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STLがMynetと提携し、山岳地帯のデータセンタにマルチコアなど超高速光ファイバ接続を提供

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 STLは2月25日(イタリア ブレシア)、Mynetと提携し、イタリア・トレンティーノの山奥に位置するデータセンタ「Intacture」向けに次世代光ファイバソリューションを提供したと発表した。

 STLは「トレント大学がこのプロジェクトの実施機関および科学的なリーダーを務め、5,020万ユーロの資金拠出が必要だった。このうち1,840万ユーロはPNRRから提供された」と説明している。

 北イタリア全域で高性能光ファイバネットワークを専門とする通信会社Mynetは、Intacture施設で光ファイバ接続を稼働させた最初の事業者だ。このプロジェクトは、極めて厳しいスケジュールの中で、地理的に複雑な山岳地帯という環境において、超高速で信頼性の高い光ファイバ接続を実現するという、明確な課題に直面していた。データセンタの立地条件から、導入スピードを犠牲にすることなく、高性能、長期的な信頼性、そして耐障害性を確保できるソリューションが求められていた。

 STLは「当社は高度なデータセンタ接続ソリューションにおける実績のある専門知識と迅速な導入能力を評価され、最適なテクノロジーパートナーとして選ばれた。当社は、高密度でコンパクトな直径の多心ケーブルを含む最先端の光ファイバソリューションを提供し、10/12mmダクトシステムへの設置をより迅速かつコスト効率の高いものにした。堅牢な設計により、長距離の送風も容易で、端末処理も迅速化され、現場での取り扱いもシンプル化されている。これは、厳しい性能、耐久性、拡張性要件を満たすように設計されており、過酷な環境下でもシームレスな導入を可能にする。

 MyNetに割り当てられた接続インフラ全体は2ヶ月未満で完成した。これは、複雑な立地条件におけるプロジェクトとしては記録的な期間だ。この導入により、Mynetは現場で大容量・超高速の光ファイバ接続を有効化し、導入時間の約50%短縮、15年以上のネットワーク寿命、ピーク負荷時のネットワーク安定性の向上など、目に見えるメリットを実現した。

 Mynetのローカルネットワークに関する専門知識とSTLの高度な光ファイバソリューションを組み合わせることで、このプロジェクトは次世代データセンタインフラ向けにカスタマイズされた、耐障害性に優れた高性能デジタルバックボーンを実現する。

 MynetのゼネラルマネージャーであるGiovanni Zorzoni氏は「私たちは、この特別なインフラに60日以内に高性能な接続を実現するという挑戦を受け入れた。STLの高度な光ファイバソリューションのおかげで、信頼性やパフォーマンスを犠牲にすることなく、設計と実行に集中することができた。STLの光ファイバソリューションの品質、堅牢性、そして導入の容易さにより、非常に厳しい環境下でも、記録的な速さでプロジェクトを完了することができた」とコメントを出している。

 この提携について、STLのONB CEOであるRahul Puri氏は「この協業は、データセンタ向けのミッションクリティカルなデジタルインフラ提供におけるSTLの専門知識を裏付けるものだ。マルチコアや低遅延ファイバといった、拡張性に優れ、将来を見据えたソリューションを提供することで、AIドリブンな未来を構造的に備えた、強靭なネットワークの構築をお客様と共に支援していく」とコメントを出している。

編集部備考

■本件の舞台であるIntactureは、ヨーロッパで初めて現役の鉱山内に建設される地中データセンタだ。公的機関と民間企業が大学・研究機関と連携し、次世代データ基盤の実装モデルを検証する拠点として、2026年の運用開始をめざしている。
 山岳地帯にデータセンタを建設し、そこへ高性能な光ファイバを敷設する。一見すれば挑戦的な試みに映るが、その戦略的価値を考察してみると、地理的制約を再定義する発想の転換が見えてくる。
 AIクラスタの拡大により、データセンタの電力需要は急増している。都市圏では、電力系統容量、用地制約、冷却余力、さらには地域住民との調整といった社会的コストが顕在化しつつある。初期投資(CAPEX)の観点では平地立地が依然として有利であることは間違いないが、長期的な運用コスト(OPEX)やリスクコストを織り込むと、この優位性は全てのケースに当てはまる前提条件ではない。
 山岳地帯は標高の高さゆえに冷却効率に優れ、また水力をはじめとする再生可能エネルギーとの親和性も高い。今回のニュースは、データセンタに必須な通信インフラの確保において、耐環境性・高密度・低遅延の光ファイバ設計と施工技術の進化により、従来の制約を打破したことを示した。つまり、「山岳立地が、現実的な戦略的オプションとして現実味を帯びた」ことになる。

 これは、山岳地帯の多い国では示唆に富んだ事例だ。例えば、国土の約7割を山地が占める日本は、水力発電を含む再生可能エネルギー資源・技術を有している。高度な光ファイバ製造技術を持つ企業グループも複数存在する。山間部における光ファイバ給電にも長年にわたり取り組んでいる。これらの基盤は、世界でも類を見ないほど、山間部での高性能データセンタ構築と相性が良い。

 もっとも、山岳立地が直ちに経済合理性を持つとは限らない。光ファイバの施工コスト・保守負担は平地よりも増えるだろう。しかし、都市部での電力逼迫や社会的摩擦が強まる場合、光ファイバ投資の増分は、リスク回避コストとして効率的となる可能性がある。また、光ファイバは交換サイクルが非常に長いので、長期運用を前提とするデータセンタにおいて対投資効果が優れている。
 AIデータセンタ時代における光バックボーン技術は、接続手段だけではなく、立地選択の自由度を拡張する基盤となった。データセンタの山岳立地モデルは、現時点で主流となるオプションではないが、AI時代の課題である電力制約や都市集中リスクとは今後も向き合うことになるので、将来を見据えた検討・研究に値する戦略的オプションとなる。
 事業者が高度な光ファイバインフラをコストと捉えるのか、それとも将来の立地制約を解く鍵と捉えるのか。その認識の差が、次世代データ基盤におけるポジションの差となって現れる可能性がある。
(OPTCOM編集部)