光通信、映像伝送ビジネスの実務者向け専門情報サイト

光通信ビジネスの実務者向け専門誌 - オプトコム

有料会員様向けコンテンツ

Ericssonが、産業用6Gネットワークにおけるリアルタイム仮想化の新研究プロジェクト「VICTOR6G」を発足

期間限定無料公開 有料

期間限定無料公開中

 Ericssonは3月10日、同社主導による産業向け統合型6Gソリューションの研究プロジェクトを発表した。

 この新たな研究プロジェクト「VICTOR6G」は、2026年1月に活動を開始した。総予算540万ユーロ(うち430万ユーロは公的資金)の3年間のプロジェクトでは、産業界のパートナーと研究機関が緊密に協力し、産業用6Gアプリケーション向けのリアルタイム仮想化ソリューションの開発に取り組んでいる。
 Ericssonは「目標は、ローカルクラウドから制御されるロボットや、インダストリアル・メタバース内の検査ドローンなどのアプリケーションを、信頼性と低遅延で運用できる有線・無線ネットワークの統合ソリューションだ」と説明している。

 コンソーシアムのパートナーは、Ericsson(主導)、SEW-EURODRIVE、Adaept Engineering、IKADO、Fraunhofer IPT、アーヘン工科大学、ドルトムント工科大学、ドレスデン工科大学、そしてアソシエイテッド パートナーとしてAirbusが参加する。
 各パートナーが、通信、機械工学、ITの専門知識を結集するこのプロジェクトは、ドイツ連邦研究技術宇宙省(BMFTR)の資金援助を受け、助成ガイドライン「Bringing 6G into Application」の一環として実施されている。

 この研究プロジェクトのパートナーは、産業用途向けの将来の6G通信ネットワークを調査し、ネットワークとIT技術をアプリケーションに密接に統合する技術を開発していく。

 研究対象となっているコア コンポーネントは以下のとおり。

デジタルツイン:アプリケーションと通信ネットワークの相互作用により、リアルタイムで正確な仮想表現を実現する。

柔軟な周波数利用:異なる周波数帯域を動的に利用する。今回初めて、2030年からモバイル通信アプリケーション向けに部分的に利用可能になると見込まれている7GHzから15GHzのセンチメートル波帯にも焦点を当てる。

TSN拡張(TSN extension):これまで有線ネットワークでのみ使用されてきたTime Sensitive Networking(TSN)を無線ネットワークに拡張する。

 このような産業用途の例として、ローカルクラウドから制御されるロボットや、計算処理をクラウドにオフロードする検査用ドローンなどが挙げられる。
 検討対象となるすべてのソリューションは、シミュレーション、ラボテスト、そして業界パートナー企業やFraunhofer IPTが運営する「5G Industry Campus Europe」における実環境において、その性能を実証する必要がある。これにより、パートナー企業固有のITインフラストラクチャが活用され、開発されたソリューションの統合性と拡張性が確保される。

 Ericssonは「レイテンシやスループットといった技術的な主要業績評価指標(KPI)の最適化だけでなく、いわゆるKVI(主要価値指標)を用いた経済効果の測定にも重点が置かれている。デジタル化によってどのようにコストを削減し、新たな収益源を獲得できるか。VICTOR6Gは、業界に大きな付加価値をもたらし、新しい6G技術の市場導入を加速させる」と説明している。

編集部備考

■産業ネットワークの将来像を考える上で重要な技術の一つが、ニュース本文でも言及されているTime-Sensitive Networking(TSN)だ。
 TSNはイーサネット上で決定論的通信を実現するための技術群であり、現在では産業機器のリアルタイム制御や高精度同期を支える基盤として普及が進んでいる。従来、工場内の制御ネットワークは専用のフィールドバスや産業イーサネットによって構成されてきたが、TSNの登場により、標準イーサネットをベースにしながら高い信頼性とリアルタイム性を確保するアーキテクチャが整いつつある。
 なぜこれを無線に拡張するかというと、工場内の端末である「AGV」「AMR」「ドローン」「モバイルロボット」といった移動体を有線接続することは難しい。また、今後想定されているセンサやカメラの大量化を考えると、配線コストや柔軟性の観点から有線のみでの対応は現実的ではない。そのため、TSNを無線ネットワークへ拡張する研究が重要になる。

 5Gでは既に「TSN over 5G」と呼ばれる方式により、TSNネットワークと5Gシステムを連携させる研究が進んでいる。最近では122ナノ秒の高精度時刻同期を実現した実証も報告されており、多くの産業用途で実用的な性能が確認されつつある。(当サイト内関連記事)
 一方で今回のVICTOR6Gプロジェクトでは、TSNの仕組みそのものを無線ネットワークへ拡張する「TSN extension」が研究テーマに含まれている。これはTSNと無線通信をよりネイティブに統合する将来アーキテクチャの検討と位置付けられる。ユーザから見ると「TSN over 5G」でも十分に実用的だが、ネイティブに統合することで、スケジューリングの統合、よりダイナミックなレイテンシ制御、システム統合のシンプル化が期待できる。VICTOR6Gコンソーシアムのメンバーや公的資金の投入額を見ると、この領域における欧州産業界の本気度が窺える。

 本ニュースでは「目標は、ローカルクラウドから制御されるロボットや、インダストリアル・メタバース内の検査ドローンなどのアプリケーションを、信頼性と低遅延で運用できる有線・無線ネットワークの統合ソリューション」とされているので、工場内あるいはキャンパス内の話と解釈できる。この点から見ると、日本のアプローチには独自の特徴も見えてくる。
 日本ではNTTがIOWNのAll-Photonics Networkを用いたTSNの長距離リアルタイム通信という、世界的にも珍しい実証に成功している(当サイト内関連記事)。一方、産業界が深く関わる欧州の産業6G研究では主に無線ネットワークにおけるTSN拡張がテーマとなっており、研究対象のレイヤーが異なる。前者が光ネットワークによる広域リアルタイム通信を志向するのに対し、後者は工場内の無線アクセスの決定論的通信を実現することを主眼としている。これは競合する技術思想ではなく、組み合わせることで、通信事業者の新しい役割である産業制御ネットワークの高度化に繋がる。
 産業用途における次世代通信の議論は、セルラー技術の進化だけではなく、有線ネットワークや光ネットワークとの統合を含む形で進みつつある。産業界から見れば業務の効率化、通信業界から見れば産業制御ネットワークのマネタイズと、双方にとって産業6Gに注力するモチベーションがある。VICTOR6Gプロジェクトが示す方向性は、産業ネットワークと通信インフラの境界が徐々に曖昧になり、より統合的なデジタル基盤へと進化していく可能性を示している。

関連記事

期間限定無料公開

有料 NokiaとTeliaが、AI-RANユースケースで協業

期間限定無料公開中  Nokiaは3月4日(エスポー)、フィンランドのTeliaとAI-RANベースのユースケースを共同で開発・検証することを発表した。  両社は、AIドリブン型無線アクセスネ…
更新

続きを見る

DX/IoT/AI

無料 世界初、通信事業者におけるTSN over 5Gの接続実証に成功し、産業分野への5G展開を加速 〜5G上で誤差平均122nsの高精度な時刻同期とCC-Link IE TSN Class Bの動作を確認〜【村田製作所、ソフトバンク、CC-Link協会】

 村田製作所とソフトバンク、CC-Link協会(以下、CLPA)は2月24日、高精度な時刻同期を可能にするTime-Sensitive Networking(TSN)を5Gネットワーク上で実現する技術である、TSN ov…

更新

続きを見る