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NokiaとTeliaが、AI-RANユースケースで協業

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編集部備考

 Nokiaは3月4日(エスポー)、フィンランドのTeliaとAI-RANベースのユースケースを共同で開発・検証することを発表した。

 両社は、AIドリブン型無線アクセスネットワーク(RAN)技術を用いたユースケースを共同で開発・検証し、ネットワーク パフォーマンスの向上とAI対応アプリケーションの商用化を支援する。
 Nokiaは「AI-RANは、将来のビジネスチャンス、ネットワークパフォーマンス、そして効率性の向上を実現する重要な要因だ。今回の発表は、Nokiaが主要顧客とのAI-RAN機能検証を完了したという最近の発表から続く成果だ」としている。

 NokiaとTeliaの協業は、今日の5Gネットワークの能力向上におけるAI-RANの変革の可能性に基づいている。商用ユースケースの探求に明確な焦点を当て、両社はミッションクリティカルを含む様々な業界向けにAI対応システムを概念化し、検証していく。

 NokiaのCTO 兼 AI責任者であるPallavi Mahajan氏は「AIスーパーサイクルに備えるには、ネットワークは設計段階から透明性、トレーサビリティ、そして安全管理を組み込んだ、決定論的で信頼性の高い接続を提供する必要がある。私たちはお客様と緊密に連携し、この目標達成に取り組んでいる。Teliaとの今回の協業は、強力なエコシステムを構築するためのAI-RAN戦略における重要な基盤となる」とコメントを出している。

 TeliaのグループCTO 兼 ネットワーク責任者であるStefan Jäverbring氏は「AI-RANユースケースにおけるNokiaとの協業は、自律型ネットワークへの取り組みにおいて不可欠な要素であり、ネットワークのパフォーマンスと信頼性の向上によってお客様にメリットをもたらす」とコメントを出している。

MWC26におけるAI-RAN
 MWC26では、ホール3のNokiaブース(3B20)で、AI-RAN技術のライブデモを複数実施し、コグニティブなソフトウェア無線システムの実現におけるAI-RANの役割に焦点を当てる。これには、Vaidioの推論機能を備えたVision AI、小売業を変革するServeRoboticsの配送ロボット、そして無線ネットワーク自体を現実世界のセンサとして活用することが含まれる。分散型AI-RANネットワークにおける余剰GPU容量を、AIコンピューティングを外部顧客に提供することで収益化する方法のデモも行われる。Nokiaのデモでは、AI-RANがネットワーク運用を最適化し、エネルギー効率を向上させ、新しいAIドリブン型アプリケーションをサポートする方法も紹介される。

編集部備考

■AIの急速な普及は、通信ネットワークに新たな種類のトラフィックを生み出しつつある。それは、人間の通信を前提としてきた従来のモバイルトラフィックとは性質を異にする「AIトラフィック」だ。

 これまでのモバイルネットワークは、スマートフォンのアプリケーション利用や動画配信といった、人間主体の通信需要に最適化されてきた。トラフィックの増減には時間帯や地域による一定のパターンがあり、通信事業者は統計的な需要予測に基づいてネットワーク容量を設計し、平均的な品質を維持することでサービスを提供してきた。

 しかしAIの普及・進化が進むにつれ、ネットワークを流れるデータの性質は大きく変わり始めている。AIアプリケーションは、クラウド上の大規模モデルとエッジ側の推論処理、さらには分散学習やリアルタイム推論など、複数の計算資源を連携させる形で動作する。このため通信は従来のデータ転送だけではなく、分散計算を支える基盤としての役割も担うようになる。

 この観点で重要になるのが、今後のAIトラフィックにおける要件の高度化だ。AI処理では、遅延や帯域だけでなく、通信挙動の再現性や可観測性が計算結果や処理効率に影響する可能性がある。例えば分散推論や協調AIのような処理では、通信の揺らぎが処理の同期に影響を与えることも考えられる。こうした環境では、従来のように平均的な品質を保証するだけでは不十分であり、ネットワークの挙動をより精密に制御することが求められるようになる。
 こうしたAI時代の通信基盤(AIを伝送する通信インフラ)が満たすべき要件から、従来のモバイルネットワーク設計とは異なる発想(AIを活用した通信インフラ)が求められている。

 そのため、ネットワークの運用方法そのものも変化する必要がある。AIトラフィックはアプリケーションの挙動や計算負荷によって動的に変化するため、従来のように人手による運用や静的なパラメータ設定だけで最適な状態を維持することは難しい。ネットワーク自身が状況を観測し、トラフィックや無線環境の変化に応じてリアルタイムに制御を行う仕組みが必要になる。

 ここで重要な役割を果たすのが、AI-RANや自律型ネットワークの取り組みだ。AIを活用してRANの制御や最適化を行うこれらの技術の概念は、これまでも運用効率化の延長線上の観点で語られてきた。しかしAIトラフィックの観点が重要になった現在、その本質はAI社会を支える通信基盤の制御能力を確立することに移った。これは、モバイルインフラの新たなマネタイズ機会が、急拡大するAI産業から生まれつつあることも意味している。

 今回、NokiaとTeliaがAI-RANをベースとしたユースケースの共同開発・検証に取り組むと発表したことは、こうした変化を象徴する動きだ。本件を含むAIを活用したネットワーク制御は、技術トレンドというよりも、AIトラフィック時代における通信基盤の必然的な進化として位置づけられ始めている。
 これは5G-Advancedから6Gへのロードマップと重なる。5G-AdvancedではAIを活用したネットワーク運用の高度化が進められており、将来の6Gで掲げられている「AIネイティブネットワーク」の基盤ともなる。言い換えれば、AIトラフィックに対応するネットワーク制御能力を段階的に実装していくプロセスが、5G-Advancedから6Gへと続く技術進化の流れの中に組み込まれているという構造となる。

 AIの普及が通信ネットワークに与える影響は、ただのトラフィック増加にとどまらない。AIトラフィックという新しい通信形態の広がりは、ネットワーク設計や運用の前提そのものを変えつつある。AI-RANや自律型ネットワークは、これまでも運用効率化を目的とした研究開発の文脈で語られてきた。しかし、AIを伝送するインフラとしての需要が急速に高まる中で、その実装の意味合いは大きく変わりつつある。技術的には同じ延長線上にあっても、ビジネス的な位置づけは明確に変化していると言えるだろう。今回のニュースで用いられた「AI-RANベースのユースケース(AI-RAN-based use cases)」という表現が成立するのも、それを象徴しているように感じる。
 通信事業者、機器ベンダ、そして彼らに関わる企業にとって、AI-RANや自律型ネットワークの取り組みという、将来の6Gに繋がる研究開発・知見の蓄積は、AIトラフィック時代の通信基盤を構築するための現実的なステップアップの始まりとなる。

(OPTCOM編集部)

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