Sivers Semiconductorsが、ミリ波ビームフォーマーの活用で、米国の大手防衛関連企業から80万ドル規模の開発契約を獲得
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Sivers Semiconductorsは1月15日(スウェーデン キスタ)、米国の大手防衛関連企業から80万ドル規模の開発契約を獲得したことを発表した。
この契約に基づき、Sivers Semiconductorsは得意とする技術であるミリ波ビームフォーマーを活用し、米国の新興戦術通信プログラムをサポートする。同社は「この協業は、高価値アプリケーションへの戦略的参入であり、防衛分野における商用半導体技術の導入加速を浮き彫りにするものだ」としている。
Sivers Semiconductorsのワイヤレス事業担当マネージングディレクターであるHarish Krishnaswamy氏は「防衛プログラムは、特にドローンなどの消耗型プラットフォームが現代の防衛戦略の中心となるにつれ、インテリジェントでソフトウェア定義のアーキテクチャをますます重視するようになっている」とし、「当社の実績あるミリ波テクノロジーにより、防衛関連請負業者は、プログラムのリスク、ソリューションのサイズと重量を削減しながら、展開までの時間を短縮する革新的なソリューションを提供できるようになる」とコメントを出している。
編集部備考
■今回のSivers Semiconductorsと米国防関連企業の契約は、半導体部品の開発・供給のニュースにとどまらず、商用通信技術が軍事通信インフラに組み込まれていく構造的変化を示す事例として位置付けることができる。とりわけ、ミリ波ビームフォーミングとソフトウェア定義アーキテクチャという二つの技術要素は、次世代通信の文脈と防衛通信の文脈が交差しつつある現状を象徴している。
ミリ波帯は5G以降の高速・大容量通信を支える要素技術として知られているが、軍事用途においても、狭ビームによる秘匿性の高い通信、電子妨害耐性、小型端末への実装性といった特性が評価されつつある。従来、戦術通信は専用周波数帯・専用機器による閉じた設計が主流であったが、商用エコシステムで成熟したミリ波テクノロジーを活用することで、性能向上とコスト削減の両立が可能になる構図が見えてきている。
もう一つの注目点は、今回の契約において強調されているソフトウェア定義アーキテクチャの位置づけだ。ハードウェアに固定された機能構成ではなく、ソフトウェア更新によって通信方式やネットワーク構成を柔軟に変更可能な設計は、急速に変化する戦術環境への適応力を高める。とりわけ、ドローンや無人機などの「attritable platform(消耗前提のプラットフォーム)」が前提となる運用環境では、低コストかつ迅速な再構成能力を持つ通信アーキテクチャが重要な意味を持つ。
また、スウェーデン企業であるSivers Semiconductorsが米国防関連プロジェクトの技術開発パートナーに選定された点も重要だ。軍事用途でありながら、開発主体が必ずしも国内企業に限定されず、同盟国・パートナー国の技術力を組み合わせる形でエコシステムが形成されつつある潮流を示す事例の一つとなる。これは、防衛技術の分野でも半導体・通信分野と同様に、国際分業とサプライチェーンの多国籍化が進んでいる現実を反映している。
今回の事例は、上記のような複数の重要な潮流を示唆している。そしてこれらが、「軍事用途向けに特別に開発された通信技術」ではなく、「もともと民生・商用市場で培われた通信技術が防衛用途へと展開されている」という点にも注目したい。ミリ波RFIC、ビームフォーミングIC、ソフトウェア定義無線といった要素技術はいずれも、商用通信インフラや端末市場で競争力を磨いてきたものであり、その成熟度と量産性が軍事分野でも評価される構図となっている。
こうした流れは、防衛通信が従来の「専用品中心の閉鎖系アーキテクチャ」だけでなく、商用通信技術と連続性を持つ開放系アーキテクチャを必要としていることを示唆している。5G/6Gの標準技術、半導体プロセス、RFフロントエンド技術といった分野で商用投資が先行し、防衛用途はその成果を取り込む形になる構造は、今後さらに強まる可能性が高い。
このような技術の連続性は、防衛通信システムの調達・開発モデルにも変化をもたらしつつある。従来のように長期固定仕様の専用システムを構築するのではなく、商用技術の進化スピードを取り込みながら、段階的にアップグレード可能な通信基盤を構築するという発想が現実味を帯びてきたと言えるだろう。ソフトウェア定義アーキテクチャの導入は、そのための制度的・技術的基盤として機能する。
今回のSiversの事例は、そうした変化の最前線を示す一例に過ぎないが、そこから読み取れるのは、通信技術がもはや民生・産業用途と防衛用途で明確に分断される時代ではなくなりつつあるという現実である。通信インフラが社会基盤であると同時に安全保障基盤でもあるという認識は、すでに政策レベルでは共有されつつあり、今後は設計思想や調達構造のレベルでも、より明確に表面化していく可能性がある。
その意味で本件は、次世代通信技術が軍事通信アーキテクチャの中核要素として再定義されつつあることを示す象徴的な出来事の一つと位置づけられるだろう。



