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EricssonとViettelが、自律型ネットワーク開発の加速に向けた覚書(MoU)を締結

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 EricssonとViettelは3月3日、自律型ネットワーク開発を推進するための覚書(MoU)を締結したと発表した。

 両社は「この協業の一環として、共同で研究開発活動、ラボ試験、検証を行い、アーキテクチャ、オーケストレーション、AIを活用したクローズドループ自動化、パフォーマンス最適化を探求する」と説明している。

 このパートナーシップは、ネットワーク運用の自動化や無線アクセスネットワーク(RAN)の最適化など、運用と顧客体験の測定可能な改善を実現する実用的なユースケースの開発に重点的に取り組む。

 EricssonとViettelは、高性能なプログラマブルネットワークを開発するため、自律型ネットワーク技術の研究で協力する。ネットワークへのAI導入の第一歩として、Ericssonのインテリジェント オートメーション プラットフォーム(EIAP)とEricsson AI rAppsのパイロット運用を実施し、最適化へのアプローチを変革する。

 ViettelはEIAPエコシステムのメンバーにもなる。業界をリードするRAN自動化プラットフォームのエコシステムに参加することで、Viettelは約90社のメンバー(うち20社はCSP)が参加するrAppディレクトリにアクセスでき、利用可能なrAppは合計で約90件になる。また、専用の開発者ポータル、独自のrApp開発を50%高速化するGenAI開発アシスタント、そしてViettelのrApp開発を支援する様々なツールにもアクセスできるようになる。

 Viettel NetworksのCEOであるLuu Manh Ha氏は「Ericssonと提携し、Viettelネットワークを自律型、自己管理型、ゼロタッチ型にすることで、手動運用をAIドリブン型のインテントベース システムに置き換える。これにより、Viettelはサービスのアジャイル性を向上させ、コストを削減し、複雑な5G/6Gユースケースをサポートできるようになる」とコメントを出している。

 Ericsson VietnamのプレジデントであるRita Mokbel氏は「Viettelとの緊密な連携により、大規模なAI活用、オーケストレーション、そして高性能プログラマブルネットワークの推進をめざしている。このパートナーシップは、ネットワークパフォーマンスの向上、運用効率の向上、そして将来を見据えたサービス提供を可能にする革新的な技術の探求という、両社の共通のコミットメントを反映している」とコメントを出している。

 この戦略的提携を通じて、両社はViettelの完全自律型ネットワーク実現に向けたユースケースを共同で開発・検証していく。

編集部備考

■EricssonとViettelが締結した自律型ネットワーク加速に向けたMoU。ここで示された、rApp活用やAI導入の推進に関する取り組みの本質は、「RAN自動化を“個別アルゴリズム”の話から“プラットフォーム構造”の話へ引き上げる」点にある。
 6Gに向けて物理層や無線方式そのものが進化し、その層の上で“どのように制御するか”という自律化の構造設計が、競争軸として独立し始めている。
 自律化という言葉は抽象的だが、実装レベルで見ると、その中核は「rAppは、どの基盤の上で動くのか」に収斂する。この観点の重要性を整理しなければ、自律化はただの機能追加で終わってしまう。

 Open RANの文脈で「高度な最適化アプリケーション」と語られるrAppは、単体で成立するタイプのアプリケーションではない。成立するためには、
・ネットワークデータへの標準化されたアクセス
・AIモデルの実行環境
・ライフサイクル管理機能
・OSS/BSSとのAPI連携
・商用運用に耐える検証済み統合基盤
が必要であり、これらを包括するのがRAN自動化プラットフォームとなる。
 言い換えれば、「rAppが“商品”なら、プラットフォームは“市場”」であり、ここに自律型ネットワーク競争の構造がある。

 rAppを用いる自律型ネットワークの実運用時における競争軸は、
・データ統合の深さ
・AI学習基盤との接続性
・マルチベンダ環境での抽象化能力
・DevOps的運用への適応性
といった“基盤設計力”になるだろう。今回のMoUは、rAppの開発や導入を支える、この基盤層の整備を加速する点に意味がある。

 ここから見えてくるのは、自律化がただの機能拡張ではなく、ネットワーク構造の一つの層として独立し始めているという流れだ。
 従来のネットワークは、
・無線ハードウェア層
・制御ソフトウェア層
・運用管理層
という構造で整理できた。
 しかし今後は、
1:無線インフラ層
2:自律制御層(RIC・自動化プラットフォーム)
3:AI基盤層(学習・モデル管理)
4:API/サービス抽象化層
5:業界アプリケーション層
という多層構造へ移行していく可能性が高い。重要なのは、2と3が分離しつつある点だ。
 自律制御層はリアルタイム制御に特化し、AI基盤層は大規模学習・モデル進化を担う。両者は接続されるが、必ずしも同一プレイヤーが主導するとは限らない。とはいえ、両者は密接に結び付いた領域でもある。ここに、エコシステムの複層化が生まれる。

 6Gのビジョンが明確になり、商用競争フェーズを見据えるようになると、「誰が自律制御層を設計するのか」が、重要視されるようになった。事業者がこの層の理解と設計能力を持てば、
・rApp内製化
・データ主権の確保
・AIモデルの差別化
・APIによる機能外販
といった戦略的選択肢が広がる。
 逆に、基盤層を完全に外部に依存すれば、rAppはただの追加機能に留まる可能性もある。また、研究段階や前世代技術を飛び越える戦略、いわゆる「リープフロッグ」とは相性が良くない可能性が高い。なぜなら、本領域における跳躍の原動力は制御構造の内製的理解に依存するからであり、将来的にはパッケージ化した技術が登場するにしても自社における最適化に時間を要するからだ。今回のMoUを含め、事業者がこの層に積極的に関与する意思を示す傾向にあるのは、こうした性質を意識したものとも推察できる。

 この構造変化は、経営戦略だけの問題ではない。技術面で重要なのは、
・どのレイヤで差別化が可能か
・どのAPIが標準化されるか
・データモデルの主導権はどこにあるか
・AIモデルの再利用性をどう確保するか
といった実装上の選択が、将来の競争力を左右するという点となる。6Gは無線技術の刷新だけでなく、ネットワーク構造設計の再定義でもある。その構造を具体的に実装し、磨き上げるのは現場の技術的知見であり、そこに繋がる現在の5G-Advanced時代からの早期の共同研究と実装経験の蓄積が、将来の6G時代の競争力を左右する。

 rAppを包括するプラットフォーム層の設計は、AI基盤層との接続を前提とした研究・実装となる。この二つの層の連携は密接であり、さらにはベースとなる物理層との最適化も考えると、自律化に向けたエコシステムは多層化と垂直統合の性質を自然に帯びていくだろう。
 従来のネットワークインフラは、既設をベースに必要な機能を順次追加していくパッチワーク的な進化を遂げてきた。だが、6Gのビジョンが明確になると、そこに向けた全体の最適化を描いて、必要な機能をどのように順次追加していくかという競争軸が生まれる。今回のニュースを含む事業者とベンダのMoUの増加は、その構造転換を見据えた取り組みがグローバルで活発化していることを示唆している。