25G-PONを用いたアクセス網

　LANの10Gという点でもPOLは魅力的なソリューションだが、将来の拡張性という点でも興味深い。アクセス網で10G級のPON、LANで10G級のメタル配線が展開されている現状では、LANの25Gはオーバースペックに見えるかもしれない。だが、グローバルにおける10G級アクセス網のPON展開では、ノキアを含む先進的なベンダのマルチPONが導入されており、加入者側の端末を交換するだけで25Gへと移行できる状況であり、トライアルも世界各国で進んでいる。
　既にノキアの25G-PONによる商用ブロードバンド サービスを展開している事例としては、北米のGoogle Fiber(当サイト内関連記事)や香港のHKBN(Hong Kong Broadband Network) (当サイト内関連記事)があり、また産業ユースケースとしてはニュージーランドのチェリー農場での活用(当サイト内関連記事)や、米テネシー州チャタヌーガのスマートシティがある。
　岡崎氏は「50G-PONでは次世代の光学部品が必要となるため、それが市場で成熟して費用対効果の優れたボリュームに到達するまで、まだ時間が必要だ。だが、25G-PONの光学部品は既に市場で成熟しているので、費用対効果に優れている。そのため、一気に25G-PONを展開されるケースもある。また、10Gをメインとしつつ、25Gのスロットを幾つか導入していただくことで、25Gをお試しできる形もご提案している」と話している。
　ここでは、LANの25Gのユースケースをイメージするための参考として、アクセス網においてノキアの25G-PONがどのように活用されているのかの実例を見ていきたい。

25G-PONの商用ユースケースやスマートシティの実例

　ニュージーランドのチェリー農場の事例では、数十台の4Kカメラを設置して、チェリーの品質検査をクラウドAIベースで処理し、検査の自動化を実現している。このケースでは、6週間で5000万個のチェリーを検査しており、一時間あたり600TBのデータを扱うことから、25G-PONが導入されたという。岡崎氏は「1つのチェリーに対して様々な角度から高精細画像でチェックすることで、小さな傷も自動的に検知できる。そのためのネットワーク要件として、高速かつ低遅延が求められることから、高信頼性の光ファイバが重要だった」と話す。

　HKBNの商用展開では、2024年6月よりアジア初の20Gbps対称サービスの提供を香港で開始している。これは、企業ユースだけでなく家庭ユースも含まれている。岡崎氏は「HKBN様は25G‑PONにより、競合他社の10G級PONとの差別化を図っている。例えばゲームで重いデータを扱う場合や遅延の影響が重要な場合、25G‑PONは明らかに体感が違う」と話している。

　米テネシー州のチャタヌーガの事例では、25G-PONを展開したスマートシティ化に成功している。かつて鉄鋼業地帯の主要都市として知られていたチャタヌーガは、ICTを使った働き方改革や、大学によるスマートシティ テストベッドの作成、リアルタイムの交通制御、スマートグリッド、監視カメラ、5G基地局バックホールなど、多数のユースケースで25G-PONを活用している。
　岡崎氏は「住民のライフスタイル向上や、企業の業務改善は、地域経済を活性化させる誘致にも繋がる。このユースケースを見ると、25G-PONを展開することで自宅からでもBtoB業務が可能となる時代に近づいていることが感じられる」と話している。

　北米のGoogle Fiberは、25G‑PONの商用展開だけでなく、50G‑PONのトライアルも実施している。注目のユースケースの1つは遠隔医療の高度化であり、次世代の医療DXを支えるソリューションが期待されている。岡崎氏は「遅延の要求が厳しい領域での活用、例えば手術をリモートでサポートするユースケースを想定した場合、リアルタイムで高精細な映像を見るために50G‑PONが役に立つ」と話している。

レポート目次

１：POLの概要と特長

２：25G-PONを用いたアクセス網

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