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COHERENTとQUSIDEが、量子セーフティ暗号化のための検証可能なエントロピーを実証

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 Coherent Corp.は1月20日(ペンシルベニア州サクソンバーグ)、量子テクノロジー企業のQusideと共同で、量産可能な量子エントロピー源の実証に成功し、ハードウェアベースのセキュリティにおける大きなマイルストーンを達成したと発表した。

 Coherent Corp.は「この成果は、安全なデジタルシステムに不可欠な基盤である高速かつ検証可能な量子エントロピーを大規模に組み込むことができ、幅広いアプリケーションにわたる次世代セキュリティ アーキテクチャをサポートできることを示すものだ」と説明している。

 このソリューションは、Coherent Corp.の6インチサイズで大規模に製造されたVCSELと、Qusideの量子乱数生成技術を活用している。単一のVCSELから実行時エントロピー検証を初めて実現し、暗号鍵生成、セキュア通信、そして量子耐性および暗号アジャイルな新興システムに適した高品質で観測可能な乱数を実現する。これにより、量子グレードのセキュリティ プリミティブは、ニッチな導入から脱却し、主流のプロセッサ、セキュアエレメント、そしてハードウェアによる信頼の基点へと移行することが可能になる。

 Coherent Corp.のCSOであるGiovanni Barbarossa博士は「VCSEL技術は、データセンタ、センシング、そして大量生産の光学システムにおいて、その信頼性と拡張性を既に実証している」とし、「この協業は、成熟したフォトニック製造プラットフォームが、広範な市場導入に必要なコスト、信頼性、そして規模の要件を満たしながら、全く新しいセキュリティ機能を実現する方法を示している」とコメントを出している。

 QusideのCEO 兼 共同創業者であるCarlos Abellán博士は「セキュリティシステムの強度は、それが依存するランダム性によって決まる」とし、「このマイルストーンのユニークな点は、エントロピーが量子プロセスによって生成されるだけでなく、実証済みの6インチVCSELの量産により、高速で検証可能、そして量産可能であることだ。これにより、ローカルで検証済みの量子エントロピー技術が、実用的かつ導入可能なインフラへと進化する」とコメントを出している。
 Photonics West 2026(1月20~22日:サンフランシスコ)において、Coherent Corp.とQusideは、開発キットと共にこの技術のライブデモンストレーションを発表する。参加者は、このソリューションをシリコンレベルからシステムレベルまで、次世代のセキュア設計に統合し、エントロピー生成と検証に対する高まる需要に応える方法を探る機会を得ることができる。

 Coherent Corp.は「製造可能なコンポーネントと確立された製造プロセスを備えた当社とQusideは、実世界の大規模セキュアインフラ向けに設計された量子エントロピー ソリューションの大量商用展開への道を切り拓いている」と強調している。

編集部備考

■最新の暗号アルゴリズムがどれほど強力でも、鍵生成の元となる乱数が予測可能であれば、攻撃者はそこに入り込む。暗号において乱数の「予測不可能性の強さ」を定量化する指標がエントロピーであり、エントロピーが高いほど、安全な鍵を構成できる可能性が高まる。
 量子乱数生成技術(QRNG)は、このランダム性をアルゴリズム的に生成するのではなく、自然界に本質的に存在する量子現象の不確定性を観測することで得る点に特徴がある。
 しかし従来は、生成された乱数の品質やエントロピーの水準を運用時に検証することが難しく、乱数生成部は暗号システム設計上の“ブラックボックス”となっていた。今回のCoherentとQusideの成果は、この課題に正面から取り組み、量子プロセス由来の乱数が適切なエントロピーを持つことをリアルタイムで検証・保証できる仕組みを、製造プロセスレベルで確立した点に大きな意義がある。
 さらに、ニュース内でAbellán博士が言及している「量子プロセス由来であること」に加えて、「実証済みの6インチVCSELプロセスにより、高速で検証可能かつ量産可能」である点は特に画期的だ。これは暗号鍵生成器の性能向上にとどまらず、暗号システム全体の信頼性を支えるエントロピー源そのものを、商用量産レベルで実装可能にしたことを意味している。すなわち、次世代の暗号アーキテクチャに不可欠な「信頼の土台」を、通信インフラに現実的に組み込める段階へと押し上げたと言える。
 本技術は量産VCSELを用いたフォトニクス構成により、量子事象の揺らぎを直接ビット列へ変換するタイプのQRNGと考えられ、理論上は1ビットあたりのエントロピーがほぼ1に近い高品質な乱数生成が可能になる構造を持つ。これは、従来は光伝送装置ベンダや暗号専業ベンダが個別実装してきた量子・物理乱数生成機構を、半導体量産プロセス部品として外部調達可能にする道が拓かれつつあることを示している。
 ポスト量子暗号は、同市場を牽引している金融分野に加え、エントロピー不足に悩まされやすいIoTデバイスやエッジ機器まで、幅広い潜在需要が存在する。本ニュースの成果は極めて先進的なので、どこまで裾野を広げるかは分からないが、QRNGという基盤技術を量産プロセスに載せられる段階に引き上げた点で、ルータ/スイッチ/基地局/IoTチップベンダなども「買って載せる」だけで量子エントロピーを組み込めるという方向性が現実味を帯びてきた。これは、通信システムの量子セーフティ全体の基盤層強化に寄与し、さまざまな業種のデジタル化をより安心・安全なものへと進化させる可能性を示している。

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