光通信、映像伝送ビジネスの実務者向け専門情報サイト

光通信ビジネスの実務者向け専門誌 - オプトコム

有料会員様向けコンテンツ

FOE専門技術セミナー企画委員インタビュー【FOE-10】5G本格導入前夜の最新動向 ~光ネットワークへの期待~

INTERVIEW 有料

三菱電機(株)
コミュニケーション・ネットワーク製作所
所長
清水 克宏氏

コースリーダー:
三菱電機(株) 清水 克宏
サブコースリーダー:
NTTアドバンステクノロジ(株) 界 義久

 今回、「5G本格導入前夜の最新動向」をタイトルとした専門技術セミナーは二つ用意されている。このFOE-10では、5Gにおいて光通信が担うべき役割という観点からセッションが組まれている。一方のFOE-8では5G全体の講演となるので、興味のあるセミナーだけを聴講するのも良いが、両方を聴講することで5Gの全体像をより深く理解できるだろう。
 5G端末の無線を支える光通信は、モバイルだけでなくIoT、自動車など様々な分野のサービスを支えることになる非常に重要なものだ。コースリーダーの清水氏は「5Gに求められる大容量、多数端末接続、低遅延をどのように実現するかというのが光通信の大きな課題になっている。この三つの要件は、全てを同時に実現するのではなくサービスによって必要なものだけを適用していくことになる。だが、サービスごとに別々のネットワーク形態を作っていては成り立たなくなるので、大きなネットワークを作って各々のサービスに求められる機能を仮想化して積み上げていく技術が必要になってくる。これは、光ネットワーク構成を大きく変える技術になるだろう。そこで、このFOE-10では、光通信がどのように5Gを支えるかという観点から、現在の技術からの発展、そしてネットワーク構造の変化をご紹介し、今後を考える機会になるようにセッションを組んだ」と説明している。

●5G時代における光アクセス技術
日本電信電話(株)
NTTアクセスサービスシステム研究所
光アクセス基盤プロジェクト
プロジェクトマネージャ
寺田 純

 モバイルサービスは進展を続け、その伝送レートは最大1Gbpsを超える時代となった。基地局を収容する光ネットワークはモバイルシステムと一体での構築が求められる。この講演では、モバイルネットワークを支える光アクセスシステムの、研究開発および標準化の動向が紹介される。
 清水氏は「5Gではアンテナの数が増え、トラフィックも増え、低遅延も求められる。その実現のためにFTTH向けのPON技術の利用も考えられており、PONの低遅延化や大容量化の研究が進んでいる。講師の寺田氏は、世界に誇る光通信網を所有するNTTの研究所でアクセス網の研究に携わっている第一人者であり、今回はアクセス技術を5Gの時代にどう進化させていくのかをご講演いただく」と話す。
 5Gでは様々なPON技術の適用が検討されている。例えば伝送容量を増やすのであれば、複数の波長を使うNG-PON2が候補の一つになる。清水氏は「NG-PON2でも他の方式のPONでも、5Gで求められる低遅延の実現という大きな課題がある。そのため、現在のPON技術をそのまま使えば良いということではなく、遅延を克服する技術によって光アクセスとモバイルの協調動作を実現するための方法を組み合わせることが不可欠になる。その実用化には、技術だけではなく標準化も必要になってくるので、寺田氏からは様々な観点でご説明いただけるだろう」と話している。

●5G、Beyond 5Gに向けたモバイルフロントホールの技術動向
(株)KDDI総合研究所
光アクセスネットワークグループ
グループリーダー
西村 公佐

 C-RANのモバイルフロントホール(MFH)に採用されたDigital RoF伝送方式は、最大ユーザスループットが20 Gbpsに達する5G成熟期にそのまま適用することは困難であることから、大容量の光伝送技術が必要となる。清水氏は「大容量伝送の実現には、どのようなインターフェースで、どのように信号を集めてくるかという、複数のパターンが考えられる。その方式の一つとして、中間周波数に変換した複数のRoFチャネルを周波数多重して伝送するIFoF(Intermediate Frequency-over-Fiber)が有望視されている。シンプルな構成で高い周波数利用効率と低遅延を実現することが期待されており、学会等でも毎年着実な進展がある技術だ。そこで今回は、RoFやIFoFの第一人者である西村氏から、5G、そしてBeyond 5Gの展望を解説していただく」と話している。
 講演では、基地局の機能分割点を変更するFunctional Splitや、SDN/NFV技術のRANへの適用についても解説される。清水氏は「西村氏はネットワークの仮想化やソフトウェア化についても深い知識をお持ちで、更には光通信の技術、デバイスにも詳しい人物だ。講演では、ネットワークの仮想化の観点も併せた、モバイルネットワークにおける光通信技術を語っていただけるだろう。例えば、5Gで求められる大容量、多数端末接続、低遅延という要件それぞれに適した仮想ネットワークの構築に向けて、どこで機能を分割するのが良いかという考え方は、光デバイスに求められるスペックをイメージすることにも役立つだろう」と話している。

●5GサービスインとBeyond 5Gに向けた最新研究開発動向と今後の展開
東京大学
大学院情報学環
教授
中尾 彰宏

 日本における5Gは、2020年のサービスインに向けて総合実証が進められ、2019年の商用プレサービスなどが予定されている。また、次世代の移動通信であるBeyond5G (B5G)/6Gなども議論が進んでいる。講演では5Gサービスインに向けた最新の研究開発技術動向と今後の展開について解説される。
 この講演のポイントとなるのはネットワークの仮想化だ。仮想化により設備と機能が分離されることになるので、結果として、ネットワークのオペレータ、機器ベンダ、デバイスベンダが果たす役割は変わってくる。あるいは参加プレイヤー自体が変わることも想定されている。例えば、伝送機器の汎用化と機能のソフトウェア化により、伝送機器ベンダはハードウェアの差別化が難しくなるリスクがある一方で、汎用化により利用シーンが増えるという観点では市場拡大のチャンスでもある。清水氏は「講師の中尾氏はネットワーク仮想化の提唱者の一人であり、まさに日本のオピニオンリーダーだ。講演では、ネットワークの仮想化によりどのようなことが起こるのかについてお話しいただけるので、ネットワークに携わる様々な立場の方が今後を考える良い機会になると思う。中尾氏は様々なプロジェクトに関わっておられ、国の機関の委員も複数務めていらっしゃるので、その広い知見からどのように語っていただけるか、私自身も楽しみにしている」と話す。

(OPTCOM編集部 柿沼毅郎)

目次

【FOE-K】【基調講演】実用化目前5G、データセンターを支える光通信の最新技術動向

【FOE-1】スマート社会(Society 5.0)を支え、牽引する光ファイバ技術

【FOE-2】次世代ネットワークを牽引する400G/1Tクラス光トランシーバの技術動向

【FOE-3】データセンターの最新動向

【FOE-4】目指せOver1Tbps伝送!光デバイスとその周辺技術の展望を紐解く!!

【FOE-5】大容量光通信を支える光機能集積回路の最新技術と今後の展望

【FOE-6】5Gやデータセンターを支える光ネットワークおよび機器の最新技術・市場・標準化動向

【FOE-7】【基礎講座】光通信技術の基礎 ~情報通信を支える光技術~

【FOE-8】5G本格導入前夜の最新動向 ~今後の5Gサービス展開に向けて~

【FOE-9】自動運転を支える光応用技術

【FOE-10】5G本格導入前夜の最新動向 ~光ネットワークへの期待~