光通信、映像伝送ビジネスの実務者向け専門情報サイト

光通信ビジネスの実務者向け専門誌 - オプトコム

有料会員様向けコンテンツ

インフラ事業者を中心とした7社と資本業務提携へ【JIW】

テレコム 無料

日本の幅広いインフラ事業者とともに、AIの共同強化・共同保全の取組を加速

 ドローンを利用したインフラ点検ソリューション提供するジャパン・インフラ・ ウェイマーク(以下、JIW)は4月20日、同社に東京電力パワーグリッド、北陸電力、大阪ガス、西部ガス、東洋エンジニアリング、NTTデータ、DRONE FUNDが資本参加したことを発表した。
 JIWは「7社と共に、新たな分野でのサービスを提供していく」としている。
SGインキュベート第1号投資事業有限責任組合による株式取得

経緯および目的

 JIWは、NTT西日本の100%子会社として、NTT西日本グループ内で培ったオペレーショナルエクセレンスを活かし、“支える人を、支えたい”をミッションに日本のすべてのインフラ点検に貢献すべく、ドローンやAIを活用した効率的なインフラ点検サービスを提供することを目的として、2019年4月1日に設立された。現在は、全国で鉄塔・橋梁・法面等を中心に、太陽光パネルや風力ブレードまで幅広いインフラ設備の点検を実施している。
 公共インフラの老朽化が進み、維持のための労働力不足も課題となる今、インフラ点検の効率化はNTTグループのみならず、インフラ事業者を中心に日本社会全体の課題となっている。JIWは「この課題を解決するため、インフラ点検に関わる事業者7社と資本業務提携をすることにした。今後、より連携が密になることで広範囲かつ迅速にインフラ点検を実施し、さらに点検ノウハウの蓄積やそこで獲得したデータを活用したAIの共同強化、設備の共同保全などを実現することをめざす」としている。
 今回の資本業務提携にあたり、JIWは第三者割当増資を実行し、提携先各社はJIWの普通株式の一部を取得した。

資本提携先と業務提携内容

今後の方針

 JIWは「社名に込められる“日本のインフラの道しるべ”となるべく、今までの実績を活かし最新技術にも注目しながら、AIなどの技術のブラッシュアップやドローン機体のさらなる開発を行っていく。また、今回の提携を足がかかりに、各社との相互の協力体制を強化し、インフラ設備の効率的なメンテナンス手法の確立に努めていく」としている。

各社コメント

 東京電力パワーグリッド 取締役副社長 三野治紀氏は「東京電力パワーグリッドは、これまで電力設備の点検の効率化やレジリエンスの強化に向けて、ドローンの活用に取り組んでおり、2020年3月にはドローンの目視外飛行を支援する航路プラットフォームを目指したグリッドスカイウェイ有限責任事業組合を設立した。今回のJIWとの提携により、巡視、点検に適した機体やAIの共同開発を行うことで、これまで以上に安全で品質の高い保全業務の遂行を期待するとともに、有人地帯における目視外飛行(レベル4)に向けた実証試験を加速させドローンが安全に飛び交う世界の実現をめざしていく」とコメントを出している。

 北陸電力 取締役 常務執行役員 松田光司氏は「当社は電力設備の保安点検の効率化をめざし、ドローンやAIの導入等に取り組んでいる。今回のJIWとの提携により、ドローンやAIの導入を更に進めることで、これまで以上に効率的かつ品質の高い業務遂行を実現し、抜本的な業務効率化を達成することをめざしていく。また、JIWの優れた技術を北陸地域の様々なインフラ設備の点検に活用することで、北陸地域の課題解決に貢献していきたいと考えている」とコメントを出している。

 大阪ガス 代表取締役 副社長執行役員の宮川正氏は「今回JIW社との連携により、当社が培ってきた設備点検等のノウハウを活用し、JIW社含めインフラ事業者と共同でAIを強化することで、ガス製造設備の維持管理の効率化をしていきたいと考えている。そしてこの取り組みで得た知見とJIW社の高い技術力を活かし、他社のプラントにも点検サービスを提供するなど、新たな事業拡大をめざしていく」とコメントを出している。

 西部ガス 執行役員 事業開発部長の松田和久氏と、SGインキュベート 代表取締役社長の相川洋氏は「近年、当社グループを取り巻く事業環境は、電力・ガスの全面自由化などこれまでにないほど大きく変化している。当社グループはこれを新たな機会ととらえ、事業領域の拡大を目的にスタートアップ企業に対して投資を行うCVCを組成し、ガスエネルギーと関連性があり 事業シナジーが見込まれる企業との提携を進めている。今回のJIWとの提携もその一環であり、当社グループが保有する施設の点検業務にドローンを活用すること、また点検結果の解析に使うAIを業界横断で共同強化することにより、早期に現場導入可能なソリューションが実現することを期待している」とコメントを出している。

 東洋エンジニアリング 執行役員 鈴木恭孝氏は「プラント、インフラ設備においても保守点検の高度化に対する需要が高まっているが、点検コストや高所設備における点検員の安全確保が課題となっている。今回のJIWとの提携によって設備点検にドローンやAIを活用することが可能となり、安全性のさらなる強化、高頻度且つ低コストでの点検実施が期待できる。また、当社が推進しているデジタルツインによる設備のライフサイクル支援に関して、JIWとパートナーのインフラ企業とのAIの共同開発を推進し、将来的には診断の自動化をめざして、保守点検の分野において抜本的かつドラスティックなソリューションを生み出すことで、新たな事業創出にも努めていく」としている。

 NTTデータ 執行役員 テレコム・ユーティリティ事業本部長の河野吉晴氏は「インフラ設備業界では、設備の老朽化や、フィールドエンジニアの高齢化、労働人口減少という多くの課題がある中、サービス水準維持が社会問題化しつつある。当社では画像・映像・音声等のデータを用い、さび・腐食・ひび割れ等の診断にAI等の最先端技術による生産性向上で業界をサポートしてきた。また、ドローンに関してはITでの管制技術を基に安心安全な飛行を実現する運行管理サービスを提供し有用な知見を蓄積しつつある。今回、JIWとの資本業務提携では、当社が保有するAI技術、ITノウハウ、人材の交流を通じて、より一層、インフラ設備業界のデジタルトランスフォーメーションの推進をサポートし、Society5.0の基盤構築に貢献したいと考えいる」とコメントを出している。

 DRONE FUND 創業者/代表パートナーの千葉功太郎氏と、DRONE FUND 共同創業者/代表パートナーの大前創希氏は「ドローンファンドは、ドローン・スタートアップ企業に特化して投資をするベンチャーキャピタルだ。高い技術力や独自アイディアを持つドローン・スタートアップ企業に対して積極的な投資を行い、創業期の立ち上げを強くサポートしている。今回のJIWへの出資により、当ファンドのLP企業及び出資先ドローン関連企業とのシナジーを最大化し、JIWのケーパビリティを強化することで、日本が先をゆくインフラ点検分野において、JIWが日本発世界一のドローンサービスプロバイダーとなることを期待している。ドローンファンドは、インフラ点検分野におけるドローン活用を更に活性化させ、世界規模でのドローン前提社会の実現に向け、今後も取り組みを進めていく」とコメントを出している。