Coherentが、マルチレール光トランスポートプラットフォームの大幅強化により、ネットワークのスケールアクロス性能を向上
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Coherentは3月12日(ペンシルベニア州サクソンバーグ)、マルチレール光トランスポートプラットフォームとデータセンタ インターコネクト(DCI)トランシーバを組み合わせた、同社のスケールアクロス ポートフォリオの強化を発表した。
同社は「これらのイノベーションは、AIネットワークの拡張に伴い加速する帯域幅と効率性に関する要求に対応するものだ」としている。
Coherentは、伝送機器の効率性を向上させるため、コンパクトなマルチレールプラットフォームを大幅に強化した。これにより、1Uサイズのインラインアンプ(ILA)カード1枚に、C+Lバンド伝送レールを4本搭載することが可能になった。このリソース プーリング技術により、システム全体の電力効率が飛躍的に向上し、同じ設置面積で伝送容量が大幅に増加する。
この技術革新は、Coherent独自の受賞歴のある複数の光構成要素によって支えられている。これには、高出力マルチポート980nmポンプレーザー、オクタルダイナミックゲインイコライザ(DGE)、小型マルチポートOTDR、C+L band対応マルチポート光チャネルモニタ(OCM)、および超高性能マルチポートOCMが含まれる。これらの技術は、ガーネット、光学材料、特殊ファイバなどの先端材料からコンポーネントやサブシステムに至るまで、同社独自の幅広く奥深い垂直統合型技術スタックを活用している。
CoherentのDCIトランシーバ ポートフォリオは、現在生産中の100G、400G、800Gソリューションを網羅し、ハイパースケールおよびキャリアグレードの相互接続アプリケーションをサポートしている。このポートフォリオには、既存の光ファイバインフラの利用率を最大化しつつ、効率的なメトロおよびリージョン接続を実現するように設計された、最近認証を取得した100G-ZR双方向(BiDi)モジュールが含まれている。
Coherentは、極めて高い光出力と狭い線幅を実現する新型ナノ集積型チューナブルレーザーアセンブリ(nano-ITLA)の生産も拡大している。これらのソリューションを組み合わせることで、AIクラスタのスケールアクロスおよびDCIアーキテクチャに最適化された、スケーラブルで高性能な相互接続機能を提供する。
Coherentの通信担当EVPであるSunny Sun氏は「AIトラフィックの増加は、光伝送システムアーキテクチャを根本的に変革している」とし、「当社のイノベーションは、当社の光プラットフォームと高度な垂直統合技術スタックの強みを反映しており、効率性と信頼性を維持しながら、容量密度を大幅に向上させることができる。当社は、ネットワーク事業者がAIドリブン型アプリケーションの需要に対応できるよう、インフラストラクチャの拡張を支援している」とコメントを出している。
OFC 2026では、AIドリブン型ネットワークインフラストラクチャを支える同社の包括的な光伝送ソリューションポートフォリオについて詳しく紹介される。800G-ZR DCIトランシーバを用いたマルチレール技術のライブデモンストレーションも実施される。
編集部備考
■マルチレール光トランスポートプラットフォーム(Multi-rail optical transport platform)は、AI時代のネットワーク基盤として注目されている。背景にあるのは、生成AIの普及によって急増するデータトラフィックだ。AI学習や推論では膨大なデータがやり取りされ、データセンタ内部だけでなく、データセンタ間(DCI)でも大容量トラフィックが発生している。
従来の通信ネットワークは、単一回線の高速化によって帯域を拡張するアプローチを基本としてきた。しかし近年、光インターフェースの高速化は消費電力や発熱、実装密度といった物理的制約に直面しつつある。こうしたスケーラビリティの課題に対し、複数の伝送経路を並列に利用する「マルチレール」アーキテクチャが有効な選択肢となる。
マルチレールの発想自体は新しいものではない。高性能計算(HPC)の分野では、複数のネットワーク経路を並列化して帯域とスループットを拡張する手法が以前から採用されてきた。現在のAIクラスタでも、GPU間通信やデータセンタファブリックにおいて、同様の並列ネットワーク構造が広く使われている。
注目すべきは、この設計思想が光トランスポートネットワークにも広がり始めている点だ。今回Coherentが示したマルチレール光トランスポートプラットフォームは、AIクラスタで一般化した並列化の考え方を光伝送層へと拡張する試みと見ることができる。従来の光ネットワークは、単一リンクの大容量化を中心としたスケールアップ型の設計が主流だった。しかしAI時代のネットワークでは、複数の経路を柔軟に組み合わせて帯域を拡張するスケールアウト型の構造が重要になりつつある。
AI時代に入り、GPUクラスタやデータセンタファブリックで確立された並列分散型アーキテクチャが、通信ネットワーク側へ影響を与え始めてており、ピザボックス型を並列に並べる形(ディスアグリゲーション)へとシフトしている。
マルチレール光トランスポートプラットフォームは、その象徴的な例の1つと言えるだろう。AIインフラの拡大が続く中で、光ネットワークの設計もまた、単一回線の高速化だけでなく、並列化を前提としたスケールアウト型アーキテクチャへと変化していく可能性がある。AIネットワークと通信ネットワークの境界は、今後ますます曖昧になっていくのかもしれない。
■Coherentが示したマルチレール光トランスポートプラットフォームは、ニュース本文でも説明されている通り、複数の光構成要素によって支えられている。その中でも興味深い存在が、各ポートの通信状態を監視する役割を担う超高性能マルチポートOCM(Optical Channel Monitor)だ。
AI学習向けネットワークでは、数千から数万本の光ファイバが並列に接続される「マルチレール」構造が一般化しつつある。こうした環境では、従来のように少数ポートを個別に監視するOCMでは対応が難しくなる。そこで1台の装置で多数の回線を同時にスキャンできるマルチポートOCMが、装置スペースや消費電力を抑えつつネットワーク全体を監視する手段として重要になる。
このポート監視の重要性は、AI時代において一段と高まっている。AIのトレーニングでは、数週間から数ヶ月にわたって膨大なデータが流れ続ける。わずかな信号の歪みやノイズ、すなわちOSNR(光信号対雑音比)の低下がデータエラーを引き起こすと、学習プロセスが停止し、チェックポイントからの再開といった大きな損失につながる可能性がある。
マルチポートOCMは、各チャネルの波長、光パワー、OSNRなどをリアルタイムで高精度に測定することで、こうした品質劣化の「予兆」を早期に検知できる。これにより、エラーが顕在化する前に通信ルートを切り替えるなど、予防的なネットワーク運用を実現することが可能になる。
さらにAIデータセンタでは、トラフィック負荷に応じて光スイッチやROADMによって経路を柔軟に変更する運用が増えつつある。マルチポートOCMがネットワーク全体の通信品質を常時監視し、その情報を制御系へフィードバックすることで、SDNコントローラは「どの経路が最も安定した品質を提供できるか」を判断する材料を得られる。
このようにマルチポートOCMは、ただの監視装置にとどまらない。AI時代の光ネットワークにおいては、膨大な並列回線を可視化し、ネットワーク制御にフィードバックするセンサとしての役割を担う存在になりつつある。マルチレール構造の普及とともに、光ネットワークの運用は「伝送装置中心」から「観測と制御を前提としたネットワーク」へと変化していく可能性がある。
■本ニュースでは、OCMとしてC+L band対応マルチポートOCM(Multi-port C+L Optical Channel Monitor)という言葉も出てくる。こちらのOCMの主な役割は、波長資源をフル活用して光ファイバ1本あたりの伝送容量を最大化することにある。従来はC-bandのみの監視で十分だったが、AIトラフィックの急増により、C-bandだけでは容量が逼迫するケースが増えている。ここでL-bandを併用することで、1本のファイバの容量を理論的に2倍に拡張できるが、これを安全かつ効率的に運用するためには、C+L帯を一括して監視可能なOCMが不可欠となる。
利用シーンを整理すると、超高性能マルチポートOCMは、主にGPUクラスタ内での低遅延・高精度なリアルタイム監視に寄与する。一方、C+L band対応マルチポートOCMは、データセンタ間(DCI)での超大容量伝送を安定的に維持する役割を担う。両者を組み合わせることで、AIネットワークにおける並列ファイバ構造の帯域管理と運用効率を同時に最適化できる。
また、C+L帯対応OCMは、AIトラフィックの負荷変動に応じた柔軟なルート制御や波長割り当ての情報をSDNにフィードバックすることも可能だ。これにより、C-bandとL-bandの双方を含むネットワーク全体の品質をリアルタイムに可視化し、トラフィック増大時にも低遅延かつ高スループットを維持できる。
この2種類のOCMを組み合わせることで、AI時代の超大容量光ネットワークを支える「容量管理と運用制御の中核装置」としての役割を果たすことになる。この技術の進展は、マルチレール光トランスポートプラットフォームのスケーラビリティと信頼性を一段と高める重要な要素といえる。
(OPTCOM編集部)




