは、通信事業者とベンダが連携し、ネットワーク自動化を推進することで新たな価値を創出できることを示す好例と言えるだろう。
■次に、今回のTM Forum Level 4認定獲得の意義について考察したい。ここでいうLevel 4は、意図(Intent)に基づいてAIが自律的に最適化を行い、異常を予測・修正する段階に相当する。つまり、従来の「監視・判断・対応」が人手を介していた領域において、AIが継続的に改善を繰り返すレベルに達したことを意味する。
この成果が持つ意義は二重の構造を持つ。第一に、5Gの領域で独自モデルを採用した後発のマレーシアが、ネットワークの自律化という最先端分野で世界に先駆けた実績を示したこと。第二に、Ericssonが提唱するIntent-based Operations(IBO)が、実際の国家インフラ規模で機能したという事実だ。とりわけ後者は、EricssonがめざすAIネイティブ運用(AI-native Operations)の現実的な到達点を示したものであり、今後の通信業界における自律化アーキテクチャの基準線を一段押し上げたといえる。
DNBにとって、この成果は単なる技術導入ではなく、事業構造上のリスクを優位性へ転化した戦略的成功と位置づけられる。複数の事業者(MNO)がインフラを共有するという制約を、AIによるリアルタイム運用最適化で補完したことで、マレーシアの通信事業全体が機動性と信頼性を両立できる体制へ進化した。Ericssonにとっても、DNBとの協業は「技術の成熟度を実証するグローバルショーケース」となり、AIドリブン型運用モデルの導入価値をグローバルに対して示す説得力を大きく高めた。
今回の成果はLevel 4認証の獲得という先進的な成果だけではなく、AI自律化が商用ネットワーク運用の中核へと移行する転換点であることも意味している。そして、マレーシアだけでなく、グローバルな通信市場、特に5G/将来的には6Gに向けた自律ネットワーク運用の潮流を示す一例としても象徴的だ。自律化レベルの明確な評価制度(TM ForumのANLAV プログラム)をクリアしたという点で、他国・他事業者に対してベンチマーク的意味を持つ。これは、自律化の波が、また一つ理論段階から現実のオペレーション領域へと踏み出した好例であり、今後、他国の事業者がマレーシアの成功を参照していく流れも想定できる。
日本の通信業界においても、超高速・低遅延・多接続という5G/6Gの特性を生かすため、運用の自動化・自律化は避けて通れないテーマとして取り組みが進んでいる。さらに、IoT/産業用途/ローカル5G等への展開を見据えたとき、ネットワークが“サービスを自律的に支えるインフラになる”という視点は、今後の普及拡大の要因の一つとなる。5G運用の効率化やコスト最適化が課題となる中、本件のような高自律化運用モデルがグローバルのベンチマークとして示されたことは、展開の加速を後押しするだろう。5Gは、国の産業や人々の生活を支える基盤となっている。今後、日本市場において事業者とベンダの双方が、自律化水準をどのように発展させていくのか期待したい。