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光コネクタ需要動向を探る【精工技研】

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 精工技研はコアテクノロジーである精密加工技術を軸に、「小型」「精密」「光学」にこだわった製品開発を続けている。中核事業の1つである光製品関連事業では光コネクタも提案しており、フェルール、コネクタのような部品からピッグテールといったアセンブリ品まで提供している。これら光コネクタ製品の品質を支える同社のフェルールは、穴曲がりや穴偏心に優れていることからユーザの歩留まり向上に繋がると高い評価を得ている。また、同社では光コネクタ研磨機をはじめ、光コネクタ製造・検査用の設備機器も提供しており、製品から製造設備まで精通した提案力を兼ね備えている。この一年の大きな動きとしては、2018年7月に連結子会社である杭州精工技研が中国国内の投資会社と共同出資し、中国のIT関連の有力企業に対してデータセンタ用部品等の販売を行う新会社を設立している。

 精工技研 光学製品事業部 営業課 課長の佐藤英明氏は光コネクタ関連製品の動向について「2018年度の売上は、光コネクタ製品では前年比で20%ほど増加した。光コネクタのパーツビジネスとしては国内通信事業者のFTTH系でシェア拡大に成功し、海外ではアメリカ、ヨーロッパ、中国市場がともに成長出来た一年だった。また、弊社の事業戦略の柱の一つである中国DC系ビジネスではMPOを中心にケーブルアッセンブリ品が特に多く動いており、ヨーロッパのFTTH系ではジャンパやピッグテールがコンスタントに動いた」と話している。

容易な極性変換や2心一括APC研磨を実現した独自のLCユニブーツ「Intelli-Cross Series」

 精工技研の注目製品の1つに、同社が独自開発したLCユニブーツコネクタ「Intelli-Cross Series」がある。このLCユニブーツコネクタは、2つのコネクタプラグが同時かつ同方向に回転する機構により、極性変換が極めて容易に行える。また、2心一括APC研磨を実現した画期的な製品となっている。シングルモード用とマルチモード用の両方をラインナップしており、そのコンパクトかつユニークなデザインにより、データセンタ及びテレコムで求められている高密度実装を実現できる。
 極性変換時に特殊な道具は不要となっている。片側のコネクタプラグを回すともう一方もシンクロして回転するので、既存の製品と比べて作業が非常に容易であり、時間も短縮できる。また、この回転機構でAPC研磨面を揃えることで2心一括のAPC研磨も可能となる。製品の外観はロープロファイルな形状であり、縦方向にも横方向にも高密度実装が可能だ。突起の無いラッチ機能やアダプタと同じ高さのサイズを実現しており、コネクタ実装時には整然とした美しい外観となる。
 佐藤氏は「大変ご好評いただいている製品であり、北米顧客に求められるカラーバリエーション15色に対応できるようにもしている。2心のファイバを1本のケーブルにまとめる構造のLCユニブーツは省スペース化に繋がることから、北米やヨーロッパでは普及が拡大している。国内DC向けにもLC2心やMPOケーブルアッセンブリの実績が出始めており、今後の更なる普及に期待している。」と話している。

光コネクタ量産製造現場用の端面検査装置「D SCOPE」に多心光コネクタ向け新モデルを追加

 精工技研は、グループ会社であるDATA-PIXELが開発した光コネクタ量産製造現場用の端面検査装置「D SCOPE」を提案している。「D SCOPE」は高品質な光学系と光ファイバの端面検査における人間工学に基づいたデザインを兼ね備えた製品で、深青色LED とケーラー照明の採用により、照明の均一性を実現している。また、ファイバエリアとフェルールエリアのゲイン、コントラストを独立調整することにより、それぞれのエリアを同時に検査することも可能だ。検査アダプタは、単心と多心それぞれのコネクタのPC 及びAPC を用意。端面検査の自動化にも対応している。

「D SCOPE MT」。

 今年4月には新モデルとして、多心光コネクタを主なターゲットとした「D SCOPE MT」がリリースされた。一番の特長は端面検査の速度で、12心を3秒、24心を5秒で済ませることができる。更にはファイバ端面とフェルール端面を同時にチェックすることも可能だ。精工技研 機器事業部 営業課 担当課長の澤井一朗氏は「高い再現性も実現しており、IEC61300-3-35に適合したフルオート検査もできる」と話している。

「D SCOPE MT」の端面検査画面。

操作性やメンテナンス性が向上した光コネクタ研磨機の最新モデル

 精工技研の光コネクタ研磨機は、同社独自のターンテーブル自転・公転複合運動機構と、自社でのコネクタ研磨によって培ったノウハウをフィードバックした研磨フィルム、研磨工程により、高い研磨性能と安定した品質を提供している。澤井氏は「研磨機の品質は光コネクタの品質に影響する。特に多心光コネクタは、単心光コネクタ以上に研磨機の影響が強い」と話している。

「SFP-560A」。ターンテーブルとスラストリングに特殊コーティングを施すことでは耐久性が向上しており、メンテナンスコストの低減に繋がっている。研磨条件は最大で60プログラムを入力でき、USBメモリで機器間のデータ移行も可能だ。日本語、英語、中国語、スペイン語に対応している。

 同社の最新モデル「SFP-560A」は自動加圧機能を備えた製品で、ターンテーブル上にスペースを設けることによる作業性の向上、量産に適した耐久性、従来製品で高評だった4点固定方式の採用といった特長を有している。加圧の研磨圧は2Nから200Nのレンジで調整ができる。また、強固に固定された研磨ホルダに対してターンテーブルが並行度を保ちながら加圧を行うことにより、MT研磨においても接着剤除去工程から研磨機で行えるようになっているので、MTフェルールの研磨を単心コネクタと同様の感覚で行うことができる。このターンテーブル上には空間が設けられているので、MT研磨や大外径ケーブルを研磨する際にケーブルの取り扱い治具等の設置スペースを確保し易くなっている。澤井氏は「日本でもすでに複数社でご採用いただいている」と話す。

今後の展望

 佐藤氏は今後の展望について「DC系ビジネスに加え、当事業部のもう一つの戦略は、チューナブルレーザ、変調器、コヒーレントレシーバなど、基地局で使われるデバイスやモジュールメーカーとの光ファイバアッセンブリ品によるビジネス拡大が挙げられる。お客様の次世代製品の開発に貢献できる技術的提案を今後も積極的に行っていきたい」と話している。

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