Ericssonが5Gの高度な位置情報サービスを発表。エンタープライズおよびミッションクリティカルなユースケースにおいて卓越した精度を実現
期間限定無料公開 有料期間限定無料公開中
Ericssonは1月21日、商用5Gスタンドアロン(SA)ネットワークにおける位置情報サービスを再定義する包括的なイノベーション スイートである5G Advanced位置情報サービスの提供を発表した。
Ericssonは「2026年第1四半期にリリース予定のこの画期的なサービスにより、当社は5G測位技術のリーダーとしての地位を確立し、当社のデュアルモード5Gコアを基盤としたスケーラブルで完全に統合されたソリューションを提供する」としている。
Ericsson 5G Advanced位置情報サービスは、測位機能を5G SAネットワークの中核機能として組み込むことで、通信サービスプロバイダ(CSP)が高精度位置情報サービスを収益化し、従来のモバイルサービスに加えて、製造、ヘルスケア、公共安全、自動車、ドローンなどの分野へと事業を拡大することを可能にする。
主なメリットは次の通り。
高精度:屋内では1メートル未満、屋外では10cm未満の測位精度で、正確な追跡が可能
拡張性:屋外アプリケーション(自動車、農業、ドローン)向けに拡張可能で高精度な測位を実現
シームレスな屋内/屋外カバレッジ:両方の環境に対応する統合型5G測位テクノロジー
開発者とデバイスへの適合性:デバイス側アプリは不要。衛星ベースのソリューションと比較してバッテリー寿命が向上
大規模ユースケースのサポート:大規模なジオフェンシング、人口密度分析、追跡ユースケースに対応
Ericssonのコアネットワーク責任者であるMonica Zethzon氏は「5G高度位置情報サービスの提供開始により、5Gスタンドアロン ネットワークの価値が進化する。このイノベーションにより、CSPは位置情報機能に基づいた差別化されたサービスを構築するための精度と拡張性を獲得する」とコメントを出している。
Analysys MasonのパートナーであるCaroline Gabriel氏は「Ericssonの屋内・屋外測位への統合アプローチは、業界に新たなベンチマークを打ち立てる。特に測位精度がミッションクリティカルな分野において、通信事業者や企業の重要な課題を解決する」とコメントを出している。
Ericsson は「5G測位の世界市場はまだ初期段階だが、様々な分野における高精度化の需要に牽引され、急速な成長が見込まれている。当社のソリューションは、拡張性に優れ、開発者にとって使いやすい機能によって、従来のシステムと比較してデバイスのバッテリー駆動時間を延長することで、この需要に応える」と説明している。
今回の発表により、Ericssonのリアルタイム・キネマティクス技術に基づく測位ソリューションがさらに強化され、関連デバイスはサービス開始と同じ2026年第1四半期にEricssonから提供される予定だ。
編集部備考
■5G測位は、5Gの黎明期から期待されてきた用途の一つだ。しかし、徐々に実績は増えているものの、ニュース内でも指摘されているように、未だ「5G測位の世界市場は初期段階」というのが実情だ。では、その5G測位を「SA構成を前提に商用化」するとどうなるかを示したのが、今回のEricssonのニュースだ。同社が実現した「屋外10cm未満、屋内1m未満」という水準により、5G位置情報は補助的な役割ではなく、ミッションクリティカルな業務プロセス設計や自動制御の前提条件になり得る。そのため本件は、精度向上という「測位技術の進化」ではなく、「空間をデジタル化可能な経営資源へ転換する技術基盤の成立」と捉えるべきだろう。
従来のGNSSやWi-Fi測位では、位置は「参考情報」にとどまり、ミッションクリティカルな業務判断や制御の中核に組み込むには信頼性が不足していた。一方、本件のようにcm〜m級精度になると、「どの装置が、どの工程に属しているか」「どの人が、どの区域にいるか」「どの物体が、どの動線上にあるか」が機械的に確定できるようになる。これは、製造・医療・公共安全・モビリティといった様々な分野に共通する意思決定の自動化条件を満たすことを意味する。
これにより、各産業においてどのような構造変化が生まれるのか。例えば製造現場ではAGV、AMR、作業員、部品、設備がリアルタイムに移動するが、それらの空間的関係はこれまで人の判断に委ねられてきた。そこで今回の5G測位による高精度位置情報があれば、工程間バッファの動的最適化、人とロボットの協調制御、設備稼働率と空間利用効率の同時最適化といった制御が可能になる。これは従来からの自動化の延長ではなく、「空間そのものを自動制御に取り込む生産システム」への転換を意味する。これは製造業に限らず、「人・モノ・設備・空間の関係性をリアルタイムに確定できる産業システム」への転換点という点で、構造的に共通している産業は多いだろう。
また、医療・公共安全分野では、位置情報が意思決定スピードを変えることが期待できる。医療・救急・防災領域では、最大のボトルネックは判断材料の不足ではなく、「現場の状況を即座に把握できないこと」にある。屋内外を問わず高精度な位置情報が取得できれば、医療機器・患者・スタッフの動線管理や、災害現場における隊員配置や危険区域把握がリアルタイムに可視化される。ここでは位置情報は効率化ツールではなく、スピードが人命を左右するような状況において、意思決定の質と速度を左右する基盤情報となる。これは「空間把握の遅延がボトルネックだった産業全体」に共通する構造転換だ。
5G測位を様々な産業で活用することを考える際、他の通信方式との比較も重要になる。高精度測位技術としてはUWBやBLE、GNSS強化型測位なども存在するが、UWBやBLEは構内用途に強い一方で専用インフラが必要となり、GNSSは広域屋外で有効だが屋内や都市環境では制約が大きい。これに対し、5G測位はネットワーク側機能として屋内外を横断した測位を標準インフラ上で提供できる点に特徴がある。そして、本ニュース内ではPublic 5G網やPrivate 5G網(日本におけるローカル5G) の別は明示されていないが、仮に双方でこの測位技術が使われるのであれば、実際の運用では、工場や病院など高信頼性が求められる領域ではPrivate 5G網上での閉域利用が先行し、広域サービスではPublic 5G網が活用され、両者を連携させるハイブリッド構成が主流になると見るのが自然だろう。
Ericsson はニュース内で「5G測位の世界市場はまだ初期段階だが、様々な分野における高精度化の需要に牽引され、急速な成長が見込まれている」と指摘している。その高度測位が本件のようにSA構成を前提とするのであれば、多くのキャリア網で実装されているNSA構成では、産業用途として従来とは一線を画す信頼性確保が難しいことになる。だが視点を変えれば、位置情報サービスは、通信キャリアが5G SA投資を産業向け収益モデルへ転換する具体ユースケースになり得ることになる。
5G測位は、複数産業に共通するデジタル変革ニーズと、通信キャリアのネットワーク進化投資を橋渡しする起爆剤となる可能性を持つ。5G測位市場の成長は、5G SAの普及と相関関係にあり、それぞれの市場投資が相互の推進力になるだろう。




