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NTTが、低軌道衛星MIMO技術と衛星センシング技術の軌道上実証実験を開始

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海洋・山間部など地上通信網が整備されていない地域でのIoT活用や高精細観測の高度化に貢献


 NTTは4月15日、宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)と世界初の「衛星MIMO技術を活用した920MHz帯衛星IoTプラットフォームの軌道上実証」に向け、革新的衛星技術実証4号機(小型実証衛星4号機)に低軌道衛星MIMO/IoT伝送装置(LEOMI)を搭載し、軌道上実証実験を開始したと発表した。

 当該衛星は2025年12月14日12時09分(日本標準時、24時間表記)に打上げられた。その後、LEOMIの軌道上での正常動作を確認するチェックアウト試験を終え、実証開始に必要な初期運用フェーズを完了し、定常運用を開始した。定常運用では、開始後まもなくMIMO方式による信号処理が想定どおり行われていることを確認した。今後は約1年間の実験を計画しており、当該技術の確立をめざす。
 本技術の確立により、将来的には地上通信網が整備されていない海洋や山間部等でのIoTデバイス活用やセンシングサービスなど、世界中であらゆるものがつながる世界を実現する、超広域省電力センシングサービスのへの応用が期待される。NTTでは引き続き、「NTT C89」ブランドのもとで衛星を活用した社会インフラ関連の問題解決を進めていく。
 なお、本技術については2026年5月27日(水)、28日(木)に開催予定の「つくばフォーラム2026」に展示予定だ。

図1:NTTとJAXAが手掛ける「低軌道衛星MIMO技術を活用した衛星センシングプラットフォーム実証」のイメージ。

背景

 近年、低軌道(LEO)衛星分野は世界的に急成長しており、2025年時点で地球周回中の衛星は1万機近くに達している。これは10年前と比較して約10倍の水準となる。特にSpaceXやAmazonなどの民間企業が牽引し、国際競争が激化している。
 こうした背景の中、NTTは、宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想の発表やスペースコンパス社の設立など、宇宙事業への取り組みを進めている。さらに、社会課題の解決につながる革新的な光ネットワーク・インフラの構築等の社会インフラ創出をめざし、2019年11月からNTTの光・無線ネットワーク技術とJAXAの「宇宙機のシステム構築技術」との掛け合わせにより、「地上と宇宙をシームレスにつなぐ超高速大容量でセキュアな光・無線通信インフラの実現」等に向けた共同研究に取り組んでいる。
 宇宙統合コンピューティング・ネットワーク構想のひとつである宇宙センシングは、衛星で取得した高精細で大容量な観測情報の利活用や、地上のあらゆる場所で取得したセンサデータの収集を担う、超広域衛星センシングプラットフォームの実現をめざしている。この実現には、低軌道衛星から地上基地局へ伝送する無線信号の周波数利用効率を向上し伝送容量を改善する「低軌道衛星MIMO技術」と、無線局免許不要で多様な地上用LPWA無線端末の収容を可能とする「衛星センシング技術」の実現が不可欠だ。
 NTTとJAXAは、低軌道衛星MIMO技術および衛星センシング技術の実証に向け、軌道上実証プログラム「革新的衛星技術実証プログラム」の「革新的衛星技術実証4号機」の実証テーマに応募/選定された。LEOMIを含む当該プログラムにおける実証テーマ機器を搭載する小型実証衛星4号機が2025年12月14日12時09分(日本標準時、24時間表記)打ち上げに成功したことを受け、世界初の「衛星MIMO技術を活用した920MHz帯衛星IoTプラットフォームの軌道上実証」を開始した。

技術の概要

 本実証テーマでは、超広域衛星センシングプラットフォームの実現に向けた要素技術について、小型実証衛星への搭載性を考慮したスケールモデルとなるLEOMIを用いて低軌道衛星軌道上で技術実証に取り組む。

要素技術1:低軌道衛星MIMO技術(低軌道衛星-地上間通信の大容量化)
【実証の概要】
 衛星から地上基地局への通信であるフィーダリンクにおいて、地上基地局の遠隔に配置した複数の受信アンテナに向けて、衛星から複数アンテナを用いたMIMO伝送を行い、地上基地局への受信信号の集約後、MIMO信号の同期およびチャネル推定を行い、信号の等化を行うことで、信号の多重伝送を実現する。

【実証の効果】
 本技術を確立することで、将来の衛星通信の抜本的な大容量化の実現が可能となる。これにより、衛星通信の伝送速度の向上や、収容端末数の大幅な増加、また観測衛星の高精細な画像・レーダ情報の取得が可能となり、気象情報、地形変化、海洋観測、災害予測などの観測精度の向上に寄与する。

要素技術2:衛星センシング技術(超広域衛星IoTプラットフォームの実現)
【実証の概要】
 地上の複数のLPWA方式のIoT端末から同一時間・周波数で送信し、複数端末の同時通信を実証する。
衛星で受信した920MHz帯の電波の波形データにより、衛星IoTの電波環境を検証する。
衛星IoTネットワークを利用するときの端末電池寿命が、地上IoTネットワークを利用するときと同等の年単位になることを検証する。

【実証の効果】
 本技術を確立することで、小型かつ省電力のIoT端末を、衛星のみで地球上どこでも場所を問わず大規模に収容することが可能となる。地上基地局が不要であることから、例えばインフラ設備の点検、環境モニタリング、スマートメータ等で用いられるIoTサービスを低コストかつ広域に展開することが期待できる。

実験の概要

チェックアウト試験
 小型実証衛星4号機の打上げ後、クリティカル運用期間(ロケットから衛星分離後、衛星の電源系・通信系の正常動作を確認するまでの運用期間)および衛星バス機器のチェックアウト完了後、衛星MIMO/IoTの初期運用フェーズに移行し、衛星搭載装置の軌道上での正常動作を確認するチェックアウト試験を実施した。いずれの試験も制御コマンドに対し、軌道上で正常動作を示すことを確認し、定常運用試験に問題なく移行できることを確認した。

定常運用(2025年度4Qから2026年度4Qまで)
 定常運用は約1年間を予定しており、その期間において衛星MIMO技術および衛星IoT技術の有効性を実証する。

MIMO伝送試験の結果速報(2026年3月13日)
 衛星MIMO技術においては、3月13日に定常運用の初回実験を実施した。衛星搭載機器(LEOMI)のメモリに保存された異なる2つのデータ系列を変調して電気信号に変換し、それぞれ2つのアンテナから同一周波数でMIMO伝送し、2局の地上局で受信後、等化処理を行うことで、信号の分離を行った。受信時のデジタル信号の信号点と、等化処理による干渉補償後の信号点を比較した結果、干渉補償後には信号点が4か所に明確に収束することを確認した(図2)。受信時は全く収束していない信号が、干渉補償によって収束していることが分かり、MIMO方式による信号処理が想定どおり行われていることを確認した。

図2:MIMO信号処理による受信信号点の干渉補償の様子。※信号点が4か所に収束している状態は、MIMO信号処理が想定通りに行われていることを意味する。

今後の展開

 今後約1年間(2025年度4Qから2026年度4Qまで)の定常運用を実施し、衛星MIMO/IoTの実証実験を行い、技術確立をめざす。衛星MIMO技術およびIoT技術を確立することで、衛星通信の大容量化と小型端末の大規模収容の実現が可能だ。また観測衛星の高精細な画像・レーダ情報の取得が可能となり、気象情報、地形変化、海洋観測、災害予測などの観測精度の向上に寄与する。さらに、IoT技術により地上基地局が不要となることで、インフラ設備の点検、環境モニタリング、スマートメータ等で用いられるIoTサービスを低コストかつ広域に展開することが期待できる。

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