NokiaとAWSが、duおよびOrangeと共同で業界初のエージェント型AI搭載ネットワークスライシングを発表
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Nokiaは2月24日、Amazon Web Services(AWS)との新たな協業を発表した。
この協業により、実稼働中の5Gネットワークにおいて、初のエージェント型AI(Agentic AI)を活用した5G-Advancedネットワークスライシング ソリューションを提供する。
このインテントベース5Gスライシングのイノベーションは、Nokiaの高度なネットワークスライシングとAWS AIプラットフォーム技術を融合させ、通信事業者がプレミアムサービスを必要な場所とタイミングで的確に提供できるよう支援する。duとOrangeは、それぞれのネットワークでこのイノベーションを初めて活用する。
AWSを活用したNokiaの革新的なAIスライシングソリューションは、エージェント型AIを用いて、位置情報、イベント、トラフィック、インシデント、地図といった現実世界のインターネット データを分析し、通信事業者が適応型ネットワークスライシングを提供できるようにする。このエージェント型AIを活用したアプローチは、動的な状況にインテリジェントに対応するプレミアムサービスを構築することで、多様なアプリケーションやユースケースにおいて大きな顧客価値を生み出し、顧客が必要な場所とタイミングで最適なパフォーマンスを実現する。
さらに、通信事業者は、トラフィックの急増、緊急事態、大規模集会といった予測不可能な事象発生時にネットワークパフォーマンスを最適化するという課題に直面する可能性があり、その結果、サービス品質が最適ではなくなり、リソース利用が非効率になる可能性がある。自律型ネットワークスライシング インテリジェンスは、様々な地理的エリアにまたがる最も困難なトラフィック状況にも動的に適応し、管理する。
Nokiaの最高技術・AI責任者であるPallavi Mahajan氏は「このイノベーションは、AIネイティブネットワークの進化における大きなマイルストーンとなる。Nokiaの高度なネットワークスライシング機能とエージェント型AIを組み合わせることで、通信事業者は現実世界の状況に動的に適応する、高品質でインテントベースのサービスを提供できるようになる。Nokiaは、通信事業者に新たなバリューストリームを提供し、企業、業界、そして消費者向けの次世代アプリケーションと差別化されたサービスをサポートすることで、コネクティビティを進化させている」とコメントを出している。
多様なアプリケーションとユースケースに対応するエージェント型AIスライシング
このエージェント型AIを活用した5G-Advancedネットワークスライシングのイノベーションは、以下のような様々なユースケースに活用できる。
・インテントベースのエンタープライズおよび産業向けスライシングは、ビットレートやレイテンシーなどのネットワークKPIを測定し、キャンパス、ビジネスパーク、都市部など、あらゆる場所で企業のSLAを満たすようRANポリシーを自律的に調整する。このイノベーションは、製造、IoT、ドローン、スマートシティ、病院、エネルギー、輸送、港湾といった重要なアプリケーション向けのプレミアム スライシング サービスを強化する。
・エージェント型AIを活用したオンデマンド スライシングは、特定の5G基地局のネットワークパフォーマンスを向上させる。外部データによって起動されるこのサービスは、緊急時にファーストレスポンダー(緊急対応要員)や公共安全機関に優れたネットワーク接続を提供する。エージェント型AIを活用したオンデマンド ネットワーク スライシングは、ゲーム、ストリーミング、XR、AIアプリケーションを利用するプレミアム5G+およびFWAの顧客のサービス品質を維持し、トラフィックの急増、気象条件、環境変化にも対応する。
・大規模イベント向けのエージェント型AIは、コンサートやスポーツイベントなど、需要の高い時間帯において、より広範なキャパシティ可用性を提供する。AIはネットワークデータを分析し、パターンを推測し、予定されているイベントのスライシング ポリシーを設定する。これにより、VIP観客、決済アプリケーション、ファン エンゲージメント、ビデオ放送、アリーナ、公園、会議センターの運営スタッフ向けに、プレミアム5Gスライシングを最適化する。
AWSのGTM & Telco Solutions グローバルディレクターであるAmir Rao氏は「ネットワークスライシングは、通信事業者にとって新たな収益源となることが長年期待されてきたが、手動設定と静的なポリシーにより、エンドユーザはオンデマンドのプロビジョニングを利用できなかった。Amazon Bedrockのエージェント型AI機能をNokiaのアプリケーションに統合することで、通信事業者はトラフィックの急増から緊急事態まで、現実世界の状況に動的に対応する、インテリジェントでコンテキスト・アウェア(コンテキスト認識型)なネットワークスライシングを提供できるようになる。これにより、ネットワークスライシングは単なる技術的機能から真のビジネス イネーブラーへと進化し、通信事業者は顧客ニーズに自動的に適応する差別化されたプレミアムサービスを通じて5Gへの投資を収益化できるようになる。エージェント型ネットワークスライシングは、通信事業者がエンドユーザ向けにリアルタイムのインテントベース サービスプロビジョニングを実現できる時代の幕開けだ」とコメントを出している。
最先端技術の活用
NokiaのAWS向けエージェント型AIソリューションは、インテントベースのネットワークスライシングを導入し、ネットワークKPIを継続的に監視し、複数のソースから現実世界のコンテキストデータを推論し、サービスレベル契約(SLA)を満たすようにRANポリシーを自動調整する。RAN、トランスポート、コアにわたるエンド・ツー・エンドの高度なネットワーク スライシング イノベーションは、Nokiaの5G AirScale基地局、MantaRay SMO、そしてAmazon Bedrock人工知能プラットフォームとシームレスに統合されたエージェント型AIモジュールを活用している。
この統合ソリューションは、エージェント型AIを用いてデータ分析、推論、RANポリシーを調整する。これらのAIエージェントは、イベント、時刻表、インシデント、交通情報、位置情報、地図、天気予報などのインターネット上のオープンデータを活用し、様々なネットワークスライシング ユースケースに対応する。エージェント型AIモジュールは、チャットボット、オンデマンド、スケジュール、自律といった複数のモードで動作する。すべてのモジュールは、APIを介してAmazon Bedrockと連携する。さらに、エージェント型AIを活用したアプリケーションとユースケースは、NokiaのEdge Slicingソリューションによって強化され、大容量、安全、低レイテンシーのネットワークを介して、クラウドアプリケーションとワークロードをモバイルユーザーとデバイスに直接提供する。
Amazon Bedrockは、基盤モデルとインフラストラクチャへのアクセスを提供し、専用のAIエージェントを構築することで、インテリジェントなネットワーク最適化を実現する。これらのエージェントは、過去のRANパラメータとコンテキスト データを分析し、モバイルネットワークのRAN、コア レイヤ、トランスポート レイヤを最適化する。Amazon EKSハイブリッドノードを使用することで、通信事業者はこれらのエージェントとネットワークワークロードを既存のインフラストラクチャにデプロイできると同時に、クラウドとエッジ環境全体でKubernetes管理を統合し、現代のネットワーク運用に必要な柔軟性と拡張性を実現できる。
duの最高技術責任者であるSaleem Alblooshi氏は「この画期的なソリューションを実稼働ネットワークでいち早く試験運用できることを大変嬉しく思っている。エージェント型AIを活用したスライシングにより、重要なエンタープライズ アプリケーションから高度な消費者体験まで、顧客に応答性の優れたプレミアムサービスを提供できるようになる」とコメントを出している。
Orangeの無線・環境イノベーション担当ディレクターであるAtoosa Hatefi氏は「Orangeは5Gにおけるイノベーションの推進に注力しており、今回の実験はAIがネットワーク運用をどのように変革できるかを示すものだ。インテントベース スライシングにより、お客様のニーズを予測し、ミッションクリティカルな用途から没入型エンターテインメントまで、多様なユースケースのニーズに応えるカスタマイズされたサービスを提供できる。
Nokiaは「Mobile World Congress 2026(3月2~5日:バルセロナ)のNokiaブースでは、当社のスライシングソリューションと、エージェント型AIを活用した高度なネットワークスライシングのライブデモをご覧いただける」としている。
編集部備考
■今エージェント型AIによるネットワークスライシングは、高度化事例というだけではなく、スライシングの「提供形態」そのものを変える可能性がある。
従来のスライシングは、事前設計・事前契約・静的運用を前提とする「プロジェクト型」サービスに近かった。高度である一方、設計負荷や運用負荷が重く、スケールしにくいという課題を抱えていた。
そこで、エージェント型AIが運用ループに組み込まれることにより、SLAを満たすためのリソース調整や最適化が自律的に実行されるなら、スライスは「設計するもの」から「生成・維持されるもの」へと変わる。これはオンデマンド型、さらにはイベントドリブン型の一時的スライス提供を現実的な選択肢に押し上げる。
従来のスライシングは、通信事業者の収益モデルを「回線売り」だけでなく「機能売り」へと拡張する機能としてとして位置付けられてきた。このスライシングがAPI経由で動的に生成されるサービス商品へ進化すれば、「機能売り」はよりスケーラブルで汎用的な形へと進化する。今回のエージェント型AI搭載ネットワークスライシングは、その現実的な道筋を商用レベルで示している。今回の発表は、技術進化だけでなく、スライシングのマネタイズ構造の将来像を一段と具体化した点に意義がある。こうした次の段階を見据える視点は、通信事業者が5G-Advancedの導入時期や投資判断を検討する上で、有力な指標となるだろう。
■NokiaとAWSが連携し、Orangeおよびduの環境でエージェント型AIを用いたスライシングを実証したという今回の構造。ここで注目すべきは、AI機能そのものだけではなく、「RAN・Coreの知能がどこに宿るのか」「通信事業者の役割はどう変化するのか」という制御構造の変化だろう。
従来、スライシングの設計・制御は通信事業者のドメイン内で完結することが前提だった。しかしエージェント型AIがクラウド基盤上で動作し、ネットワーク全体を横断的に最適化する構図が一般化すれば、制御プレーンの重心は物理設備から論理基盤へと移る可能性がある。
これは主導権の移転を意味するのではない。むしろ、通信事業者が「設備の所有者」から「ポリシーと価値設計の主体」へと役割を進化させる契機と捉えるべきだろう。重要なのは、AIの所在ではなく、誰が最終的な意思決定ロジックとサービス設計権限を握るかとなる。
エージェント型AIの導入は、5G-Advanced時代における競争軸がハードウェア規模から制御アーキテクチャへ移行しつつあることを示唆している。ここで経営層に問われているのは、技術採用の可否と言うよりも、知能配置を前提とした組織・権限構造の再定義ではないだろうか。





