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SingtelがEricssonと提携し、5G Advancedで業界変革を加速

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 Singtelは3月3日(シンガポール)、Ericssonとの戦略的提携を発表した。

 この提携により、5G Advancedを、企業変革の推進、シンガポールのデジタル経済の強化、そして今後10年間の将来を見据えた国家ネットワークインフラの将来性確保を目的とした、プログラマブルでAIを活用したデジタルプラットフォームへと進化させることが可能になる。

 Singtel は「AI、没入型技術、インテリジェントモビリティ、大規模IoTエコシステムが急速に拡大する中、接続性はベストエフォート型のインフラから、測定可能なビジネス成果をもたらす差別化されたサービスへと進化する必要がある。SingtelとEricssonの今回の提携は、5G Advancedを活用し、パフォーマンスの差別化と運用の卓越性をさらに高め、シンガポールがモバイル接続において世界をリードし続けることを可能にする」と説明している。

 Singtel SingaporeのCEOであるNg Tian Chong氏は「5G Advancedは単なるネットワークのアップグレードではなく、シンガポールのAIドリブンの未来を支える基盤プラットフォームだと考えている。インテリジェンス、プログラマビリティ、そしてサービスの差別化をネットワークに組み込むことで、企業が自信を持ってイノベーションを起こし、グローバルに競争できるよう支援する。エコシステムへの測定可能なトラクションとインパクトを示すライトハウス・プログラムを優先的に推進していく。Ericssonとの今回の協業は、AIドリブンの世界において、イノベーションの先駆的推進、企業のエンパワーメント、そしてコネクティビティの新たな章を形作るという、私たちのコミットメントを強化するものだ」とコメントを出している。

 Ericssonのシンガポール、フィリピン、ブルネイ、およびSingtelのグローバルカスタマーユニット責任者であるDaniel Ode氏は「企業や公共機関におけるAI導入が加速するにつれ、エンド・ツー・エンドの5G Advancedネットワーク機能とプログラマブル ネットワークAPIに対する需要は高まり続けるだろう。Singtelとの提携により、ネットワークスライシングと差別化されたコネクティビティにおけるさらなるイノベーションを推進し、効率的なスケールアップと新たな成長機会の獲得を共に実現できることを嬉しく思っている」

ネットワークパフォーマンスとカスタマーエクスペリエンスの向上
 Singtelは、適用可能なサービスレベル契約(SLA)に基づき、エンド・ツー・エンドのネットワークスライシングの商用展開を加速する。これにより、企業はAIワークロード、AR/VR/XRアプリケーション、スマートモビリティ サービス、大規模IoTエコシステムに合わせてカスタマイズされた、高品質で保証された接続を利用できるようになる。
 この取り組みには以下が含まれる。

・カスタマーエクスペリエンスとネットワークパフォーマンスを向上させるAI-in-RAN機能

・商用APIを介して公開されるプログラマブルなネットワーク機能

・エンタープライズ、自動車、公共部門、デジタルネイティブの顧客向けに設計されたプレミアムサービス ティア

 Singtelは、2026年、2028年、2030年までの段階的なロードマップに基づき、拡張性の高い継続的な収益源を確保するとともに、企業が将来を見据えたインフラストラクチャでイノベーションを起こすための自信を与えることをめざしている。

AIネイティブ・ネットワーク運用の推進
 さらに、SingtelとEricssonは、TM Forumが定義するLevel 4ネットワークの自律性実現に向けて、コアネットワークと無線アクセスネットワーク全体にわたるAIを活用した自動化を推進する。
 このアプローチにより、閉ループ最適化が可能になり、信頼性とパフォーマンスを向上させるとともに、サイバーセキュリティとレジリエンスを強化する。また、スペクトルと容量の効率性を向上させることで、増大するデータ需要への対応が可能になり、複雑さと運用コストを削減する。運用にインテリジェンスを組み込むことで、サービス保証と長期的なコスト競争力を強化し、Singtelの持続的なイノベーションと成長を実現する。

3GPP準拠の新興サービス実現
 この協業では、測定可能なエコシステムへの影響を示すライトハウス・プログラムも推進する。例えば、保証されたパフォーマンスを提供するエッジ対応アーキテクチャを活用した没入型AR/VR/XRアプリケーションや、物流、公益事業、小売、自動車、スマートシティなど、様々な分野における超低消費電力デバイス・エコシステムを実現するユースケースなどが挙げられる。これらの取り組みは、導入の加速、新たなユースケースの開拓、そして商用化への明確な道筋の確立をめざしている。

次世代ネットワークへの道を切り拓く
 これらの進歩を基盤として、SingtelとEricssonは、次世代ネットワークへの進化を形作る将来を見据えた機能の探求を進める。取り組みには、センシング対応インフラサービスを可能にする統合センシング・通信、AIドリブンのトラフィック需要に対応するためのアップリンクの強化とアップリンク/ダウンリンクの分離、そして堅牢性、回復力、そして周波数利用効率を向上させるアーキテクチャの進化が含まれる。

 Singtelは「これらの技術を共同開発することで、両社は新サービスの商用化を加速させるとともに、ネットワークの性能と効率を強化する。さらに、企業、公共サービス、消費者がシンガポール国内および海外で次世代のコネクテッド体験を安心して導入できる将来対応型の基盤を構築することをめざす」と説明している。

編集部備考

■5G-Advancedはしばしば「5Gの高度化」と説明されてきた。しかし、最近の事業者とベンダによる共同開発の動きを俯瞰すると、その本質である「6Gへの橋渡し」が色濃く出てきている。それは、次世代ネットワークの設計思想をプレ実装段階へと引き上げるフェーズに入ったことを意味する。ここで一旦、セルラー技術の進化における5G-Advancedの現在の位置付けを整理してみたい。

 これまでの5G進化は、スループット向上、低遅延化、カバレッジ拡張といった無線性能の改善が中心だった。だが5G-Advancedでは、AIによる最適化、エネルギー効率改善、自律的なトラフィック制御など、運用レイヤそのものの高度化が前面に出ている。
AIを前提とした設計へ移行することは、機能の追加だけではなく、従来型の人手による制御モデルでは拡張性に限界が見え始めたネットワークのあり方を変える取り組みだ。5G-Advancedは、まさにその移行準備段階に位置し、多くの研究成果により実用化レベルとなった。

 技術仕様は標準化団体で策定されるが、商用ネットワークでの最適解は、実際のトラフィック特性、既存設備、運用体制と密接に結びついている。机上設計だけでは成立しないことが、今回のような事業者とベンダによる共同開発の意義となる。「実環境データを基にアルゴリズムを調整する」「運用自動化の閾値を詰める」「AI活用の安全域を検証する」といった取り組みは単発PoCではなく、継続的な実装プロセスであり、ネットワークを“自律化可能な構造”へ再設計する作業でもある。

 5G-Advancedは、5Gから6Gへの移行を橋渡しする過渡期となるが、AIネイティブRANやLevel 4自律型ネットワークの実現に向けた事業者とベンダの協創体制が整うにつれ、この過渡期の重要性が明瞭になってきた。「RANの高度化」「クラウドネイティブ化の深化」「AIによる最適化機構の内蔵」「エネルギー効率を意識した設計」が積み重なることで、将来的なAIネイティブRANへの移行コストが大きく下がる。つまり5G-Advancedは、次世代アーキテクチャの礎を築く段階にあり、いま共に設計し、実装し、検証する相手との関係性は、そのまま6G時代の技術基盤へと接続していく可能性が高い。

 セルラー技術における事業者とベンダの協創を発表するニュースリリースは増えており、それぞれが独立した取り組みに見える。しかし、「AI活用を前提とした高度化」「実運用データに基づく共同最適化」「商用化スピードの加速」など、同様の方向性で協創を進めている事実は見逃せない。これは偶発的ではなく、設計思想の収束と見るべきだろう。こうした、技術スタックと運用ノウハウが成熟されていくことで、自然とエコシステムは形成されていく。まだ明確な「勢力圏」が可視化されたわけではないが、5G-Advancedはその第一層を形作る段階にあるのかもしれない。

 このフェーズで問われる技術開発は、「性能をどこまで上げられるか」だけではなく、「どこまで自律化できるか」「どこまでエネルギー効率を改善できるか」「どこまで再現性ある最適化が可能か」にも広がる。6G時代のビジョンが明確になるにつれ、5G-Advancedの本質は、漠然とした未来のための準備ではなく、未来を実装可能にする設計変更という意味合いが強くなってくる。
様々な場所で語られる、6G時代の華やかなビジョン。その実装可能性を支える礎は、5G-Advancedという現実の現場で積み上げられていく技術群だ。その設計と実装が、未来の人々の産業や生活をより良くする新たな源流となる。