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Telecom Italiaが、5Gの高度化でNokiaを選択。AI活用やデジタル・ディバイド解消も含めた3年間の大型契約

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 Nokiaは11月17日(エスポー)、競争入札の結果、Telecom Italia(TIM)から5Gネットワークのカバレッジと容量の拡張・近代化に関する3年間の大型契約を獲得したと発表した。

 この戦略的パートナーシップは、Nokiaの既存ネットワークに加え、新たな地域におけるTIMの顧客を網羅する。
 Nokiaは「これは、地方都市やルーラルエリアに高速ブロードバンド接続を提供することで、情報格差の解消と企業のデジタル化をめざすTIMの目標達成を支援するものだ。ノキアのエネルギー効率に優れ、AIを活用した製品ポートフォリオは、TIMの持続可能性目標の達成にも貢献する。この先進的な契約により、Nokiaはイタリアにおいて強力な地位を確立することになる」としている。

 NokiaのAI対応のAirScale RANポートフォリオは、エネルギー効率に優れ、TIMの持続可能性目標達成を支援し、環境への影響を軽減する。Nokiaは、最新世代のHabrok 32 Massive MIMO無線機と、FDDマルチバンド対応リモート無線ヘッド(RRM)のPandionポートフォリオを提供し、複数の展開シナリオにわたる包括的なカバレッジを実現する。TIMは、拡張性と消費電力の削減を実現する高性能4G/5Gベースバンド容量カード「Lodos」をはじめとする、Nokiaの最新ベースバンド ソリューションのメリットを活用できる。これらのソリューションは、Nokiaのエネルギー効率に優れたReefShark System-on-Chip技術を搭載しており、TIMの5Gネットワークのパフォーマンス、効率性、信頼性を最大限に高める。

 TIMのCEOであるPietro Labriola氏は「この提携により、TIMは次世代5Gネットワーク構築におけるリーダーシップを強化し、イタリア全土において、より高速でスマート、そしてより持続可能な接続を実現する。イノベーションと効率性を組み合わせることで、格差を埋め、産業変革を加速し、国の持続可能な成長を支えるデジタルインフラを構築していく」とコメントを出している。

 Nokiaはまた、AIを活用したMantaRay SONソリューションの展開をより多くの地域に拡大する予定だ。この自己組織化ネットワークソリューションは、最適化と自動化を実現することで、AIと分析を活用し、ネットワークの効率と品質を向上させ、より優れたユーザエクスペリエンスを提供するというTIMの目標をサポートする。この契約には、AIを活用し、パフォーマンス、効率、安全性を向上させる導入、保守、サポートサービスも含まれる。

 Nokiaのプレジデント 兼 CEOであるJustin Hotard氏は「Telecom Italiaとのパートナーシップ拡大は、信頼性の高い5Gネットワークがイタリアのデジタルトランスフォーメーションの次の段階をどのように実現できるかを示している。AirScaleソリューションは、TIMのカバレッジ拡大と、AIを活用した新しいサービスの基盤構築を支援する。私たちは共に、インテリジェンスを連携させ、イタリアの競争力を強化していく」とコメントを出している。

編集部備考

■5G導入が欧州全域で進み、AI 活用によるネットワーク自動化・最適化は既にグローバルな潮流となっている。その中で、Nokia と Telecom Italia(TIM)が締結した今回の契約は、5G無線機器の更新に留まらず、“AI を前提とした運用モデル”をイタリアの特有の市場環境に適用するための重要なステップでもある。
 イタリアの通信サービス市場は、欧州主要国の中でも価格競争が激しく、ARPUが比較的低水準で推移している。さらに、地形的には山岳・丘陵地帯が多く、人口も地域によってばらつきがあるため、基地局配置や運用の効率性が通信事業者の負担に直結しやすい。こうした背景において、AIによるRAN運用自動化の導入は、ネットワーク品質とコストの両立を図るための必然的な選択だと言える。
 TIMは2019年から5G商用サービスを提供しており、ミラノ・ローマなど主要都市を中心にエリア展開を進め、すでに全国的な5G(NSA)を展開している。今回の契約で新たに導入されるNokiaのMantaRay SON(Self-Organizing Network)は、AIと分析技術を用いてセルのパラメータ調整や負荷分散を自動化し、運用負荷の低減と品質の均質化を実現する。これは人口密度が急激に変化する観光地を有し、また地方都市のカバレッジ強化が求められるイタリアとの相性が良い。さらに、Habrok Massive MIMO などの最新無線機との組み合わせにより、物理RANの刷新と、インテリジェントな運用自動化を同時に進める二層構造のモダナイゼーションが可能になる。
 欧州大手 MNOがAIを活用したRANを前提にネットワーク刷新を進めるという事例は、地域全体のモダナイゼーションの方向性を示す象徴的な動きと位置づけられる。特にTIMのような国主導のデジタル化政策を担う事業者がAIを積極的に採用することは、イタリア国内のネットワーク品質向上にとどまらず、BSS/OSS統合やオペレーション改革を慎重に進める傾向が強い欧州市場における“AIを軸とした5G運用”の潮流を強く印象付けるものとなる。
 山岳地帯・観光地の季節変動・人口密度のばらつきといった複合課題を抱えるイタリアで、AIを活用する5Gがどのような成果を示すかは、同様の地理・市場特性を持つ国々にとっても重要な示唆となる。AIによるRAN最適化をどこまで現実解として定着させられるか。その成否を占う先駆的な取り組みの一つとしても、今後の展開に注目したい。