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NokiaとOrange Franceが、世界初となるサービスプロバイダ向けネットワーク トモグラフィーのライブ試験を完了。AI対応インフラストラクチャを支援

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 Nokiaは9月10日(エスポー)、Orange Franceとのネットワーク トモグラフィーのライブ試験を成功裏に完了したことを発表した。

 Nokiaは「この試験は、高度な光ネットワーク インテリジェンスが、通信事業者が伝送ネットワークをより深く理解、管理、最適化し、AIドリブン型サービスの需要拡大に対応するための準備をどのように支援できるかを示すものだ」としている。

 ネットワークトモグラフィーは、光ネットワークのヘルススキャンのようなものだ。ネットワーク全体に侵入型のプローブを設置することなく、光ファイバリンクと波長全体で何が起こっているかをより明確に把握できる。Nokia Bell Labの革新的なアルゴリズムを搭載したこのソリューションは、コヒーレント光伝送から取得した数千ものデータをインポートして処理し、ネットワーク全体のリンクごとの状態をほぼリアルタイムで把握する。

 この試験により、光ファイバの劣化、アンプの問題、設定エラー、その他パフォーマンスに影響を与える可能性のあるネットワークの状態といった問題が特定された。これらの問題を早期に発見することで、通信事業者は基盤となるネットワークをより迅速に検証し、顧客のSLAに影響が出る前に対策を講じることができる。

 今回の試験では、ネットワーク トモグラフィーが通信事業者の既設ネットワーク容量の有効活用にどのように役立つかが実証された。各光リンクの実際の状態をより正確に把握することで、通信事業者はパフォーマンスの最適化、スペクトル効率の向上、そしてより強靭なサービスの提供が可能になる。これは、AIを活用した運用やクローズドループ自動化など、より自動化された光ネットワークの実現に向けた重要な一歩だ。

 また、このソリューションは既にネットワークに設置されている機器を活用するため、現場作業員の介入が不要となり、環境負荷を大幅に削減できる。

 Orange Franceのブロードバンドネットワーク担当ヴァイスプレジデントであるChristian Gacon氏は「ネットワーク性能要件がますます厳しくなるにつれ、通信事業者は伝送インフラのパフォーマンスと状態をより詳細に把握する必要に迫られている。今回の試験の成功により、Orangeはネットワーク運用の未来に向けて重要な一歩を踏み出した。スマートオートメーション技術を活用することで、ネットワークをより最適化し、お客様により強靭なサービスを提供できるようになる」とコメントを出している。

 NokiaのOrange担当ヴァイスプレジデント クライアントエグゼクティブであるGuil Yazdi氏は「長年にわたり、通信事業者は光ネットワーク内部の状況を把握するために、ポイント測定や手動調査に頼らざるを得なかった。今回の試験は、光リンク全体をほぼリアルタイムで可視化できるため、通信事業者が劣化、設定上の問題、パフォーマンスの問題をより早期に検出できるという重要なマイルストーンとなる。ネットワークトモグラフィーは、光インフラに新たなレベルの可視性をもたらし、通信事業者の運用シンプル化、既存ネットワーク資産の有効活用、そしてAIネイティブネットワークへの移行への準備を支援する」とコメントを出している。

編集部備考

AI時代のネットワーク運用は「まず見えること」から始まる

 今回の取り組みで注目したいのは、AI時代のネットワーク運用において「ネットワークの状態をどれだけ正確に把握できるか」が、これまで以上に重要になることを示している点だ。

 AIによるネットワークの自動運用というと、障害を予測したり、設定を自動的に変更したりする機能に目が向きやすい。しかし、AIが判断するためには、その前提として「現在、ネットワークの中で何が起きているのか」を把握できなければならない。今回のネットワーク トモグラフィーは、コヒーレント光伝送から得られる大量のデータを解析し、光ファイバや波長ごとの状態を把握することで、その「見る」部分を高度化する取り組みと捉えられる。
 これは、ネットワーク運用が「監視→分析→判断→制御」という流れで高度化していく際の、最初の土台ともいえる。ネットワークをAIで運用するのであれば、まずネットワーク自身をAIが理解できるデータへ変えていく必要があるからだ。

 さらに、この観測能力が継続的に蓄積されれば、ネットワークの状態そのものが運用上の重要なデータ資産になっていく可能性もある。どのような兆候が性能低下につながるのか、どの状態で障害が発生しやすいのかといった情報を分析できれば、障害検知にとどまらず、予防保全や自動最適化にもつながる。

 AI時代のネットワーク運用では、AIモデルの性能だけでなく、AIが判断するための「観測可能性」も重要な競争力になる。今回の試験は、ネットワークをAIで動かす前に、ネットワークをAIが理解できる状態にしておくことの重要性を示唆している。

AI時代の設備投資は「増設」だけでなく「既存資産の高度化」へ

 では、こうしたネットワークの高度化を、通信事業者はどのように進めていくのか。今回の取り組みから見えてくるのは、AI時代におけるネットワーク投資の選択肢は「新しい設備を増やす」だけではないという点だ。

 AIの普及によってデータセンタ間の通信量が増加すれば、通信事業者には光ファイバや光伝送装置などへの継続的な設備投資が求められる。一方で、通信事業者が保有するネットワークはすでに巨大な設備資産であり、それを短期間ですべて最新設備へ置き換えることは現実的ではない。だからこそ、既設ネットワークをどこまで効率的に使えるようにするかが重要になる。

 今回のネットワーク トモグラフィーは、こうした設備投資の実情の観点からも一つの現実解を示している。既設のコヒーレント光伝送から得られるデータを活用し、追加のプローブをネットワーク内に設置することなく、光リンクの状態を詳細に把握することで、性能やスペクトル効率の改善につなげようとしているからだ。
 そのメリットは、保守コストの削減だけではない。既存設備の状態をより正確に把握できることで、まだ利用できる容量や性能を引き出しながら、必要な場所に新たな投資を振り向けることができる。AI需要によって設備投資の必要性が高まる一方、投資効率も厳しく問われる通信事業者にとって、このアプローチは重要になる。

 AI時代の通信インフラでは、「どれだけ新しい設備を導入したか」だけでなく、「既存設備からどれだけ価値を引き出せるか」も競争力になっていく可能性がある。ネットワークを可視化し、その状態に応じて最適化する技術は、増大するAI通信需要と設備投資負担を両立させるための、現実的な選択肢の一つになりそうだ。

ネットワーク自身が「運用データを生み出すインフラ」になる

 そして今回の取り組みをさらに広げて考えると、通信ネットワークそのものが「データを運ぶインフラ」だけでなく、「自らの状態に関するデータを生み出すインフラ」へ変わっていく可能性も見えてくる。

 これまでネットワークから取得される運用データは、障害対応や性能監視など、主として運用担当者がネットワークを管理するための情報として扱われてきた。しかし、AIによって大量のデータを継続的に解析できるようになれば、その意味は変わってくる。
 例えば、光ファイバの状態変化や装置の性能、設定、トラフィックなどを継続的に分析すれば、どのような状態が性能低下につながるのか、どのような兆候が障害の前触れなのかといった、従来は担当者の経験に依存していた知見をデータとして蓄積できる可能性がある。ネットワーク トモグラフィーは、そのための観測データを増やす仕組みの一つと見ることができる。
 ここから先にAIによる分析や自動化が組み合わされれば、ネットワーク運用は「人間が装置を監視し、問題が起きれば対応する」だけのものではなくなる。ネットワークから得られるデータをAIが継続的に分析し、その結果を再びネットワークの最適化に活かすという循環が形成されるからだ。

 AI時代には、高性能なAIを導入するだけでなく、どのようなデータを継続的に取得し、そこからどのような知見を蓄積できるかが重要になる。その意味では、通信ネットワークは「AIを支えるインフラ」であると同時に、「AIによって自らを高度化するインフラ」にもなり得る。すなわち、人間が長年培ってきた運用ノウハウという領域も、今後はAIと共に蓄積していく可能性が出てきたといえる。
 AI時代の通信インフラの競争力は、伝送容量や低遅延性能だけで決まるものではない。ネットワーク自身から生まれるデータと、それを運用ノウハウへ変換する能力まで含めて考える必要がありそうだ。

(OPTCOM編集部)