NokiaとHypertecが、ウォータールー大学のSHARCNETのNibiスーパーコンピュータを活用し、健康、気候、AI分野の画期的な研究を推進
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NokiaとHypertecは1月22日(カナダ オンタリオ州ウォータールー)、ウォータールー大学における先進的なスーパーコンピューティング クラスタ「Nibi」の導入に成功したと発表した。
この新システムは、年間4,000人以上の研究者をサポートするように設計されており、カナダの健康、気候科学、工学、AI分野における画期的な研究を推進する能力を大幅に強化する。
NokiaとHypertecは「Nibiは、Nokiaが北米で初めてこのクラスのAI-HPCデータセンタ ネットワークを導入した事例であり、システムアーキテクトおよびプライム インテグレータを務めたHypertecとの世界クラスのコラボレーションを示すものだ。このプロジェクトは、カナダが国内の専門知識を基盤として、世界的に競争力のある独自のAI研究インフラストラクチャを設計、導入、運用する能力の向上を反映している」と説明している。

Nibiスーパーコンピュータ・サーバルーム
SHARCNETは、カナダの学術機関の教員、学生、ポスドク、研究員が研究のために計算能力を利用できる世界クラスの高性能コンピューティング環境だ。SHARCNETには合計19の学術パートナー機関が参加しており、機関数でカナダ最大のHPCコンソーシアムとなっている。また、そのリソースはカナダのすべての学術研究者が利用できる。
NokiaとHypertecは「このプロジェクトは、Nokiaの業界をリードするデータセンタ ファブリックとIPネットワーク、そして大規模AIおよびHPCインフラストラクチャの世界的リーダーであるHypertecのAI-HPCデータセンタ設計およびシステム統合における専門知識を組み合わせたものとなる。Hypertecの高度な液浸冷却機能とNokiaの高性能ファブリックの組み合わせが、導入の成功における重要な差別化要因となった」と説明している。
SHARCNETのテクノロジーディレクターであるJohn Morton氏は「Nibiスーパーコンピュータの導入により、イーサネットベースの相互接続に移行したが、HypertecとNokiaが提供してくれたソリューションはまさに理想的だった。Nokiaの高性能ネットワーキングとHypertecのシステム統合の専門知識を組み合わせることで、当研究コミュニティは、要求の厳しい幅広いワークロードに対応するために必要な拡張性、信頼性、そしてパフォーマンスを実現できる」とコメントを出している。
ウォータールー大学の統計・保険数理学部 研究担当副学長 兼 教授であるCharmaine Dean氏は「Nibiスーパーコンピュータは、ウォータールー大学が高度な計算研究をサポートする能力を大幅に向上させる。NokiaとHypertecとの連携により、スケーラブルなシステム設計と高性能イーサネットネットワークを組み合わせた世界クラスのAIおよび高性能コンピューティング・インフラストラクチャへのアクセスが可能になり、カナダの次世代研究を前進させるとともに、ウォータールー大学が長年培ってきた計算分野におけるリーダーシップをさらに強化することができる」とコメントを出している。
Hypertec Solutions Partner (HSP)のプレジデントであるMike Marracino氏は「Nokiaとの今回の協業は、カナダが世界最高水準のAIおよび高性能コンピューティング・インフラストラクチャを設計・導入できることを証明している。Hypertecは、世界中の大学、企業、政府機関と協力し、最も要求の厳しいAIワークロードに取り組んでいる。その能力をSHARCNETに導入することで、カナダの研究者は真に世界クラスのインフラストラクチャを利用でき、研究とAIの発展におけるカナダの競争力を強化することができる」とコメントを出している。
Nokia CanadaのプレジデントであるJeff Maddox氏は「このプロジェクトは、AI時代におけるカナダのコンピュータサイエンスとイノベーションにおける世界的なリーダーシップを維持するための鍵となる。Nokia Canadaにとって、今日は非常に重要な日だ。Hypertec Group、SHARCNET、そしてウォータールー大学との、今後さらに刺激的な共同プロジェクトを展開していくことを楽しみにしている」とコメントを出している。
Nokia Data Center Fabricは、AI時代を見据えて構築された大容量データセンタ・スイッチング・プラットフォームで、最新のネットワーク・オペレーティングシステム(NOS)と品質第一の設計を基盤としている。既存のエコシステム、環境、プロセスに容易に適応し、信頼性の高い自動化アーキテクチャにより、人為的ミスをゼロに抑える。
カナダにおけるNokiaのフットプリント
Nokiaは「次世代オタワ・キャンパスの起工式を機に、当社はカナダにおける新たな一歩を踏み出す。これは、コネクティビティとイノベーションのグローバルハブとしての地位を強化するための大規模な投資となる。この地域における50年以上にわたる技術的リーダーシップを基盤として、Kanata North Tech Parkに建設された約75万平方フィート(約7万平方メートル)の新キャンパスは、AIを活用したネットワーク、データセンタ ネットワーク、耐量子インフラストラクチャ、そして次世代6Gテクノロジーの進歩を加速させる。また、戦略的パートナーシップを深め、カナダの次世代のイノベーターを育成し、オタワの拠点を国内最大かつ最先端のハイテク研究開発拠点の1つとして強化する。
編集部備考
■今回のNokiaとHypertec GroupによるSHARCNET向けNibiスーパーコンピュータ構築は、大学向けHPC導入事例にとどまらず、AI時代におけるデータセンタネットワークと研究インフラのあり方を示す象徴的なプロジェクトとして多くの示唆を含んでいる。
技術面でまず注目されるのは、NokiaのデータセンタファブリックとIPネットワーク技術を、HypertecのAI-HPCデータセンタ設計・システム統合能力と組み合わせた点だ。従来のHPCクラスタでは、InfiniBandに代表される専用インターコネクトが主流だったが、本プロジェクトではEthernetベースのネットワークを中核に据えている。これはコスト最適化にとどまらず、クラウドネイティブ技術や運用自動化との親和性、スケールアウト時の柔軟性といった観点から、AIワークロード時代の計算基盤にふさわしいアーキテクチャへの転換を示唆している。
特に、数千台規模のGPUノード間で高帯域・低遅延通信を実現するためには、ネットワークそのものが演算性能のボトルネックにならない設計思想が不可欠となる。今回の構成は、ネットワークを単なる接続手段ではなく、「分散計算システムの中核コンポーネント」として再定義する方向性を明確にしており、通信分野にとっても示唆の多い事例だ。
一方で、本プロジェクトの意義は技術面にとどまらない。SHARCNETとウォータールー大学を中心とするカナダの学術機関が、AI・気候・医療といった社会的課題の解決に直結する研究を推進するため、世界クラスの計算基盤を自ら構築した点も注目に値する。研究者個人や単一研究室では調達困難な規模のAI-HPC環境を、学術ネットワークとして共有インフラ化することで、人材育成と研究競争力の両立を図っている。
これは、HPCを単なる研究装置としてではなく、国家的・社会的な基盤インフラとして捉える発想の具体化とも言える。AI技術の発展に伴い、計算資源へのアクセス格差が研究成果や産業競争力の差に直結する時代において、こうした公共性の高い計算基盤モデルは、他国・他地域にとっても重要な参考事例となるだろう。
さらに、通信分野の視点から見ると、今回の取り組みは、データセンタネットワークとAI-HPC基盤の融合がもはや特殊領域ではなく、主流アーキテクチャへと移行しつつあることを示している。クラウドデータセンタで培われたスパイン・リーフ構成やトラフィックエンジニアリング技術が、学術HPC分野にも本格的に適用されるようになりつつあり、ネットワーク運用の自動化、可視化、スケーラビリティといった要素が、演算性能と同等に重要な設計要件となっている。
この動きは、通信事業者やネットワークベンダーにとっても無縁ではない。AIトレーニングや分散推論の大規模化により、将来的にはエッジからコア、クラウド、HPC基盤に至るまで、計算と通信が一体化したアーキテクチャ設計が求められる可能性が高い。今回のNibiプロジェクトは、その縮図を学術研究環境の中で先行的に具現化した事例とも捉えられる。
こうした各要素を見ると、本件は「最先端スパコンの導入」という枠を超え、AI時代におけるネットワーク設計思想の変化、研究インフラの公共性、人材育成基盤の高度化といった複数の潮流が交差する象徴的な取り組みと言える。通信技術と計算基盤が相互に進化しながら、医療、気候変動、AIといった人類の共通課題の解決を下支えしていく構図は、今後さらに重要性を増していくだろう。




