Quectelが、RG660Qx 5Gモジュールの機能を拡張し、将来の鉄道移動通信システムFRMCSの評価と鉄道アプリケーションに対応
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Quectel Wireless Solutionsは9月3日(セルビア ベオグラード)、高性能なSub-6GHz 5GモジュールプラットフォームであるRG660Qx 5GモジュールシリーズのLGA版を発表した。
このモジュールは、将来の鉄道移動通信システム(FRMCS)に対応している。アダプタボードとEVBキットで構成される専用評価環境と組み合わせることで、RG660Qxは機器メーカーや鉄道技術開発者がFRMCSの早期評価とテストを実施し、GSM-Rからの移行に先立つ開発を支援する。
Quectelは「FRMCSは、欧州および世界の鉄道ネットワークにおけるGSM-Rに代わる次世代鉄道通信規格となる。5G技術を基盤とするFRMCSは、列車制御、信号、運行通信、およびミッションクリティカルな鉄道アプリケーション向けに、安全で高速な接続を実現する。鉄道業界が次世代規格への移行を進める中、Quectelは顧客が確実に移行できるよう、早期から投資を行っている」と説明している。
5G FRMCSのテスト、評価、および早期相互運用性開発を可能にするため、Quectelはn100およびn101バンドをサポートするLGAフォーマットのRG660Qxバリアントを開発した。このモジュールと評価キットは、デバイスレベルのFRMCS機能のテストと評価を加速する。検証が完了次第、このモジュールと評価キットは、ご要望に応じてすべての顧客に提供可能だ。さらに、Quectelは鉄道業界の主要企業と連携し、早期段階のテストを開始する予定だ。
Quectel Wireless Solutionsのプロダクト責任者であるLeo Yao氏は「FRMCSは、今後数年間で鉄道業界が経験する最も重要な通信変革の一つであり、当社はお客様がこの変革に先んじて対応できるよう支援したいと考えている」としており、「LGA対応モデルと評価キットを市場に投入することで、お客様は5G FRMCSの評価、相互運用性テスト、そして将来の鉄道移動通信システム(FRMCS)の開発を今日から開始できるようになり、GSM-Rからの移行を加速させることができる」とコメントを出している。
RG660Qxシリーズは、Qualcomm TechnologiesのX85およびX82 5GモデムRFシステムをベースとしており、最大10Gbpsのイーサネット速度と、広範囲をカバーするPower Class 1.5のサポートに加え、大容量固定無線アクセスやエンタープライズネットワークのユースケースを幅広くサポートする。
編集部備考
GSM-RからFRMCSへの移行で求められる、産業側から見た5Gの組み込みやすさ
今回の発表を読み解く上で押さえておきたいのが、FRMCSへの移行は、既存の鉄道通信網を一気に5Gへ置き換えるようなシンプルな世代交代ではないという点だ。
現在、欧州を中心とする鉄道の運行通信ではGSM-Rが広く利用されている。GSM-Rは鉄道の運行や信号などを支える重要な通信基盤として長年運用されてきた一方、ベースとなる技術のライフサイクルを背景に、次世代システムへの移行が必要になっている。そこで開発されている、5G技術をベースとするFRMCS(Future Railway Mobile Communication System)はGSM-Rの後継となるだけでなく、今後増加する鉄道のデータ通信需要に対応し、鉄道のデジタル化を支える通信基盤として位置付けられている。
しかし、鉄道通信にはコンシューマ向け通信とは異なる事情がある。通信が列車の運行や信号などに関わるため、既存システムを単純に停止して新しいネットワークへ切り替えることは難しい。実際、FRMCSの導入にあたっては、インフラ側だけでなく車両側の機器も対応させる必要があり、周波数、アンテナ、車上通信装置、既存システムとの共存など、様々な課題を段階的に解決していく必要がある。欧州鉄道庁(ERA)も、FRMCSの導入ではインフラと車両の双方への展開、GSM-Rの段階的な廃止、車上機器のデュアルモード対応などを課題として挙げている。
そのため、GSM-RからFRMCSへの移行では、しばらくの間は両方のシステムを扱うことが重要になる。UICも、FRMCSはGSM-Rと並行して導入され、両者は一定期間共存することを想定している。つまり鉄道にとっての「5G化」とは、新しい基地局を設置すれば完了するものではなく、既存の通信基盤を維持しながら、車両や地上設備を含むシステム全体を段階的に新しい通信方式へ移行させるプロセスとなる。
今回、QuectelがFRMCS関連周波数帯に対応した5Gモジュールだけでなく、アダプタボードやEVB Kitを用意し、機器メーカーや鉄道技術開発者が早期に評価や相互接続試験を行えるようにしているのも、この移行の性格を考えれば理解しやすい。鉄道技術のデベロッパーや機器メーカーが「自社のシステムで5Gがどう動くか」を、専門的な通信知識がなくても早期にテスト・評価できるようになることは、自社システムへの組み込みのハードルを下げるための仕組みとなる。
通信事業者やネットワークベンダが5Gエリアやネットワークを用意するだけでは、産業側の機器メーカーやSIerが自社製品に5Gを組み込むにはハードルが有る。産業側のエンジニアが「まず触ってみる」「自社機器につないでみる」ことのできる評価環境やリファレンスデザインまで含めて提案できる仕組みが増えることは、5Gの産業への普及を後押しするだろう。
FRMCSへの移行を進める鉄道の動きは、5Gの産業利用において、ネットワークを「作る」ことと、産業側が5Gを「使える」ようにすることは別の課題であることを改めて示している。
(OPTCOM編集部)





