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Teledyneが、エッジコンピューティングで航空機データ基盤を刷新。GroundLinkをボーイング737で認証

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 Teledyne Controlsは8月6日(カリフォルニア州エルセグンド)、ボーイング737型機シリーズ向けGroundLink Edge Computing Platform(ECP)およびAppLinkクラウドサービスの提供開始を発表した。

 これは、米国連邦航空局(FAA)によるボーイング737型機シリーズ向け追加型式証明(STC)の承認を受けたものとなる。航空会社は、航空機のダウンタイム、ハードウェアの変更、新規アプリケーションごとの機体レベルでの認証を必要とせずに、機内ソフトウェアアプリケーションを全機にリモートで展開、更新、拡張することが初めて可能になる。システムのあらゆる側面は、TeledyneのAppLinkクラウドサービスを通じて運航会社によって管理される。

 Teledyneは「この最初の認証取得は、世界で最も広く運用されている商用航空機群の一つに、ソフトウェア定義型の新しい航空機データプラットフォームを導入する上で重要なマイルストーンとなる。今後、他の機種についても認証取得が進められる予定だ」としている。

 GroundLink ECPは、従来のスタンドアロン型アビオニクスや航空機インターフェイスデバイス(AID)アーキテクチャを超越し、オープンな機上エッジコンピューティング環境を提供する。5Gセルラー、Wi-Fi、イーサネット、ARINC 429/717インターフェイスを、ARINC 679およびOCI準拠のアプリケーションサーバと統合する。オペレータは、社内開発、Teledyne社開発、または認証を受けたサードパーティ開発のアプリケーションを、機種を問わず一貫したパフォーマンスでリモートから展開・管理できる。

 Teledyne ControlsのプレジデントであるMehrdad Radmehr氏は「GroundLink ECPのリリースは、お客様と業界にとって革新的な一歩となる」とし、「ECPは、運航会社が機内アプリケーションを直接制御できるようにすることで、運航効率の向上、乗務員のサポート、イノベーションの加速化に向けた新たな道を拓く。GroundLink ECPを航空市場全体の運航会社に提供できることを楽しみにしている」とコメントを出している。

 ECPのオープンアーキテクチャは、航空会社がAIドリブン型およびIoT接続型アプリケーションを迅速に導入・拡張できるようにすることで、イノベーションの障壁を取り除く。これにより、運航効率の向上、リアルタイム意思決定の強化、そして機材全体におけるデジタルトランスフォーメーションの推進が可能になる。

編集部備考

航空機は「接続される端末」から「移動するエッジコンピューティング基盤」へ

 今回の発表で注目したいのは、TeledyneのGroundLink Edge Computing Platform(ECP)が、航空機内のデータを収集・転送するための機器ではなく、航空機そのものをエッジコンピューティング基盤へと進化させるアーキテクチャを提示した点にある。

 従来の航空機では、飛行中に取得した各種データを地上へ送信し、クラウドやデータセンタ側で分析・活用することが一般的だった。一方、今回のECPは、機内でアプリケーションを実行できるコンテナ環境を備え、必要な処理を航空機内で完結させながら、クラウドとはアプリケーションの配信やデータ連携を行う構成を採用している。これは、通信分野でMEC(Multi-access Edge Computing)や分散クラウドがめざしてきた「データが発生する場所の近くで処理を行う」という考え方を航空機へ適用したものと捉えることができる。

 さらに、5GやWi-Fi、有線ネットワークを統合し、クラウド経由でソフトウェアを継続的に展開できる点も重要だ。航空機は長期間にわたり運用される資産であり、新たなサービスを提供するたびに大規模な機器更新を行うことは現実的ではない。共通のコンピューティング基盤を機内に整備し、その上でソフトウェアを柔軟に追加・更新できる仕組みは、機体のライフサイクル全体を通じて機能を進化させることを可能にする。

 通信業界で、ネットワークのインテリジェンスをクラウドからエッジへ分散配置する流れが加速している中、その対象は基地局や工場、自動車だけではない。航空機もまた、クラウドと連携しながら機内で高度な処理を担う「移動するエッジノード」として位置付けられる時代に入りつつあり、今回の発表はその方向性を示す一例として注目される。

航空機向けシステムの競争軸も「専用ハードウェア主導」から「ソフトウェアプラットフォーム」へ

 今回の発表は、航空機向けコンピューティング基盤の進化を示すだけでなく、航空機向けシステムにおける競争の軸が変化し始めていることも示唆している。

 これまで航空機向けシステムは、個別の専用機器ごとに機能を実装し、新たなサービスを追加する際には機器の更新や認証取得が必要となるケースが少なくなかった。しかし、ECPは共通のハードウェア上で複数のアプリケーションを実行し、クラウド経由で継続的にソフトウェアを展開することを前提としている。つまり、価値の源泉が専用ハードウェアそのものから、その上で動作するソフトウェアやサービスへと移り始めている。

 この変化は、通信業界がSDNやNFV、クラウドネイティブ化を通じて経験してきた構造変化とも重なる。通信ネットワークでは、専用装置の性能だけで競争する時代から、共通基盤上で新たな機能やサービスを迅速に提供できるかが競争力を左右するようになった。同様に航空業界でも、共通のコンピューティング基盤を活用しながら、運航支援や予知保全、乗客サービスなどの新たなアプリケーションをいかに迅速かつ継続的に提供できるかが重要な差別化要素になっていく可能性がある。

 さらに、このようなソフトウェア中心のアーキテクチャは、航空機単体の進化にとどまらず、クラウドや地上設備、通信ネットワークを含めたデジタルエコシステム全体の価値を高めることにもつながる。共通のコンピューティング基盤上でデータを処理・分析できれば、1機の航空機から得られたデータを地上クラウドと連携させ、飛行中の他の機体や運航統制システムにも反映するといった、機体単位を超えたデータ活用も現実味を増す。
 さらに、通信資源そのものをソフトウェアで最適化する可能性もある。例えば、機内エッジアプリがデータの重要度を判断し、緊急性の高い機体警告などはSATCOMや地上通信を通じて優先的に送信する一方、日常的な運航ログなど大容量データは着陸後に空港のWi-Fiや5Gを利用して同期するといった制御である。こうした仕組みが実現すれば、限られた通信帯域を単に効率よく利用するだけでなく、データの価値と通信コストを組み合わせて通信経路そのものを動的に最適化することも可能になる。

 AIの活用が進む中で、航空機はもはや「データを送る端末」ではなく、ネットワーク全体の中でデータ処理や判断を分担するエッジノードへと変わりつつある。そうなれば、航空機、通信ネットワーク、クラウド、運航システムを個別に高度化するだけではなく、それらを一つのプラットフォームとして連携させ、全体としてどれだけ価値を生み出せるかが新たな競争軸になる。今回の発表は、通信・コンピューティング基盤のプラットフォーム化が航空分野にも広がり始めたことを示す一例として捉えることができるだろう。

(OPTCOM編集部)