ソフトバンクが、高速移動する上空基地局から地上への干渉を低減する動的ヌルフォーミングの実証実験に成功
モバイル/無線 無料HAPSなどの非地上系ネットワークと地上の通信ネットワークの周波数共用が可能に
ソフトバンクは4月21日、成層圏通信プラットフォーム(High Altitude Platform Station:HAPS)などの非地上系ネットワーク(Non-Terrestrial Network:NTN)から地上の通信ネットワークへの電波干渉を低減する技術として、機体の旋回による位置や姿勢の変化に追従して特定方向への電波の放射を抑制する「動的ヌルフォーミング技術」を新たに開発し、上空と地上の基地局間における周波数共用の実証実験に成功したと発表した。
2025年12月に東京都の八丈島で実施した実証実験では、動的ヌルフォーミング技術を実装した基地局を軽飛行機に搭載し、高度約3,000mを高速で飛行する機体から地上に設置した基地局にヌル(電波の放射を抑制する範囲)を向けて電波を放射した。その結果、地上基地局の周辺への電波干渉を安定的に低減することで、地上の通信ネットワークの品質を大きく劣化させることなく、上空基地局から広域の通信サービスを提供できることを確認した。なお、この実証実験では、ソフトバンクが独自に開発した5G対応のシリンダーアンテナおよび大容量ペイロード(通信機器)を活用している。
ソフトバンクは「今後も、今回の実証実験で得られた知見を生かして電波の有効利用に向けた取り組みを進めるとともに、HAPSなどのNTNと地上の通信ネットワークにおける周波数共用技術の実装をめざす」としている。
背景
ソフトバンクは、HAPSが地上基地局と同じ周波数帯の電波を利用して通信サービスを展開できるように、周波数共用に関する技術の研究開発を進めている。これまでに、高高度係留気球を用いたヌルフォーミング技術の実証実験により、定点に滞空する係留気球に搭載した基地局から地上基地局の周辺への電波干渉を低減できることを確認した。一方で、HTA型のHAPSのように高速で飛行や旋回を行う機体の場合、機体から見た地上基地局の方向は常に変化する。そこでソフトバンクは、機体の位置や姿勢の変化に追従しながら特定方向への電波の放射を抑制する動的ヌルフォーミング技術を新たに開発した。
なお、この研究開発の一部は、NICT(エヌアイシーティー)の「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業」の委託研究課題として2023年に採択された、「Beyond 5Gにおける超広域・大容量モバイルネットワークを実現するHAPS通信技術の研究開発」(JPJ012368C07701)の一環で実施したものとなる。
動的ヌルフォーミング技術の概要

図1:動的ヌルフォーミングによる周波数共用の仕組み。
動的ヌルフォーミング技術は、飛行中の機体の位置や姿勢に応じてヌル方向を動的に制御する技術だ(図1)。上空基地局と通信を行う端末にはビームフォーミングにより集中的に電波を放射する一方で、地上基地局の周辺には常にヌルを向けることで電波の干渉を低減する。動的なヌル方向の制御により、地上の通信ネットワークのスループット低下などの通信品質の劣化を抑えることで、上空と地上の基地局間の周波数共用を実現する。
実証実験の概要

図2:実証実験のイメージ。
今回実施した実証実験では、HAPSを想定した軽飛行機に基地局(上空基地局)を搭載し、1.7GHz帯の電波を放射して広域の通信サービスエリアを形成するとともに、車両に設置した基地局(地上基地局)が同一の周波数帯の電波を利用する環境で、動的ヌルフォーミング技術の有効性を評価した(図2)。軽飛行機は高度約3,000mで円旋回しながら飛行し、最大対地速度は時速200kmを超えている。この環境下で、上空基地局と通信する端末A(上空基地局との距離約13km)を地上基地局と通信する端末Bの近くに配置し、動的ヌルフォーミング技術の有無による端末Bのスループットの変化を測定した。

図3:実証実験結果の一例(地上基地局に接続する端末Bのスループット)。
実験の結果、動的ヌルフォーミング技術を適用することで、地上基地局と通信する端末Bの平均スループットが約80%改善することを確認した(図3)。また、機体の位置や姿勢が常に変化する状況においても電波干渉を低減できており、端末Bのスループットの安定性も向上している。これにより、動的ヌルフォーミング技術を活用することで、地上の通信ネットワークの品質を大きく劣化させることなく、HAPSなどの上空基地局から広域な通信サービスの提供が可能となる。









