光通信、映像伝送ビジネスの実務者向け専門情報サイト

光通信ビジネスの実務者向け専門誌 - オプトコム

有料会員様向けコンテンツ

Quantum Corridor、Ciena、東芝が、商用ネットワーク上で世界初となる1.6Tbps量子耐性光暗号化を実現

期間限定無料公開 有料

期間限定無料公開中

 Quantum Corridor、Ciena、東芝は8月4日(インディアナ州ハモンド、ヒューストン、メリーランド州ハノーバー)、米国中西部にあるQuantum Corridorの商用ネットワーク上で、高速量子耐性ネットワークの実証実験を成功裏に完了したと発表した。

 この実験では、CienaのWaveLogic 6 Extreme(WL6e)1.6Tbps量子耐性暗号化機能により、組織が重要な伝送中のデータを即座に保護できることが実証された。WL6eは、NIST認証済みのPQCアルゴリズムを用いたハイブリッドセキュリティアプローチと、東芝のQKD技術とのシームレスな連携をサポートしている。

 三社は「この実証実験は、各国政府や企業がポスト量子時代への対応計画を加速させる中で実施された。世界各国の政府は、情報システムをNIST承認のPQC規格に移行させるための量子対応を義務付けており、重要インフラ事業者や企業にとって、今すぐ移行準備を開始する必要性が高まっている」と説明している。

 シカゴとインディアナ州ハモンドのデータセンタ間を結ぶQuantum Corridorの稼働中のネットワーク上で実施されたこの試験では、CienaのWaveserverプラットフォーム(WL6e搭載)を使用し、既存のWaveLogic 5 Extreme(WL5e)800G暗号化トラフィックと並行して、1.6Tbpsの暗号化接続を正常に検証した。この試験では、Cienaの光暗号化システムに量子鍵を提供する東芝のQKDサーバとの相互運用性も実証された。

 PQCとQKDの両方をサポートすることで、このソリューションは、ネットワーク事業者に対し、特に”harvest now, decrypt later(現在データを収集し、将来復号する)”攻撃など、今日の暗号化ソリューションに対する量子コンピュータの脅威を軽減するための柔軟な対応を可能にする。企業やサービスプロバイダにとって、このアプローチは既存インフラの全面的な置き換えを必要とせずに、量子耐性ネットワークへの実用的な移行パスを提供する。

 Quantum Corridorのプレジデント 兼 CTOであるRyan Lafler氏は「量子耐性ネットワークはもはや『未来』の話ではない」とし、「ライブネットワーク上でPQCとQKDの両方を用いた1.6Tbpsの暗号化接続を検証することで、AI、クラウド、ミッションクリティカルなアプリケーションの帯域幅需要を継続的にサポートしながら、お客様が量子耐性ソリューションへ移行できるよう支援する方法を実証している」とコメントを出している。

 CienaのWaveserverプラットフォームは、常時接続、ワイヤースピードの光レイヤAES-256-GCM暗号化を提供し、量子耐性暗号化ソリューションの一部として、NIST認定のPQCアルゴリズムを標準でサポートしている。今回の試験では、CienaのWL5e 800G暗号化ソリューションを既に導入している顧客も、簡単なソフトウェア アップグレードでPQCアルゴリズムのサポートにより同レベルのデータ保護を享受できることが実証された。これにより、既存のネットワーク投資の価値をさらに高めることができる。

 Cienaのグローバル研究開発担当SVPであるDino DiPerna氏は「機密データを扱う組織にとって、量子耐性通信への移行はもはや選択肢ではなく必須事項だ」とし、「今回の重要な成果は、PQCやQKDとの連携による高速光暗号化を実環境のネットワークへ容易に導入できることを示したものであり、顧客が重要データを現在から保護するとともに、将来の量子コンピュータ時代に備えられることを実証した」とコメントを出している。

 東芝のヴァイスプレジデントであるTerry Cronin氏は「量子時代への備えには、サイバーセキュリティに対する多層的なアプローチが必要だ」とし、「量子鍵配送(QKD)は、ポスト量子暗号を補完し、重要な通信の保護を強化する物理的なセキュリティ層を追加する。これらの補完的な技術は高速光ネットワークに統合して展開することができ、組織は今日の最も機密性の高いデータを保護しながら、量子安全な通信を実現するための実用的な道筋を得ることができる」とコメントを出している。

 Quantum Corridorのネットワークは、複数のデータセンタ ノード間で顧客トラフィックを伝送し、共伝搬型QKDシステムによって保護された暗号化チャネルによる量子安全な接続を提供している。このトライアルは、NIST準拠のPQCソリューションへの移行、そして顧客が帯域幅を大量に消費するアプリケーションを採用し、高まるサイバーセキュリティ要件に直面する中で、容量とセキュリティを同時に拡張できることを示している。

編集部備考

■量子鍵配送(QKD)や耐量子計算機暗号(PQC)を活用した量子耐性ネットワークの検証は、複数の通信事業者やベンダ、研究機関によって長年にわたり進められてきた重要な領域だ。そうした積み重ねの中で今回の意義は、1.6Tbpsという現在最先端クラスの超大容量光伝送環境において、PQCとQKDの双方に対応した量子安全光暗号化をライブ商用ネットワーク上で実現した点にある。

 また、今回の実証ではPQCとQKDを競合する技術としてではなく、ネットワーク要件や運用方針に応じて活用できる構成として示した点も興味深い。PQCは既存ネットワークへ比較的導入しやすい一方、QKDは物理法則を利用した高い安全性を提供できる。それぞれの特徴を踏まえれば、両者はどちらか一方が他方を置き換える技術というよりも、用途に応じて使い分け、あるいは組み合わせることで量子耐性を高める選択肢として位置付けられつつあることが、今回のニュースからも読み取れる。

 近年、量子耐性ネットワークは「将来の量子コンピュータ時代への備え」という観点から数多く議論され、実証も積み重ねられてきた。一方で、AIデータセンタ間接続(DCI)をはじめとする超大容量光ネットワークでは、これまで伝送容量や低遅延、消費電力といった性能面が優先的なテーマとなることが多かった。今回の成果は、そうした最先端の光伝送環境においても量子安全性を両立できることを示した点に価値がある。これは、量子耐性ネットワークという概念が、AI時代の基幹光ネットワークへと着実に広がりつつあることを示す一例として位置付けられるだろう。

■近年の光ネットワークは、AIデータセンタやGPUクラスタの普及を背景に、800Gbpsから1.6Tbpsへの高速化や長距離DCIの整備が大きなテーマとなっている。しかし、AIが扱う学習データや企業の知的財産、医療・金融データなどは長期間にわたって価値を持ち続けるため、「高速に運べること」と同時に、「将来の量子コンピュータによる攻撃にも耐えられること」が、新たなネットワーク要件として加わり始めている。
 その意味で今回の実証は、1.6Tbpsという高速伝送と量子安全暗号化を両立できることを示しただけではない。PQCとQKDの双方に対応可能な構成を示したことで、将来の暗号技術の進化にも柔軟に対応できる「暗号アジリティ(Cryptographic Agility)」という考え方の重要性を浮き彫りにした点にも価値がある。量子耐性アルゴリズムや標準は今後も進化が続く可能性があり、通信インフラには単一の暗号方式へ依存するのではなく、新たな方式を柔軟に取り込みながら運用を継続できる設計思想が求められるようになりそうだ。

 AI時代の通信インフラは、より多くのデータを運ぶ基盤だけではなく、社会や産業を支える重要なデータを長期間にわたり安全に流通・保管する基盤へと役割を広げている。今後の競争では、伝送速度や容量だけでなく、高度化するセキュリティ要件へどれだけ柔軟に対応できるネットワークを構築できるかが、通信事業者やネットワークベンダの新たな差別化要因になっていくのではないだろうか。

(OPTCOM編集部)

関連記事

海外TOPICS

有料 Nokiaが、AI時代に向けたプロアクティブなネットワーク全体DDoS防御を実現するセキュリティ自動化システム「Deepfield Genome Shield」を発表

 Nokiaは6月9日(エスポー)、通信事業者、ホスティング会社、インターネットエクスチェンジポイント、クラウド構築事業者向けに、AI時代におけるプロアクティブな常時稼働型DDoS防御を実現する業界初のセ…
更新

続きを見る