Zayoが、「エージェント型ネットワーキング」を開始。AIエージェントがネットワークと直接連携
期間限定無料公開 有料期間限定無料公開中
Zayoは9月8日(米 デンバー)、DynamicLink向けエージェント型ネットワーキング(Agentic Networking)を発表した。
同社は「これにより、NaaSはソフトウェア定義ネットワーク制御から、企業向けAIエージェントがネットワークと直接連携できる新たなモデルへと進化する」としている。
Zayoは2025年9月にDynamicLinkでソフトウェア定義ネットワークへの新たなアプローチを導入した。DynamicLinkの運用開始から1年を迎えるにあたり、Zayoは業界初となるネットワーク向けMCPサーバを本番環境で提供開始し、DynamicLinkをセルフサービス型ネットワーク制御からエージェント型ネットワーキングへと進化させた。これにより、承認されたAIエージェントは、ネットワーク状況を把握し、ネットワークツールにアクセスし、承認されたアクションを実行するための統制された方法を得ることができる。
Zayoのエンタープライズ部門 最高収益責任者であるChris Ranalli氏は「Zayoのネットワークインフラストラクチャ、DynamicLinkプラットフォーム、ネットワークスキル、そしてMCPサーバが一体となることで、これまでになかった機能が実現する」とし、「この組み合わせにより、承認されたAIエージェントがネットワーク全体の状況を把握し、ネットワークツールにアクセスし、承認されたアクションを実行できるようになる。企業は、ネットワークに関するAIへの質問だけでなく、AIをネットワーク上で活用できるようになる」とコメントを出している。
■この機能が実現すること
エージェント型ネットワーキングは、企業が既に構築しているAIワークフローに、ネットワークコンテキストと承認されたネットワークアクションを統合する。エージェントは、DynamicLinkの製品およびネットワーク知識リソースを活用してネットワークの状態を把握できる。また、検索拡張生成(RAG)機能により、DynamicLinkの知識ベースに基づいたインタラクションが可能になる。組織は、エージェントが利用できる情報、ツール、アクションを定義し、自動化、ガバナンス、および人間の監視を維持する。
想定されるワークフローは以下のとおり。
クラウド間接続の確立:エンジニアが複数のシステム間を手動で移動することなく、承認されたクラウド環境を接続するために必要な手順を調整する。
ネットワークパフォーマンスの調査:ネットワーク、クラウド、およびアプリケーション環境全体にわたるコンテキストを収集および関連付け、問題の原因を特定し、次のステップを推奨する。
マルチクラウド接続の調整:ワークロードがクラウド環境間を移動する際に、チームが接続要件を理解し、管理できるよう支援する。
異常なネットワーク アクティビティへの対応:関連するネットワークコンテキストを表示し、潜在的な問題を特定し、エンジニアがレビューするためのアクションを推奨する。
承認済みネットワーク変更の実行:承認済みのDynamicLinkツールを起動し、企業で定義された制御の範囲内でネットワークまたはセキュリティアクションを実行する。
ネットワーク機能を企業AIワークフローに拡張:組織は、DynamicLinkポータルを超えて、承認済みのAIエージェントとワークフローにネットワーク運用を組み込むことができる。
Zayoは「ネットワークチームにとって、これはシステム間の移動や定型業務の調整に費やす時間を削減し、より価値の高い意思決定に集中できることを意味する。この効率性は、データ集約型環境の管理がますます重要になっていく小売、金融サービス、ヘルスケア、メディア・エンターテイメントなどの業界にとって特に価値がある」と説明している。
■機能の重要性
第一世代のNaaSは、企業にソフトウェアベースのネットワークインフラストラクチャの可視性と制御を提供した。エージェント型ネットワーキングは、企業がアプリケーション、クラウド、その他のシステム間で作業を調整するために既に利用しているAIシステム内でネットワーク機能にアクセスできるようにすることで、その制御の利用方法を変革する。
Zayoのネットワーク接続担当SVPであるMax Clauson氏は「エンタープライズAIは、ビジネスを支えるシステム全体において、責任を持って何を実現できるかという点で、ますます評価されるようになるだろう」とし、「ネットワークの未来は、単なるポータルではない。企業がビジネス運営に利用するAIシステム内で、ネットワーク機能を利用できるようにすることだ。エージェント型ネットワーキングは、AIがより多くの運用業務を担いながら、人間がその基盤となるインフラストラクチャに対する権限を維持できる、まさにその未来への道筋を組織に提供する」とコメントを出している。
エージェント型ネットワーキングは、DynamicLinkプラットフォームの一部として、すぐに利用可能だ。今回の発表は、エンタープライズネットワークの進化を推進するDynamicLinkが、2026年CRN Tech Innovator Awardを受賞したことに続く成果となる。
編集部備考
「ネットワークを操作する主体」が人間からAIエージェントへ
今回の発表で注目したいのは、ZayoがAIをネットワーク運用の支援ツールとして導入したのではなく、AIエージェントをネットワークそのものに接続し、許可された範囲で操作できる環境を構築した点だ。これまでネットワークの設定変更や帯域の追加、クラウドとの接続などを行う場合、人間の担当者が管理画面やAPIを介してネットワークを操作するのが基本だった。Zayoもこれまで「DynamicLink」によって、こうしたネットワーク操作のセルフサービス化を進めてきた。
今回の「エージェント型ネットワーキング(Agentic Networking)」は、その延長線上にある。AIエージェントがネットワークの状態や関連情報を理解し、必要なツールを呼び出しながら、あらかじめ認められた操作を実行できるようにする。つまり、ネットワークを利用する主体が「人間」から「人間の指示を受けたAIエージェント」へ広がろうとしている。
この変化は、従来からのネットワーク運用の効率化の延長とは、少し意味が異なる。例えば企業が複数のクラウドサービスを利用し、業務システムやAIエージェントが状況に応じて必要なコンピューティング資源を選択するようになれば、ネットワークもその判断に合わせて動的に接続先や経路、帯域などを調整する必要が出てくる。人間が一つ一つ設定を変更するのではなく、AIエージェント同士の処理の中でネットワークが利用される世界だ。
これまでネットワークは「人間が使うインフラ」と考えられてきた。しかし業界が将来像として描いてきたような、AIエージェントが企業活動の中で実際に仕事をするようになれば、ネットワークは「AIエージェントが利用する実行基盤」という新しい側面を持つことになる。今回のZayoの取り組みは、その将来像を先取りして、企業向けネットワークサービスとして具体的な実装を示した先行事例と見るべきだろう。AIエージェントと実際のネットワークを接続し、情報へのアクセスだけでなく認可された操作まで可能にしたことは、今後の企業ITインフラを考える上で注目すべき一歩といえる。
「AIエージェント対応」がクラウド/データセンタ/ネットワークの新しい競争軸になる
今回の取り組みを企業側から見ると、さらに大きな変化が見えてくる。企業がAIエージェントを業務に組み込むようになると、AIエージェントが利用するコンピューティング資源やデータ、クラウドサービスだけでなく、それらを結ぶネットワークもAIエージェントの処理対象になっていくからだ。
これまでクラウドやデータセンタは、人間の利用者やアプリケーションから要求を受け、それに必要なコンピューティング、ストレージ、ネットワークを提供してきた。しかしAIエージェントは、目的を与えられると複数のサービスを組み合わせながら処理を進める。必要なデータを探し、適切なコンピューティング資源を選び、別のAIサービスを呼び出す。その過程でネットワークも、あらかじめ用意された固定的な接続ではなく、状況に応じて利用されるリソースの一つになっていく可能性がある。
そうなると、クラウド事業者やデータセンタ事業者、ネットワーク事業者に求められる条件も変わる。人間が使いやすい管理画面やAPIを提供するだけでなく、AIエージェントがサービスの状態や利用可能な機能を理解し、適切な処理を選択できるようなインターフェイスが必要になる。
今回ZayoがMCPサーバを介してAIエージェントにネットワークの情報やツールを提供したことは、その方向性を具体化したものといえる。現時点では先進的な取り組みだが、今後AIエージェントの企業利用が広がれば、「AIエージェントにとって利用しやすいこと」が、クラウドやデータセンタ、ネットワーク基盤を評価する新しい軸になる可能性がある。
特に重要なのは、AIエージェントが一つのサービスだけで完結せず、複数のITインフラを横断して処理するようになることだ。そうなれば、個々の事業者が自社サービスを提供するだけでなく、AIエージェントが複数のインフラを組み合わせて利用できる環境をどこまで整えられるかが競争力になる。
Zayoの今回の発表は、AIエージェントが企業ITの重要な利用者になる可能性を見据え、ネットワーク側が一歩先に対応を始めた事例と捉えるべきだろう。今後はクラウドやデータセンタを含むITインフラ全体で、「AIエージェントから見た使いやすさ」が新たなテーマになっていく可能性がある。
「AIエージェントが使いやすいインフラ」をどう作るか
さらに今回の発表から考えたいのは、AIエージェントとネットワークを接続するだけでは、企業ITの自動化は完成しないということだ。AIエージェントが実際のインフラを扱うには、そのインフラがAIエージェントから「理解でき、判断でき、安全に操作できる」状態になっている必要がある。
人間のエンジニアであれば、ネットワーク構成やサービス仕様、運用ルール、障害対応の手順などをドキュメントや経験から読み取り、状況に応じて判断できる。しかしAIエージェントに同じことをさせるには、こうした情報を機械が扱える形で提供し、利用可能な操作と権限を明確にしなければならない。今回のZayoの仕組みでも、ネットワークに関する知識やツールをAIエージェントに提供するだけでなく、組織が利用可能な情報、ツール、操作を定義し、ガバナンスと人間による監督を残している。
ここから見えてくるのは、AIエージェント時代には「AIそのもの」だけでなく、「AIが利用できるインフラをどう作るか」が重要になるということだ。クラウド、データセンタ、ネットワーク、セキュリティなど、それぞれのインフラがAIエージェントから利用可能なサービスとして整備されれば、企業はAIを単なる情報検索や文章生成のツールではなく、実際の業務を遂行する存在として活用できるようになる。
黎明期に入ったこの領域では、AIにどこまで権限を与えるのか、誤った判断による設定変更をどう防ぐのか、複数のインフラをまたぐ処理で誰が責任を持つのかなど、技術だけでなく運用やガバナンスの課題も残されている。だからこそ、現時点では「AIエージェントがネットワークを自律的に運用する時代」の始まりを、「AIエージェントが安全にインフラを利用できる環境を作り始める段階」と慎重に捉えるべきかもしれない。
その意味で、今回のZayoの発表は、先行事例として意義が大きい。AIエージェントが安全にインフラを利用できる環境を作るには、AIに任せてよい範囲を人間が見極め、それをルールや権限として落とし込む必要がある。今回、ネットワークサービスにAIエージェントを接続し、情報へのアクセスや操作権限を限定しながら実際のサービスとして提供したことで、AIとインフラの接点を具体化できた背景には、人間が実際のネットワーク運用を通じて蓄積してきた知識や経験があるだろう。
今後、AIエージェントが実際の業務を担うようになれば、その新たな環境で得られた運用データや知見を人間が再び活用し、さらなる運用方法の改善といった好循環も生まれる可能性もある。つまり、AIに人間のノウハウを与えるだけでなく、人間とAIが同じインフラを運用しながら、ノウハウを蓄積・活用していくという新しい流れだ。今回のZayoの取り組みは、そうした「人とAIが共にインフラを使いこなす」時代に向けた、一つの先行事例と捉えることもできる。
(OPTCOM編集部)




