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Nokiaが、サウジアラビアにAIを活用したネットワーク自動化を加速する新たな研究開発センターを開設

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 Nokiaは9月1日、AIを活用したネットワーク自動化ソフトウェアの開発に特化した新たな研究開発センターをリヤドに開設したことを発表した。

 同社は「このセンターでは、通信ネットワークの自己構成、自己修復、パフォーマンス最適化、エネルギー消費削減、そしてより高い自律性を実現するソフトウェアを開発する」としている。

 センターは、サービス管理・オーケストレーション(SMO)、自己組織化ネットワーク(SON)、オートパイロット、そして自動化とエネルギー効率化のためのrAppsに特化する。チームは、サウジアラビアの通信サービスプロバイダや企業向けにAIドリブン型機能を開発するとともに、AI-native 6G技術の開発を探求し、世界中のNokia顧客向けに“Made in Saudi”のソフトウェアイノベーションを提供していく。

 今回のセンター開設は、今年初めにサウジアラビア通信情報技術大臣とNokiaのプレジデント 兼 CEOであるJustin Hotard氏との間で発表された合意に基づくものとなる。この提携は、Saudi Vision 2030の下、イノベーション、地元の人材、そして高度な研究能力を原動力とする先進的な経済を構築するというサウジアラビア王国の展望を反映している。

 Nokiaの中東・アフリカ地域担当プレジデントであるMikko Lavanti氏は「AIはあらゆる産業を変革しており、ネットワークはその変革を可能にする重要なインフラだ。リヤドに新設される当社の研究開発センターは、Nokiaのグローバルな専門知識とサウジアラビアの人材を結集し、ネットワークの自律性、効率性、応答性を向上させるAIを活用した自動化技術を開発する。また、サウジアラビア国内および世界中の顧客向けにコネクティビティ革新を創出する上で、サウジアラビア王国の役割を強化するものとなる」とコメントを出している。

 サウジアラビア王国のデジタルトランスフォーメーション アジェンダに沿って、このセンターは高付加価値のエンジニアリングおよび研究職を創出するとともに、サウジアラビアの人材向けに高度な研修プログラム、ブートキャンプ、AIおよび自動化に関する資格取得プログラムを提供する。この取り組みは、地元の専門知識の構築、イノベーション能力の強化、そしてグローバルなテクノロジーエコシステムへの貢献度向上という国家目標を支援するものとなる。

 サウジアラビアの通信&情報技術省(MCIT) 通信インフラ担当副大臣であるAbdulrahman AlMufadda氏は「Nokiaの新たな研究開発センターの開設は、サウジアラビア王国をインテリジェントネットワーク技術革新のグローバルハブとしての地位を強化するための戦略的な一歩であり、知識とイノベーション主導のデジタル経済構築をめざすSaudi Vision 2030の挑戦的な目標を反映するものだ。このセンターは、高度な研究開発能力の現地化、AIとソフトウェア分野における国内人材の育成、そして世界市場に貢献できるサウジアラビア発の技術開発に寄与する」とコメントを出している。

編集部備考

通信事業者に求められる「ネットワーク自動化」の更なる高度化

 今回の発表でまず注目したいのは、Nokiaが新たなR&Dセンターの主要テーマとして、AIを活用したネットワークの自動化・オーケストレーションを前面に掲げている点だ。対象となるのは、サービス管理・オーケストレーション(SMO)、自己組織化ネットワーク(SON)、Autopilot、rAppsなどで、ネットワークの自己設定、自己修復、性能最適化、エネルギー消費削減などを実現するという。

 ネットワーク自動化の重要性としては、AIによるトラフィック予測や障害検知、無線リソースの最適化、エネルギー制御などをネットワーク運用に組み込めば、同じ設備を持っていても、その設備からどれだけ性能を引き出せるかに差が生じる点がある。つまり、ネットワークの「設備」そのものだけでなく、設備を常時最適な状態に保つ「運用能力」が競争力になってくる。
 実際、NokiaはAIを利用したMantaRay AutoPilotなどを通じ、ネットワークの自律運用を既に商用ネットワークで進めている。例えばサウジアラビアのstcでは、AIを活用した自律的なRAN運用が実際に導入されている。

 今回のR&Dセンターは、こうした取り組みをさらに高度化するための拠点と見ることができる。通信ネットワークの競争力といえば、これまでは「どれだけ高速・大容量・低遅延のネットワークを構築できるか」が大きな評価軸だった。しかし、AIによって通信トラフィックの特性が変化し、ネットワークが固定的な設備の集合体ではなく、状況に応じて継続的に最適化すべき存在になると、この考え方だけでは十分ではなくなる。
 AI時代の通信事業者にとって重要なのは、「大きなネットワークを持つこと」だけではなく、「AIにより更に複雑化が進むネットワークを、どれだけ効率的に動かせるか」になりつつある。ネットワーク自動化は、もはや運用コストを削減するための補助技術ではなく、通信事業者のサービス品質や設備効率、さらには収益性を左右する要素と言えるだろう。

 もっとも、ネットワーク自動化の必要性が高まっていることと、それを実際に導入できることは別問題だ。ネットワーク規模や運用体制、投資計画によって導入スピードには差があり、現時点では大規模な通信事業者や国家レベルでデジタル投資を進める市場が先行している。今回、NokiaがサウジアラビアにR&Dセンターを開設した背景にも、こうした先行市場との連携を深めながら、AIによるネットワーク自動化を実用化していく狙いがあると考えられる。

「AIをネットワークに使う」から「AIでネットワークを動かす」へ

 では、ネットワーク自動化は具体的にどこへ向かうのか。ここで重要になるのが、「AIをネットワークに使う」という段階から、「AIでネットワークを動かす」という段階への変化だ。

 これまで通信ネットワークにおけるAI活用は、障害の予測やトラフィック分析、設備の故障予知など、人間の運用を支援する用途が中心だった。これは、AIがネットワークの状態を分析し、その結果を人間のエンジニアが判断して設定変更などを行うという構造だ。
 しかしAIの役割が高度化すれば、従来は人間が一つ一つ判断していた定型的な運用操作を、AIが状況に応じて実行する領域が広がっていく。例えば、ネットワークの状態をAIが把握し、あらかじめ定められたポリシーや制約条件の範囲内で必要な設定変更を実行し、その結果を再び確認する。一方で、サービスへの影響が大きい変更や、AIだけでは判断できない例外的な事象については、人間が最終的な判断を行う。こうした人間とAIの役割分担を前提とした閉ループ型の運用が進めば、ネットワークは「人間が常時操作する設備」から「AIが自律的に運用を支援し、人間はより高度な判断に集中するシステム」へと変わっていく。

 Nokiaが今回のR&DセンターでSMO、SON、Autopilot、rAppsを一体的に扱うことは、この方向性を示している。NokiaのMantaRay SMOでは、SONやrAppsをAutopilotがオーケストレーションし、AIを利用したゼロタッチのネットワーク運用をめざしている。また、同社は2026年に入り、リアルタイムのネットワークインテリジェンスを自動的な運用アクションにつなげるエージェンティックAIの機能も打ち出している。
 ここで重要なのは、AIが「分析ツール」に留まらず、ネットワーク運用の意思決定と実行を担うようになることだ。これは、ネットワークの高度化に伴って増え続ける運用負荷を、人間の人数を増やすことで吸収するのではなく、ソフトウェアとAIによって吸収する発想でもある。

 そして、この変化は通信事業者にとって、省人化以上の意味を持つ。AIによってネットワークがリアルタイムに最適化されるようになれば、トラフィックの変化やサービス要求に応じて、設備の使い方そのものを変えられるからだ。ネットワークは「構築して運用するインフラ」から、「状況に応じて自ら最適化するインフラ」へと変わり始めている。

AI前提のネットワークは、6Gより先に始まっている

 Nokiaは今回、現在のネットワークにおけるSMO、SON、Autopilot、rAppsの高度化と並行して、AI-native 6G技術についても研究するとしている。ここから見えてくるのは、AIを前提としたネットワークへの移行は、6Gの登場を待って始まるものではないということだ。むしろ通信事業者にとっては、5Gの段階からネットワークのAI化を進めておくことが、将来のAI-native 6Gへの移行に向けた準備になると考えた方がよい。

 6Gでは、AIが付加機能ではなく、ネットワークの設計・運用・最適化そのものに組み込まれる「AI-native」が前提になるとみられている。Nokiaも、AI-native 6GではAIをアプリケーションとして利用するだけでなく、RANやコア、運用・保守(OAM)など、ネットワークそのものにAIを組み込む方向を示している。 そうであれば、6Gになった瞬間にネットワークをAI-native化することは容易ではない。AIによる分析や自動化、オーケストレーション、データ活用などの運用基盤を、5Gの段階から積み上げておく必要があるからだ。
 実際、グローバルの大手ベンダの製品戦略を見ると、「6Gを待つ」のではなく、「今ある5GネットワークをAIファーストへ変えていく」方向がすでに始まっている。Nokiaは5Gネットワーク上でAI-RANを実証し、AI-RANをソフトウェアとして提供する計画を進めている。
 つまり、AI-native networkは「6Gになったら突然始まる新しいネットワーク」ではない。5Gのネットワーク運用にAIを組み込み、自動化の範囲を広げ、AIがネットワークの判断や最適化に関与する領域を増やしていく。その積み重ねの先に、AIをネットワークアーキテクチャの中核に据えた6Gがあると考えるべきだろう。

 通信事業者にとっても、これは将来技術への備えだけではない。目の前の課題である、AIによるトラフィック増大やネットワークの複雑化に対応するためには、現在の5GネットワークそのものをAIによって高度化する必要がある。そして、その過程で蓄積されるネットワークデータや運用ノウハウ、自動化技術は、5G時代の運用資産にとどまらず、次世代ネットワークへの移行を支える重要な資産になることが見込める。6Gへの準備は6Gが始まってからでは遅く、AI-native化への競争はすでに5Gの上で始まっている。今回のNokiaのR&Dセンター開設は、その変化を象徴する動きの一つといえる。

(OPTCOM編集部)